愛されすぎて困ってます！

プロローグ

生まれた。

「おんぎゃ～おんぎゃ～！」


暗くて狭い道から押しつぶされるようにして、出た先には朧気ながら眩いシャンデリアの光のようなものが見えた。


「奥様、産まれました。元気な男の子ですよ。」


白に近いグレーの頭髪を持った人影が目に映る。生まれたばかりだからか、視界はまるでピントがあってないようにぼやけていた。



「可愛い私の子。＿＿＿＿レティシア。元気に産まれてきてくれてありがとう。」





はっきり見えなくてもこの慈愛に満ちた声で確信した。この人が僕の今世の母であることを。





母の顔がはっきり見えないのは残念だけど、美しいソプラノボイスであることからきっと顔も綺麗なのだろうと想像する。




それから間もなくして、部屋の外が騒がしくなってきたと思ったら。誰かが勢いよく入ってきた。





「リリー！無事生まれたかい？！」






「ええ、生まれましたよ！元気な男の子です。レティシア。お父様ですよ。」


部屋に突撃してきた人物は母のことを まるでよくやったというかのように母を優しく抱き寄せた。この感じからしてこの人が父だと推測する。


「レティ～！パパでちゅよ～！」

甘々な声で呼びかけられたが一瞬父の声だと気づかなかった。あまりにも母と話していた声音と違ったからだ。レティというのは僕の愛称だろうか。

先程も言っていたがどうやら僕の名前はレティシアらしい。





「ほぅ。リリーと同じ銀髪か！よく見れば何となくリリーに似ている気もするな！天使みたいだ！」
「もう！オリバーったら。まだ生まれてきたばかりなのにどちらに似てるかなんて分からないでしょう？」



どうやら僕の新しいお父さんはもう親バカになってしまったらしい。



「いや、絶対にリリーに似て天使のような子に育つさ。」
「ふふっ。あなたったら。そうですわねこんなに可愛らしいんだもの！将来が楽しみですね！」





今世の親も仲が良さそうで安心しているとまた誰かこちらに向かっているようだった。




「「母様！僕(俺)たちの弟が生まれたってほんとですか？！」」



そう言って乗り込んできたのはまだ幼い7、8歳くらいの男の子の声二人分だった。




「あらあら。そんなに慌てて。、、あなた達の弟がびっくりしてしまうわ？」




「「そうでした！すいません！」」



この男の子達はとても息ぴったりだった。




「「っ！かわいい！！！」」







「母様！この子の名前はなんというのですか？」




「古代語で光を意味する。レティシアよ。素敵でしょう？」



「はい！とってもいい名前です！この子にもよく似合っています。レティシアは天使です！」



「俺もそう思う！こんなに可愛い弟は俺らが守らないとな！」



2人ともそんなことを言いながら僕のほっぺをつつく。くすぐったくて僕はきゃっきゃっと可愛らしく笑う。




そんな僕見て2人は



「「かわいいっ！！！」」


とずっと僕が眠りにつくまで何回も言い聞かせるように言った。




＿＿＿＿僕はまだこの目でお兄さんたちを見ることが出来ないけど。僕にとても優しいことは分かる。
そんなお兄さんたち早くその目を見て僕も大好きだよって伝えたいな。そんなことを考えつつ、僕は睡魔に身を任せ眠りについた。