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【3.あのときからずっと 】大切
大切(4)
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彼があれを作ってくれた次の日、星歌も今度は行人のために彼の亡き母の「宝石箱」を探った。
本当はジュエリーボックスじゃなくて手芸用品入れというのは分かったけれど、小さくてキラキラと輝くビーズは本物の宝石のように美しい。
そこから白く光る星型のビーズを選んで、行人がやっていたように糸に通す。
不器用な星歌のこと。少々いびつだが、おそろいの飾りを作ったのだ。
──いい? きのうのキッスのことはだれにもナイショだからね!
なぜだか脅すような発言になってしまったが星の飾りを手渡すと、はにかんだように行人は笑ってくれたっけ。
「……なんで忘れてたかな、私は」
唇によみがえる甘くてやさしい感情。
それは星歌にとって、胸にぎゅっと抱きしめたい想い出となって蘇った。
でも、今は考えるまい。
幼い彼女があげた星飾りを、行人がキーホルダーにして持っていてくれた──それだけで十分だ。
星歌はスニーカーの踵を床にしっかりとつけた。
背筋がピンと伸びる。
そろそろ向かいの高校の下校時間だ。
お腹を空かせた生徒たちがやって来るに違いない。
お客さまをお迎えしなくちゃ。
その建物の中には義弟もいるのだということは決して考えるまいと、星歌は商品を入れる紙袋を準備する。
本当はジュエリーボックスじゃなくて手芸用品入れというのは分かったけれど、小さくてキラキラと輝くビーズは本物の宝石のように美しい。
そこから白く光る星型のビーズを選んで、行人がやっていたように糸に通す。
不器用な星歌のこと。少々いびつだが、おそろいの飾りを作ったのだ。
──いい? きのうのキッスのことはだれにもナイショだからね!
なぜだか脅すような発言になってしまったが星の飾りを手渡すと、はにかんだように行人は笑ってくれたっけ。
「……なんで忘れてたかな、私は」
唇によみがえる甘くてやさしい感情。
それは星歌にとって、胸にぎゅっと抱きしめたい想い出となって蘇った。
でも、今は考えるまい。
幼い彼女があげた星飾りを、行人がキーホルダーにして持っていてくれた──それだけで十分だ。
星歌はスニーカーの踵を床にしっかりとつけた。
背筋がピンと伸びる。
そろそろ向かいの高校の下校時間だ。
お腹を空かせた生徒たちがやって来るに違いない。
お客さまをお迎えしなくちゃ。
その建物の中には義弟もいるのだということは決して考えるまいと、星歌は商品を入れる紙袋を準備する。
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