あの日の恋

既婚女性と独身男性との恋

セフレ2

その日はちょっとしたトラブルで残業になってしまい、定時を過ぎての退勤になりました。
ロッカーで着替えていると夫であるM彦から「今夜は店長会議と在庫チェックで帰れない」とLINEが着ていました。

（きっとまたあの女と……）

悲しいわけではなく、あの夫にそんな相手がいることに対しての嫉妬でした。

（私になんか誰も興味ないわよね……）

ロッカーの小さな鏡に映る自分の顔を見て、そう心の中で呟き、更衣室を出ると、そこに真司君が立っていました。

「あっ、お、お疲れ様です」

女子の更衣室の前だったせいか、ちょっと照れながら挨拶をしてくれた真司君。

「お疲れ様です！　まだお仕事ですか？」

普段は外に出てることが多い彼なので、こうして会えて嬉しかったのでしょう。私は明るく挨拶を返しました。

「い、いえ、今日はもうあがります。道代さんは、残業だったんですか？」

「あ、うん。ちょっとトラブルがあってね。でも今日は旦那もいないから慌てなくていいの。ありがとうね」

こうして真司君と会話ができただけで今日は良い一日になったなと思い、「ありがとう」って言ってた私。

「あの、もし良かったら軽くご飯とか行きませんか？」

「えっ？　私と？」

「あっ！　いや、もしご迷惑なら全然……気にしないでください。すいません」

迷惑どころか、まさか真司君からこんなお誘いを受けるなんて思っていなかった私はつい、私と？と訊き返してしまったのです。

「迷惑なんてないですよ。でも、せっかくのご飯なのに私と一緒で良いの？」

まだこの現実を受け入れきれずにいた私は、もう一度、訊き返しました。

「はい。と言うか……道代さんと行きたくて、いつかお願いしようと思って。さっきまだいらっしゃったんで待ってたんです」

「それでここに居たの？」

「はい……すみません。あの、今日とかじゃなくても良かったんです。いつか行きたいなって。ただ、さっき今日は慌てなくて良いって言ってたんで、つい……」

真司君は明らかに普段と違い、モジモジとして、まるで高校生が好きな子に告白しているような感じだった。

「私は今日なら大丈夫だよ。明日は土曜日だし、本当に今日は旦那も仕事でいないから。じゃあ、ご飯食べに行く？」

私がそう言ってにっこり笑うと、真司君はパァーッと表情が明るくなり、

「はい！　行きましょう！」

と大きな声を上げていました。


（続）