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第一章 出逢いと再会

王宮のパーティー

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 シャーロットは両手の指を組んで、必死に頼んだ。兄を困らせるのは分かっていたが、どうしても初恋の彼の姿が見たいのだった。

 ――あいつは今や若手のエースだ。あいつに睨まれたら、決して逃れられない。魔物たちから、猟犬と恐れられているくらいなんだよ。現在の騎士団長はもう五十代だから、引退したら次はあいつだよ。それくらいすごい奴なんだ。俺たちみたいな貧乏貴族と、話をするような立場じゃないんだよ。

 ――分かっております。だから、遠くからでいいのです。あのお方の元気なお姿を拝見したいの。
 ――ロッティー……。
 ――お願いします。お兄様。ひと目だけ、ひと目だけでいいのです。

 ジョージははあ、と重い溜息をついた。妹の恋心をよく知っていたからだ。

 ――分かった……。なんとかしてみよう。

 ぱあっとシャーロットの顔が明るくなる。

 ――お兄様っ。
 ――でも、忠告しておくよ。きっと後悔する。あいつは昔のあいつじゃないんだ。あいつ自身は変わっていなくても、周りはそうじゃない。ロッティーはきっと、ショックを受ける。
 ――かまいません。オリヴァー様に会えるなら。

 シャーロットは言った。その横顔は真剣だった。大きな蒼い瞳が訴えるように強い光を放っている。
 いつまでも幼い子供だと思っていた妹が、成長し、一人の女性として誰かを愛する様を見て、ジョージはまるで親のように目を細めた。
 そしてとうとう、ジョージは特別に招待状を用意してくれたのだった。

(ああ、今夜オリヴァー様に会える)

 シャーロットはそっと目を開けた。どんなにみすぼらしい姿でもかまわない。オリヴァーの元気な姿をちらっとでも見ることが出来れば、満足なのだ。

(そうよ。それだけで幸せだわ。期待なんかしちゃダメよ。オリヴァー様を想い続けるだけで、私は生きていけるんだから……)

 シャーロットは中古のドレスをぎゅっと抱きしめながら歩き出した。

☆~☆~☆~☆~☆

 パーティーはたけなわだった。中古のドレスを着たシャーロットは、俯{うつむ}きながら会場に足を踏み入れる。 
 煌{きら}めくシャンデリア。広々としたダンスホール。華やかな貴族や礼装の騎士が楽しげに歓談している。
 中には弦楽器の上品な音楽をバックに、ダンスを踊っている若い男女もいる。立食パーティーなので、ホールの端には美味しそうなごちそうがずらりと並んでいた。

(うわあ……!)

 シャーロットはキラキラした光景に誘われてつい顔を上げ、目を奪われてしまう。

(なんて楽しそうなの。別の世界みたい。お父様とお母様が生きていらした時でも、こんな素晴らしいパーティーに出た覚えはないわ)

 特に目立っていたのは、流行りのドレスに身を包んだ貴族令嬢や姫君たちだった。色とりどりのドレスを着た彼女たちは、造花の髪飾りや高価なジュエリーなどをふんだんにつけ、存在自体が輝いている。
 お喋り好きの彼女達は、うっとりした表情で佇むシャーロットに気がつくと、一斉に噂話を始めた。
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