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第八章 涙のプロポーズ

第八章 命に替えても君を守る

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第八章

「――カハッ……はっ離しなさい! すぐに攻撃を止めるのです……っ」

 シャーロットは魔王ギリェルモの手の中で叫んだ。凄まじい握力である。ギリギリと胴を締めつけられ、このまま窒息しそうだ。

(苦しい、誰か助けて……)
「来タナ、黒ノ猟犬ヨ」

 魔王ギリェルモがニヤリと笑った。視線の先に剣を構えたオリヴァーがいる。上半身裸で、いくつも傷が出来ていた。

「シャーロット! 今助けるっ」

 オリヴァーは愛する女性を見つけると、大声で叫んだ。

「オリヴァー様ぁっ!」
「ガハハハ、今夜コソ決着ヲツケテヤル」
「俺の大事な人を傷つけて、ただで済むと思うなよ。覚悟しろ!」 

 魔王ギリェルモと黒の猟犬の最後の闘いが始まった。ガキィン、ガキィン! 魔王ギリェルモの鋼の肉体に剣がぶつかる音が響く。
 シャーロットはぎゅっと目を閉じで強く祈った。

(天国にいるお父様、お母様……! どうかオリヴァー様をお助け下さい!)

「死ネェ!」
「くっ!」

 お互いの激しい攻撃が続く。力は互角である。
 バリバリバリィ! オリヴァーは雷の魔法攻撃をなんとかかわし、残っていた相手の目を潰す。その代わり、魔王ギリェルモの鋭い爪が腕を切り裂いた。

「ぐはっ!」

 オリヴァーは何とか踏ん張った。しかし血がポタポタ流れ落ちている。

(愛おしい人が怪我をしている。もう見ていられない!)

「オリヴァー様っ、私を置いて逃げて下さいっ!」

 シャーロットは叫んだ。
「君を置いて逃げる? そんな騎士にあるまじき事が出来るか。俺は命に替えても君を守る」

 オリヴァーが剣を構え治す。もうフラフラだ。最後の攻撃だとシャーロットは直感した。魔王ギリェルモも瀕死である。
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