ダンジョンがある日常

那田野狐

文字の大きさ
上 下
14 / 15

第14話 テイマーの集い

しおりを挟む
「テイマーの集い?」

 期末テストが終わった日にギルドからDMが届いた。
 開拓者ギルドは、支援事業の一環として、こんな風に定期的に職業講習会と交流会を行う。まあテイマーの集いは、講習会より交流会の方を重視していて、交流会ではテイムモンスター用の装備品の販売やテイムモンスターの譲渡会、交換会といったものがメインで行われる。まあ、テイマーはテイマーにならないと意味がない情報が多く、ネット上で逐次公開されているから講習会には力を入れていないんだよね。

 講習会は旧市民球場跡地に建てられた開拓者ギルド広島本部の5階で行われることになった。

「九竜美里です。先日テイマーになりました」

 ギルドカードを提示し、疾風と水饅頭を召還する。

「短期間でメディスンスライムとは有望な新人だね。テイマー講習会にようこそ」

 受付のお兄さんがギルドカードを受け取ってカードリーダーに通し、今日のレジメと共に返してくる。
 会長の挨拶の次にご新規さんの挨拶というのがあるが対象は自分だろ。

 講習会は順調に進み、30分ほどで終了。交流会になる。ワークショップ形式というのだろうか?グループ事にテーブルがあって、講習会に参加した者が回遊していた。
 まず向ったのは、テイムモンスター用の装備品を展示しているテーブル。
 小さい皮鎧や小甲。兜やフルフェイスなヘルメットが展示されている。

「胴丸鎧は作れますか?」

 小さい皮鎧をテーブルに飾っているディーラーのおじさんに声をかける。

「大きさと予算は?」

「着るのはこの子。予算は10万円から15万円で・・・」

 剣道着に鉢金。腰に赤樫の小刀を下げた疾風を指さす。

「侍コボルトか?面白いのテイムしているな」

「解るんですか?」

「戦士なら胴丸より鎖鎧の方が安くて性能が上だからねぇ」

 おじさんは笑う。ちなみにおじさんが指摘するのは、職業による装備制限のことだ。魔法は金属に馴染む性質があるからか、金属製の鎧を装備すると上手く魔法を射出できなくなるといという制限がつく。そのため魔法を使う事が出来る職業は、金属製の装備をしないのだ。もっとも、魔法の発動を阻害しない金属というのも存在するにはするのだが、そんな金属の装備が出来るのは一部の上位開拓者に限られる。

「素材はオークで・・・一週間だな。前金2万円で完成品はギルド経由でいいかい?」

「はい。では料金はギルドカードからの引き落としで」

 そう言ってギルドカードを渡す。おじさんは慣れた手付きでギルドカードをカードリーダーに通すと、引き替え券と兼用の注文票を渡してくる。
 ギルドを通しての取引なので、余計なトラブルは避けられる。
 次に訪れるのはテイムモンスターの譲渡会場。
 テイマーは、レベルを2で割った数毎に1匹のモンスターをテイムすることが出来る。
 ただし召還出来るのはパーティーメンバー分、最大で5匹まで。
 なので、レベルが上がるにつれ必要としなくなったモンスターが出てくる。そんなモンスターを別のテイマーに譲渡するのがこの会の趣旨だ。
 ちなみに今のテイマーレベルは6。あと一匹はお迎え出来る。

 テイム出来るモンスターというのは小型種であればあるほど容易く大型種はほぼ無理だといわれている。もっとも小型種から成長させていけば中型種や大型種をテイムモンスターとすることは不可能ではない。

「スライム、パペット、猟犬、ネズミ、蝙蝠、鳩、コボルト、ゴブリン・・・ケット・シー!」

 並んでいるゲージを眺めていると、その中にキジトラ柄の猫人がいるのを見つける。

「相性・・・相性を見ていいですか?」

 ケット・シーの前に行き、オーナーさんらしき女性に声を掛ける。

「いいよ。この子、持ってるスキルが手持ちのモンスターと被ったんだよね」

 と、女性オーナーさんは手離す理由を教えてくれる。にゃんこの持っているスキルは土魔法。土魔法は大器晩成と言われているけど、最初から連れまわす魔法使いとしてはハズレだ。

「へいにゃんこ。うちの子にならない?」

 そっと指を差し出す。
 ケット・シーは、ふんふんと鼻をならして指先を匂う。
 ちなみにこのテイムモンスターとの相性というのは案外バカになら無いもので、命令の実行率とか親密度の上昇率とか色々影響が出るのだ。

「にゃ~!」

 キジトラさんが指先にすりすりしてそのまま掌に頭を擦り付けてくる。

「相性は悪く無いようだね。連れて行くかい?」

「はい!」

 女性オーナーさんが尋ねてきたので反射的に答える。

「じゃあ手を出して。譲渡するよ」

 女性オーナーさんの言葉に従って手を差し出す。

「はい。譲渡完了。可愛がってやってね」

「はい!」

 ゲージから出されたキジトラさんを抱き上げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

女神様から同情された結果こうなった

回復師
ファンタジー
 どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

処理中です...