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第八章 涙のプロポーズ

英雄

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 魔王ギリェルモを倒してから、オリヴァーは変わった。

(見るからに表情が柔らかくなったわ。魔王討伐を成して、心から安堵しているのね。肩の荷が下りた感じだわ)

 オリヴァーが目覚めてから二ヶ月。彼は持ち前の体力でみるみる回復していた。
 魔王ギリェルモが消滅し、国に平和が戻った。破壊された街や人も順調に復興している。
 オリヴァーは復帰次第、一番隊隊長から、騎士団長へ昇格が決まった。今後、国王から表彰される予定もある。英雄になったのだ。
 シャーロットはそんな素晴らしい人物の妻になる。これ以上の誉れはなかなか無いだろう。

(もちろん貴方様が生きていることが一番の幸せよ)

「包帯を替えますね」

 シャーロットは、彼の絹のローブの紐を解いた。割れた腹筋に深い傷跡がついている。まだ生々しいピンク色だ。
 シャーロットは悲しみに眉間に皺を作った。

(可哀想に……。早く良くなりますように)

「そんな顔をしないでおくれ、俺の天使。君の方が痛そうじゃないか」

 オリヴァーが優しく微笑んだ。

「だって、こんなに大きな傷がお体に残っていて……。見ているだけで辛いのです」

 シャーロットはそっと包帯を交換する。

「気にしていないよ。俺は騎士なんだ。魔王を倒し、愛する婚約者を救った、勲章だよ」
「でも……」
「シャーロット、おいで。正面から顔を見せておくれ」

 オリヴァーが、彼女を自身の脚の付け根に乗せた。整った顔が愛おしげにシャーロットを見ている。エメラルドの瞳は普段より細くなり、薄い唇の両端が上がった。
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