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1.20歳~21歳
震える声でこんばんは
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無機質な発信音が流れたとほぼ同時に、プツンっと回線が繋がるような音がした。
「あ、あの、こんばんは!!」
思い切ってこちらから声をかける。
そんなに広くない家で、寝ている親を起こさない程度に声を抑えた。
「こんばんは、メガネです」
「あっ、ど、どうも、はじめまして、うみと申します」
どうしてだろう。
カメラ通話ではないのに、画面を直視できないのは。
「改めてさっきは本当にありがとね、頑張ってくれて、すごく綺麗だったよ」
「あばばばとんでもない!!」
私の中ではあわわわと可愛く言ったつもりだった。
そんな可愛らしい発音、私に出来るわけがなかった。
「そ、それより・・・」
「はい?」
「あの、良かったんですか・・・?あの様子だと、きっと誰かリスナーさんとお話する予定とかあったのでは・・・」
彼にそんな気はなくても、あのリスナー達の空気から察するに、個人チャットで色々聞かれたのではないかと容易に想像できた。
もしかしたら、対抗して半裸の写真を送ってきたリスナーだって居たかもしれない。
「あぁ・・・あはは、大丈夫ですよ」
やっぱりそうだ、通話の誘いもチャットも来ていたと見て間違いないだろう。
「それに、俺がうみさんと話したかったんです」
チーーーーーーン。
彼は惜しげもなく、干からびきったスネカジリニートに優しい言葉を投げかけた。
「そ、そうですか」
「あ、迷惑でした?」
「そんなことないですよ!!?」
「だったらよかった」
彼はどこまで優しいのだろうか。
もとい、どこまでが営業スマイルなのだろうか。
今の私には全てが営業に見えるが、干物的思考回路では見事にクリーンヒット、もはや虫の息である。
私の人見知りは激しい方ではあるが、一度打ち解けてしまえばなんでもぶちまけてしまう。
おかげで嫌われる人には徹底的に嫌われる故に、友達と呼べる人たちはみな、私の暴言のような口利きを寛大な心で許してくれる人達だけが残ってくれている。
つまり、もしここで緊張の糸が途切れ、私の本性が出てしまった場合。
淡く緩やかに芽生え始めた恋心は瞬く間に消え去ってしまう。
たかだか一時間も経っていないが、人を好きになるのに時間など関係あるものか。
・・・そう考えて、今まで何度も失敗してきたわけだが、そこは見て見ぬふりを決め込む。
「・・・じゃあ、里香さん?」
「おぅっふ、はい、なんでしょう!」
本名を教えてくれと言われ教えたら早速名前を呼ばれたでござる。
「迷惑じゃなきゃ、このままゆっくり話しながら・・・寝落ち通話でも」
「喜んでお供しますよ、長尾さん」
私も教えてもらったばかりの彼の本名を呼ぶ。
その後、出身地や学校の話、携帯への連絡先などたくさん語り合っているうちに、彼は寝息を立て始めた。
まだ頬が耳が顔全体が、真っ赤に火照っている気がする。
夜はこれからなのに、気づくと彼の寝息に誘われ、私まで眠りについてしまった。
「あ、あの、こんばんは!!」
思い切ってこちらから声をかける。
そんなに広くない家で、寝ている親を起こさない程度に声を抑えた。
「こんばんは、メガネです」
「あっ、ど、どうも、はじめまして、うみと申します」
どうしてだろう。
カメラ通話ではないのに、画面を直視できないのは。
「改めてさっきは本当にありがとね、頑張ってくれて、すごく綺麗だったよ」
「あばばばとんでもない!!」
私の中ではあわわわと可愛く言ったつもりだった。
そんな可愛らしい発音、私に出来るわけがなかった。
「そ、それより・・・」
「はい?」
「あの、良かったんですか・・・?あの様子だと、きっと誰かリスナーさんとお話する予定とかあったのでは・・・」
彼にそんな気はなくても、あのリスナー達の空気から察するに、個人チャットで色々聞かれたのではないかと容易に想像できた。
もしかしたら、対抗して半裸の写真を送ってきたリスナーだって居たかもしれない。
「あぁ・・・あはは、大丈夫ですよ」
やっぱりそうだ、通話の誘いもチャットも来ていたと見て間違いないだろう。
「それに、俺がうみさんと話したかったんです」
チーーーーーーン。
彼は惜しげもなく、干からびきったスネカジリニートに優しい言葉を投げかけた。
「そ、そうですか」
「あ、迷惑でした?」
「そんなことないですよ!!?」
「だったらよかった」
彼はどこまで優しいのだろうか。
もとい、どこまでが営業スマイルなのだろうか。
今の私には全てが営業に見えるが、干物的思考回路では見事にクリーンヒット、もはや虫の息である。
私の人見知りは激しい方ではあるが、一度打ち解けてしまえばなんでもぶちまけてしまう。
おかげで嫌われる人には徹底的に嫌われる故に、友達と呼べる人たちはみな、私の暴言のような口利きを寛大な心で許してくれる人達だけが残ってくれている。
つまり、もしここで緊張の糸が途切れ、私の本性が出てしまった場合。
淡く緩やかに芽生え始めた恋心は瞬く間に消え去ってしまう。
たかだか一時間も経っていないが、人を好きになるのに時間など関係あるものか。
・・・そう考えて、今まで何度も失敗してきたわけだが、そこは見て見ぬふりを決め込む。
「・・・じゃあ、里香さん?」
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本名を教えてくれと言われ教えたら早速名前を呼ばれたでござる。
「迷惑じゃなきゃ、このままゆっくり話しながら・・・寝落ち通話でも」
「喜んでお供しますよ、長尾さん」
私も教えてもらったばかりの彼の本名を呼ぶ。
その後、出身地や学校の話、携帯への連絡先などたくさん語り合っているうちに、彼は寝息を立て始めた。
まだ頬が耳が顔全体が、真っ赤に火照っている気がする。
夜はこれからなのに、気づくと彼の寝息に誘われ、私まで眠りについてしまった。
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