4 / 11
籠の外3
しおりを挟む
瞼をついて入る光が徐々に弱まると、騒がしい程に様々な音が聞こえ出した。
しかしそれらは全て聞き慣れた鳥籠での風で草葉が揺れる音や土を踏む音、ファーストウルフの遠吠え、ワイバーンの鳴き声や羽音、天龍の咆哮何かでは無い。
初めは聞き慣れない音だと思ったが、よく考えればよく知っている音だ。
じわりと胸の奥が熱くなる感覚・・・
そうだ、懐かしいんだ。
それはいつも普通のように聞いていた音、いつの間にか異常と通常があべこべになっていたんだ——。
金属が擦れる音、エンジン音、鳥のさえずりや、雑踏の音、人の声・・・
慌てて目を開くとそこには目を疑うような光景が広がっていた。
「これは——。街だ!俺達以外にこんなに人がいっぱいいたのか!?」
それは紛れもない街であった。木ではなく沢山の人口建物が並び、聞こえてくるのは獣ではなく人の声。夢にまで見た世界が今目の前にあるのだ、そう思った瞬間に今までの鳥籠での出来事が思い出されて、気づけば涙の粒が頬を伝って石畳に一瞬小さなシミをつくっていた。
「コウジ、どうした?大丈夫か?」
傍らでシュガーが心配そうに俺の顔を見上げている。平気だと伝えるとシュガーは心配させるなよ~。と微笑む。
「ではそろそろご移動願えますか?」
微笑ましく笑い合う2人の間を割って入るように男は独りでに歩き始めた。
ここで置いていかれては困ると、俺とシュガーは慌てて男の背中について行った。
男について歩いていると、今いる場所が大きな橋の上である事に気がついた。レンガのように均等に組まれた岩が脚となり橋を支え、その続きで橋の床も綺麗な石畳となって美しい緩やかなアーチを描く。手すりは木製で、朱色と黒が色付けされている。
何だか和洋が融合したみたいで変な橋だな・・・
そう思いつつ下を覗くと予想に反して水が一滴も無く驚いた。
そこに引かれたのは川では無く線路であった。
「コウジ!何やってるんだ、危ないぞ!」
慌てたシュガーが隣まで来た瞬間、大きな音と共に橋の下を小型の電車が通り過ぎた。
「何だあれ!?見ろよコウジ!水じゃなくて変なのが走って行ったぞ!!」
「おい!シュガー落ちるぞ!!ったく、危ないのはどっちだよ・・・」
興奮した勢いで橋の枠に飛び付き、一生懸命短い手を伸ばして訴えるシュガーを抱え下ろした。
「なーなー!アレは何だったんだ!?教えてくれよコウジー!」
少し気になるが、男を見失う訳にもいかないので再び歩き始めると、シュガーが前方に飛び出してきて両手で俺の右手を掴むと、引っ張ったり揺さぶって俺の進行の邪魔を始めた。
「今は出来る限り周囲を観察したいんだ。また後で教えてやるから」
正直少し面倒な所もあり簡単にあしらおうとするが、シュガーは諦める何処かキラキラした瞳で此方を一心に見つめて期待に胸を踊らせている。これでは俺が悪いみたいじゃないか?
きっと小さな子を持つ親も、こんな複雑な気持ちなんだろうなぁ・・・
『いやぁーだ!!』
しかしそれらは全て聞き慣れた鳥籠での風で草葉が揺れる音や土を踏む音、ファーストウルフの遠吠え、ワイバーンの鳴き声や羽音、天龍の咆哮何かでは無い。
初めは聞き慣れない音だと思ったが、よく考えればよく知っている音だ。
じわりと胸の奥が熱くなる感覚・・・
そうだ、懐かしいんだ。
それはいつも普通のように聞いていた音、いつの間にか異常と通常があべこべになっていたんだ——。
金属が擦れる音、エンジン音、鳥のさえずりや、雑踏の音、人の声・・・
慌てて目を開くとそこには目を疑うような光景が広がっていた。
「これは——。街だ!俺達以外にこんなに人がいっぱいいたのか!?」
それは紛れもない街であった。木ではなく沢山の人口建物が並び、聞こえてくるのは獣ではなく人の声。夢にまで見た世界が今目の前にあるのだ、そう思った瞬間に今までの鳥籠での出来事が思い出されて、気づけば涙の粒が頬を伝って石畳に一瞬小さなシミをつくっていた。
「コウジ、どうした?大丈夫か?」
傍らでシュガーが心配そうに俺の顔を見上げている。平気だと伝えるとシュガーは心配させるなよ~。と微笑む。
「ではそろそろご移動願えますか?」
微笑ましく笑い合う2人の間を割って入るように男は独りでに歩き始めた。
ここで置いていかれては困ると、俺とシュガーは慌てて男の背中について行った。
男について歩いていると、今いる場所が大きな橋の上である事に気がついた。レンガのように均等に組まれた岩が脚となり橋を支え、その続きで橋の床も綺麗な石畳となって美しい緩やかなアーチを描く。手すりは木製で、朱色と黒が色付けされている。
何だか和洋が融合したみたいで変な橋だな・・・
そう思いつつ下を覗くと予想に反して水が一滴も無く驚いた。
そこに引かれたのは川では無く線路であった。
「コウジ!何やってるんだ、危ないぞ!」
慌てたシュガーが隣まで来た瞬間、大きな音と共に橋の下を小型の電車が通り過ぎた。
「何だあれ!?見ろよコウジ!水じゃなくて変なのが走って行ったぞ!!」
「おい!シュガー落ちるぞ!!ったく、危ないのはどっちだよ・・・」
興奮した勢いで橋の枠に飛び付き、一生懸命短い手を伸ばして訴えるシュガーを抱え下ろした。
「なーなー!アレは何だったんだ!?教えてくれよコウジー!」
少し気になるが、男を見失う訳にもいかないので再び歩き始めると、シュガーが前方に飛び出してきて両手で俺の右手を掴むと、引っ張ったり揺さぶって俺の進行の邪魔を始めた。
「今は出来る限り周囲を観察したいんだ。また後で教えてやるから」
正直少し面倒な所もあり簡単にあしらおうとするが、シュガーは諦める何処かキラキラした瞳で此方を一心に見つめて期待に胸を踊らせている。これでは俺が悪いみたいじゃないか?
きっと小さな子を持つ親も、こんな複雑な気持ちなんだろうなぁ・・・
『いやぁーだ!!』
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる