56 / 136
【2.砕け散る星】鎌首
鎌首(3)
しおりを挟む
「今度は何ですか。ダメだしですよねぇ。申し訳ありませんねぇ……」
「いや、そうじゃなくて」
目の前のつむじが、翔太自身の手で隠された。
目を覆う前髪をかきあげてから、彼は星歌に封筒を差し出す。
「今日はありがとうございました」
そう言ってペコリと頭を下げたのだ。
「オープン初日だったから本当に助かりました。バイト募集してなかったのはこっちの手抜かりなのに、急にお願いしてこんなに手伝ってもらって……」
「いやぁ、べつに……」
心の中で悪態をついていた相手に礼を述べられ、戸惑うと同時にじわりと胸に灯が点るのを感じる。
働いて「ありがとう」と言われたのは初めてだった。
疲れきった身体にあたたかな血潮が流れ出す。
きっと、口元もニヤけているに違いない。
察するところこれは……と、緩む頬を誤魔化すように封筒を指で触ってみる。
薄い──。
これはもしかしたら万札か?
ニヤつきながらサスサスと封筒をさする星歌を前に、しかし翔太の真剣な表情が崩れることはなかった。
「今日はいきなりだったから、それをお礼ってことで受け取ってもらえないかな。それで、あらためてお願いなんだけど。良かったら、本当にバイトしてくれないか?」
今日、すごく助かったから──その言葉に、星歌は封筒を握りしめる。
「いや、そうじゃなくて」
目の前のつむじが、翔太自身の手で隠された。
目を覆う前髪をかきあげてから、彼は星歌に封筒を差し出す。
「今日はありがとうございました」
そう言ってペコリと頭を下げたのだ。
「オープン初日だったから本当に助かりました。バイト募集してなかったのはこっちの手抜かりなのに、急にお願いしてこんなに手伝ってもらって……」
「いやぁ、べつに……」
心の中で悪態をついていた相手に礼を述べられ、戸惑うと同時にじわりと胸に灯が点るのを感じる。
働いて「ありがとう」と言われたのは初めてだった。
疲れきった身体にあたたかな血潮が流れ出す。
きっと、口元もニヤけているに違いない。
察するところこれは……と、緩む頬を誤魔化すように封筒を指で触ってみる。
薄い──。
これはもしかしたら万札か?
ニヤつきながらサスサスと封筒をさする星歌を前に、しかし翔太の真剣な表情が崩れることはなかった。
「今日はいきなりだったから、それをお礼ってことで受け取ってもらえないかな。それで、あらためてお願いなんだけど。良かったら、本当にバイトしてくれないか?」
今日、すごく助かったから──その言葉に、星歌は封筒を握りしめる。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編
タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。
私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが……
予定にはなかった大問題が起こってしまった。
本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。
15分あれば読めると思います。
この作品の続編あります♪
『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる