あの日の恋

河衣佳奈

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既婚女性と独身男性との恋

潤い(4)

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その夜。旦那が寝たのを確認して、スマホを手にリビングに向かいました。

(先ずは登録しなきゃだったわね)

由美子さんはマリンというハンドルネームで、千秋さん同様、都内在住の40代の主婦として登録しました。求める相手も千秋さんを真似て、「婚外恋愛」「年下希望」とし、身長や体重はできるだけ実際のものを入力しました。

(これで、登録ボタンをーー)

程なくすると、由美子さん、いえ、マリンさんが登録されました。

(私にも素敵な相手が見つかるかしら……)

ポツリと呟き、寝室に戻ると、スマホの電源をOFFにしていつの間にか眠ってしまっていました。




翌朝、旦那が出勤した後、スマホの電源を入れると、あのサイトから8件のメッセージが届いていました。

(もう、こんなに!)

千秋さんから聞いてたものの半信半疑だった由美子さんは、驚きと期待が入り混じった気持ちでそのメッセージに目を通していきました。

30歳の独身、サラリーマン……
37歳の既婚、IT企業勤務……
39歳の既婚、自営業……
26歳の独身、不動産会社勤務……

プロフィールの内容もそれぞれで、中にはキメ顔を添付してメッセージを送っている男性もいて、ちょっぴり笑ってしまったり。

そんな中、由美子さんの目に止まったのは、33歳独身、塾講師の豊さんという男性。身長174センチ、体重67キロで、横顔の写真が添付されていました。

<マリンさん、はじめまして。年下の男性を希望されていると拝見し、自分を対象としていただけたらと思い、メッセージしました。もし良かったらやり取りさせてください>

シンプルな文章ながらどこか優しさを感じられ、好感が持てました。

(よし、この方とやりとりしてみよう……)

由美子さんは豊さんからのメッセージに返信しました。

<私のような女性にメッセージをくださり、ありがとうございます。実はこういうのが初めてで不慣れですが、是非色々お話しさせてください>

送信ボタンを押し、スマホをポケットにしまうと、キッチンに立ち洗い物に取り掛かりました。いつもはどこか気の重いこのルーティンが、なぜか今日は楽しいとさえ感じていたのでした。




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