24 / 113
第二章 ドキドキの同居生活
お試し婚約
しおりを挟む――分かりましたわ。オリヴァー様。
――いずれ、君の心の準備が出来たら。今日はゆっくりお休み、俺の天使。
と、オリヴァーはシャーロットの滑らかな額にくちづけた。
――~~ッ……!
シャーロットはボンと顔を赤らめ、しばらく固まってしまったのだった。
(ああ、オリヴァー様……)
回想を終えたシャーロットは、洗顔したばかりの自身の額をそっとなぞる。
あれから毎日オリヴァーは甘い言葉をささやいてくれた。そのバリエーションは多岐に渡り、「可愛い」なんて当たり前で、「薔薇よりも美しい」とか、「欲しいものは何でもプレゼントしよう」とか、「俺の心を奪った女性は君が初めてだ」と言ってくれる。
他にも「おはよう、俺の天使」や、「おや、天使が散歩しているぞ」とか、「天使さん、今夜も空に帰らないで自分のベッドで寝てくれよ」などと通称天使シリーズで口説いてきたりする。まるで自分を好いてくれているような彼の言動に流されそうだ。
(きゃーーーっ!)
思い出すだけで顔から火が出そうだ。
(ダメ、ダメ)
――ダメよ、シャーロット。本気にしちゃ。全部、社交辞令なんだから。
と彼女は自分に言い聞かせる。
(これはお試し婚約よ。オリヴァー様が満足すればきっと解消になるわ。私みたいな貧乏な娘との結婚が上手くいくはずないじゃない)
シャーロットはこのお試し婚約が失敗する気がしていた。それは自分が没落貴族の娘だから、というだけではない。オリヴァーは素晴らしい男性で、彼のような完璧な殿方が、自分のような平凡な娘を愛すはずがないと信じ込んでいたからだ。
不幸な境遇だったせいか、シャーロットは自信がなく、いつも悪い未来ばかり予想する癖がついてしまった。そうして心を備えておけば、いざ残念な結果になった時、それほど傷つかなくて済むような気がするからだった。
けれどそれはもちろん彼女の本心ではない。正直にいえば、大好きなオリヴァーと結婚したかった。彼に愛され、幸せになりたかった。
(いつか、仮の花嫁じゃなくて本当の妻になれたらいいな)
ぼうっと蒼い大きな瞳を潤ませながらシャーロットは想う。
(そんな日が来るわけないってわかっているけれど、オリヴァー様に愛されたい、大事にされたい)
――だって私はオリヴァー様が好きなのですもの。
(ずっとずっと、大好きだったのですもの……)
シャーロットは湯浴みの間中、ずっとそんなことを考えていた。
3
お気に入りに追加
369
あなたにおすすめの小説
冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!
仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。
18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。
噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。
「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」
しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。
途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。
危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。
エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。
そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。
エルネストの弟、ジェレミーだ。
ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。
心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――
R18完結 私に成り代わろうとする悪女を利用して、我儘で好き放題に生きる。1度目の人生で愛した夫は、今世では強面絶倫騎士団長になっていた。
シェルビビ
恋愛
伯爵家の三女リーファは前世の記憶がある珍しい少女。今の人生でリーファは一度死に回帰している。夫のラシエルの幼馴染セシリアに階段から突き落とされて、酷い死に方だったので絶対に生き延びたいと思っていた。
二度目の人生で家族から愛されていない事を知ってしまう。リーファの物を奪い、お下がりを渡してくる姉や我儘を許している両親に見切りをつけた。
祖父に養子入りすると、これで前回結婚したラシエル・ザガード公爵と結婚せずのんびり過ごせると思っていた。今後起こるザガード家の危機を救うために、一度だけ手紙を書いて送った。
前の人生と変わっている環境にリーファはすぐに適応し人生を楽しむことにする。何が当たるのか知っているため、お金に余裕がある。
しかし、気まぐれで参加した夜会でラシエルに出会うと、その日から執拗に追いかけられてしまう。あれ、セシリアが私に成り代わろうとラシエルに接近している?
それなら私がセシリアみたいに我儘放題に好き勝手に生きれば解決じゃない!
前回のラシエルと比べて全体的に大きい。迫られるが元のラシエルの方が好きで、断ってしまった。
何故ならゴールデンレトリバー系男子からハスキー犬や狼のような雰囲気になったからだった。
前と違って人誑しで好かれやすい性格から、特定の相手としか仲良くしない人見知りな性格になっていた。
ハズレ令嬢の私を腹黒貴公子が毎夜求めて離さない
扇 レンナ
恋愛
旧題:買われた娘は毎晩飛ぶほど愛されています!?
セレニアは由緒あるライアンズ侯爵家の次女。
姉アビゲイルは才色兼備と称され、周囲からの期待を一身に受けてきたものの、セレニアは実の両親からも放置気味。将来に期待されることなどなかった。
だが、そんな日々が変わったのは父親が投資詐欺に引っ掛かり多額の借金を作ってきたことがきっかけだった。
――このままでは、アビゲイルの将来が危うい。
そう思った父はセレニアに「成金男爵家に嫁いで来い」と命じた。曰く、相手の男爵家は爵位が上の貴族とのつながりを求めていると。コネをつなぐ代わりに借金を肩代わりしてもらうと。
その結果、セレニアは新進気鋭の男爵家メイウェザー家の若き当主ジュードと結婚することになる。
ジュードは一代で巨大な富を築き爵位を買った男性。セレニアは彼を仕事人間だとイメージしたものの、実際のジュードはほんわかとした真逆のタイプ。しかし、彼が求めているのは所詮コネ。
そう決めつけ、セレニアはジュードとかかわる際は一線を引こうとしていたのだが、彼はセレニアを強く求め毎日のように抱いてくる。
しかも、彼との行為はいつも一度では済まず、セレニアは毎晩のように意識が飛ぶほど愛されてしまって――……!?
おっとりとした絶倫実業家と見放されてきた令嬢の新婚ラブ!
◇hotランキング 3位ありがとうございます!
――
◇掲載先→アルファポリス(先行公開)、ムーンライトノベルズ
お隣のお兄ちゃんが実は野獣だった件
こみあ
恋愛
お兄ちゃんはたった一人の味方だった。
ずっとずっと私の味方だった。
お兄ちゃんはいつも私の味方だったから多分私はちょっと油断したんだと思う。
お兄ちゃんだったら大丈夫だって。
お兄ちゃんラブな妹をお隣のお兄ちゃんがただただ可愛がり(?)続けるお話。
本編全7話+お兄ちゃん視点3話+シン君視点1話投稿完了しました。
これで一旦完結といたします。よろしくお願いします。
2017/1/5 短い番外編を付けます。19時投稿予約済み。
悪役令嬢は国王陛下のモノ~蜜愛の中で淫らに啼く私~
一ノ瀬 彩音
恋愛
侯爵家の一人娘として何不自由なく育ったアリスティアだったが、
十歳の時に母親を亡くしてからというもの父親からの執着心が強くなっていく。
ある日、父親の命令により王宮で開かれた夜会に出席した彼女は
その帰り道で馬車ごと崖下に転落してしまう。
幸いにも怪我一つ負わずに助かったものの、
目を覚ました彼女が見たものは見知らぬ天井と心配そうな表情を浮かべる男性の姿だった。
彼はこの国の国王陛下であり、アリスティアの婚約者――つまりはこの国で最も強い権力を持つ人物だ。
訳も分からぬまま国王陛下の手によって半ば強引に結婚させられたアリスティアだが、
やがて彼に対して……?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
七年越しに叶った初恋は、蜂蜜のように甘い。
野地マルテ
恋愛
侯爵家令嬢フラウディナには、子どもの頃から密かに想い続けている相手がいた。フラウディナの想いびとは彼女の歳の離れた長兄の親友、アセル。アセルは裕福な伯爵家の嫡男で、家柄的には二人は釣り合っていたが、少々歳が離れて過ぎていた。フラウディナは、自分が大人になる頃にはアセルはとっくに妻を娶っているだろうと思い、自分の初恋を諦めていた。しかし二人が出会ってから七年。アセルは三十歳になっても何故か未婚のままだった。
◆成人向けの小説です。強い性描写回には※あり。ご自衛ください。
初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~
如月あこ
恋愛
宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。
ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。
懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。
メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。
騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)
ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。
※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)
皇帝陛下は皇妃を可愛がる~俺の可愛いお嫁さん、今日もいっぱい乱れてね?~
一ノ瀬 彩音
恋愛
ある国の皇帝である主人公は、とある理由から妻となったヒロインに毎日のように夜伽を命じる。
だが、彼女は恥ずかしいのか、いつも顔を真っ赤にして拒むのだ。
そんなある日、彼女はついに自分から求めるようになるのだが……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる