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5話 訪問。鉱山都市ソロモン

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鉱山都市ソロモン。

アタラカ山脈の中腹で発見された鉄鉱石を発掘するために山が掘削され、掘削された空き地に小屋が立ち、石炭鉱脈が発見されると小屋は村になった。
しばらくすると良質な鉄鉱石を産出する鉱山を巡って国を巻き込む戦争が起こり、村は自衛のために掘削で出た石をつかって城壁を作り始める。
やがて高さ6メートル近い城壁が完成。城門から麓まで九十九折りに登山道が設置され、九十九折の踊り場にはそれぞれ櫓が設置される。
この頃には鉱夫、鍛冶師、商人の3つのギルドからなる独立自治区ソロモンとなった。

「ここには何を?」
如何にも新兵らしい若い赤毛の番兵が提出された羊皮紙とナオとリベッチオの首輪に無遠慮な視線を送りながら訪ねる。

「我が主の命令で、ソロモンの鍛冶師ギルドに道具の注文に参りました」
ナオは羊皮紙に書いてあることを答える。

「ギルドカードを提出するか銀貨2枚。鍛冶師の工房は北。商店なら南。西は鉱夫の居住区で荒っぽいのが多いから近寄らないことをお勧めします」
ナオから銀貨を受け取った番兵は代わりに2枚の金属札を渡す。

「カードを持ってそこの水晶に手をかざしてください。犯罪履歴の確認の後、この街での身分証になります。またカードはギルドカードと共通のモノになります。取り引きをする場合はギルドの窓口で仮登録をすることになりますので提出をお願いします」
赤毛の番兵は少し離れたところにあるこぶし大の透明な水晶を指さす。
ナオとリベッチオはカードを持って水晶に手をかざす。
ピカッと水晶は青く輝く。

「過去の犯罪歴がないのを確認しました。ようこそソロモンへ」
ちなみに犯罪歴とは裁判など公的機関によって犯罪奴隷などの刑罰を科された過去があることを差す。
比較的軽く償いが済んだ犯罪などは一定期間で消去されるし、重犯罪を犯していても
ナオは番兵に頭を下げると一路南へと進む。
やがてそこそこ大きな2階建ての建物が見えてくる。
テラスには数個のテーブルと椅子。建物の入り口には宿を意味する四葉の紋章が刻まれた看板が下がっていた。

「商用で来ています。二人部屋で五日」
ナオが二枚の身分証をカウンターに差し出す。
「食事1日2回で大銀貨3枚」
カウンターの女性は身分証を見て値段を告げる。
ナオは大銀貨3枚を払い鍵を受け取る。

因みに貨幣単位は大陸共通でマッサ。もっとも鋳造に使う金属をそのまま単位として使うことが多い。
レートは
白金貨=1000万
大金貨=100万
金貨=10万
大銀貨=1万
銀貨=1000
銅貨=100
鉄貨=10
青銅貨=1
となっている。
鋳造は国ごとだが大きさと金属含有率が決まっているので大陸だけでなくワ国でも使えるのだ。
もっともワ国の貨幣は大陸では美術品扱いだったりする。

「二階の二〇三だよ」
「はい」
ナオとリベッチオは部屋に入ると指輪に触れる。
ぼう
黒い靄がふたつナオとリベッチオの前に現れる。

「確認は夜行いますのでそれまで探索をお願いします」
ナオとリベッチオがそう命じると黒い靄はすっと拡散する。

「私たちは表の仕事をこなしましょう」
ナオの言葉にリベッチオは静かに頷いた。
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