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夏休みが始まります
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「じゃ、邪魔するぞ」
「はい、どうぞ」
チラチラとこちらを見ながら全身をササっと洗った会長様は、何故かまたウロウロと視線を彷徨わせながら浴槽に足を入れた。
向かい合って湯に入る会長様をジッと見つめてしまう。いつもセンター分けにされている前髪を後ろに撫で付けていて、なんだか違う人みたい。
「な、なんだ?」
「あ・・・・・・、えっと、会長様の前髪がいつもと違うからついジッと見ちゃいました。ごめんなさい」
「そそそそうか。ど、どうだ?いつもとどっちが格好いい?」
んー・・・・・・難しい質問だなぁ。どっちにしろ会長様はイケメンさんだし。イケメンさんって何してもイケメンさんなんだもんなぁ。・・・・・・うっらやましい!
「そうですねぇ・・・・・・。いつもの髪型もお似合いですし格好いいですけど、今の会長様はいつもより大人っぽくってまた違う魅力がありますね」
うーん、と悩みながらそう呟くと会長様は頬を赤く染め斜め上に視線を逸らした。
「そ、そうか?は、はははは・・・・・・はる!」
「はい?」
唐突に僕の名前を叫ぶ会長様にキョトリと首を傾げる。
「その・・・・・・俺も、俺にも!遥って呼ばせろ!それに俺だけ会長様って呼び方も気に入らねぇ」
「え?ど、どうぞ?じゃあ、神宮寺先輩?」
「いいのか!?・・・・・・っしゃあ!」
破顔して小さくガッツポーズをした会長様は、急にむっつりと唇を尖らせた。
「・・・・・・でもなんで俺だけ苗字なんだ」
「へ?名前で呼んでもいいんですか?」
「ん、遥は、特別だ」
「特別・・・・・・。なんだか照れますねっ。慧、先輩」
えへへ、と照れ笑いしつつもそう呼ぶと、ぐぅ・・・・・・と唸って片手で顔を隠してしまった。耳が赤くなってるけど、もしかしてのぼせちゃった?もしかして長湯が得意じゃないのかな?でもそういえば僕もそろそろのぼせちゃいそうかも。
「先輩?大丈夫ですか?のぼせちゃいました?僕そろそろ上がろうと思うんですけど、慧先輩も上がります?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。先に上がっていてくれ」
「わかりました。じゃあお先に失礼しますね」
ザパリと湯から出て脱衣所に出た瞬間、「クソッ!さっき出したばっかりだってのに・・・・・・!」って聞こえてきたけど、何か無くなっちゃったのかな?
首を傾げながらバスタオルを借り、慧先輩が用意してくれていたTシャツをスッポリと被った。湊くんにTシャツ借りた時から思ってたけど、もうこれいっそ短いワンピースだよねぇ。涼しいからいいけどさ、僕だってまだまだ成長期・・・・・・なはずだしきっとこのワンピースもどきがTシャツになる日が来るはずっ!
ふんふん~、と鼻歌を歌いながらドライヤーをかけていると、慧先輩がお風呂場から出てきた。なんだかさっきより疲れてない?気のせいかなぁ?やっぱりのぼせたのかな?冷蔵庫好きに漁っていいって言ってたしお水でも持ってきてあげよう。
乾いた髪の毛を適当に櫛で梳かしてからパタパタとキッチンへ行って、ミネラルウォーターを持って戻ると、どうしたんだ?とキョトリとされてしまった。
「これ、どうぞ。なんか顔赤くなってますし、水分取ったほうがいいですよ?」
「あ、あぁ、ありがとう。やはり天使だ。・・・・・・遥は水分とったか?」
「え?いえ、まだです」
「そうか。では遥こそちゃんと水分を取るように」
「はい、ありがとうございます。じゃあ冷蔵庫にあったお水頂きますね」
慧先輩、話し方はぶっきらぼうだけど、やっぱり優しい人だなぁ、なんて思いながらキッチンへ向かってお水をゴクリゴクリと飲む。うん、僕も喉乾いてたみたい。
お水を飲みながら携帯を確認すると、おにぃから連絡がきてた!予定通り明後日には帰国できるようでホッとする。やっと皆んなに会える。嬉しいなぁ~!
「遥、飲み終わったなら歯磨きして来い。俺は先にベッドに行っている」
ニコニコとおにぃに返信をしていると、髪を乾かし終わってサラリと前髪ができている慧先輩が声をかけてくれたので、はぁい、と返事をして脱衣所に駆け込んだ。歯磨きをした後、先に寝室へ行っていた慧先輩の横に滑り込む。
背中を向けて微動だにしない慧先輩。もう寝ちゃったのかな?やっぱり疲れてるんだね。
熱に寄り添うようにペトリとおでこを慧先輩の背中にくっつけて目を閉じると、僕も疲れていたのかすぐに夢の中へ落ちていった。
「煩悩滅却・・・・・・我慢だ・・・・・・」
シンとした室内にポツリと苦しげに落ちた呟きをぐっすりと眠る僕が拾う事は無かった。
────寝苦しさに瞼をあげる。視界に飛び込んできたのは筋肉質な胸元。慧先輩に抱き枕のように抱きしめられているみたい。寝苦しさは僕の上に力なく置いてある腕の重みだったみたい。外はまだ少し薄暗く早朝といった感じだし、起きるのにはまだ早いみたい。
ごそりと身動ぎすると、ぎゅっと腕に力が入ってビクリとする。起こしちゃったかな?ソロソロと顔を見上げると、慧先輩が寝惚けたようにぼんやりと目を開けていた。
「慧先輩・・・・・・?起こしちゃいましたか?まだ寝てても大丈夫ですよ」
小声でそう囁くと慧先輩はぼんやりとしたまま、なんだ、夢か。と呟いて僕の頬を撫でる。
「夢なら・・・・・・いいよな」
「へ?慧せんぱ・・・・・・っ!?」
ぼんやりと開けていた目をゆっくりと閉じた慧先輩は、僕の呼びかけをスルーして唇同士を重ね合わせた。
「はい、どうぞ」
チラチラとこちらを見ながら全身をササっと洗った会長様は、何故かまたウロウロと視線を彷徨わせながら浴槽に足を入れた。
向かい合って湯に入る会長様をジッと見つめてしまう。いつもセンター分けにされている前髪を後ろに撫で付けていて、なんだか違う人みたい。
「な、なんだ?」
「あ・・・・・・、えっと、会長様の前髪がいつもと違うからついジッと見ちゃいました。ごめんなさい」
「そそそそうか。ど、どうだ?いつもとどっちが格好いい?」
んー・・・・・・難しい質問だなぁ。どっちにしろ会長様はイケメンさんだし。イケメンさんって何してもイケメンさんなんだもんなぁ。・・・・・・うっらやましい!
「そうですねぇ・・・・・・。いつもの髪型もお似合いですし格好いいですけど、今の会長様はいつもより大人っぽくってまた違う魅力がありますね」
うーん、と悩みながらそう呟くと会長様は頬を赤く染め斜め上に視線を逸らした。
「そ、そうか?は、はははは・・・・・・はる!」
「はい?」
唐突に僕の名前を叫ぶ会長様にキョトリと首を傾げる。
「その・・・・・・俺も、俺にも!遥って呼ばせろ!それに俺だけ会長様って呼び方も気に入らねぇ」
「え?ど、どうぞ?じゃあ、神宮寺先輩?」
「いいのか!?・・・・・・っしゃあ!」
破顔して小さくガッツポーズをした会長様は、急にむっつりと唇を尖らせた。
「・・・・・・でもなんで俺だけ苗字なんだ」
「へ?名前で呼んでもいいんですか?」
「ん、遥は、特別だ」
「特別・・・・・・。なんだか照れますねっ。慧、先輩」
えへへ、と照れ笑いしつつもそう呼ぶと、ぐぅ・・・・・・と唸って片手で顔を隠してしまった。耳が赤くなってるけど、もしかしてのぼせちゃった?もしかして長湯が得意じゃないのかな?でもそういえば僕もそろそろのぼせちゃいそうかも。
「先輩?大丈夫ですか?のぼせちゃいました?僕そろそろ上がろうと思うんですけど、慧先輩も上がります?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。先に上がっていてくれ」
「わかりました。じゃあお先に失礼しますね」
ザパリと湯から出て脱衣所に出た瞬間、「クソッ!さっき出したばっかりだってのに・・・・・・!」って聞こえてきたけど、何か無くなっちゃったのかな?
首を傾げながらバスタオルを借り、慧先輩が用意してくれていたTシャツをスッポリと被った。湊くんにTシャツ借りた時から思ってたけど、もうこれいっそ短いワンピースだよねぇ。涼しいからいいけどさ、僕だってまだまだ成長期・・・・・・なはずだしきっとこのワンピースもどきがTシャツになる日が来るはずっ!
ふんふん~、と鼻歌を歌いながらドライヤーをかけていると、慧先輩がお風呂場から出てきた。なんだかさっきより疲れてない?気のせいかなぁ?やっぱりのぼせたのかな?冷蔵庫好きに漁っていいって言ってたしお水でも持ってきてあげよう。
乾いた髪の毛を適当に櫛で梳かしてからパタパタとキッチンへ行って、ミネラルウォーターを持って戻ると、どうしたんだ?とキョトリとされてしまった。
「これ、どうぞ。なんか顔赤くなってますし、水分取ったほうがいいですよ?」
「あ、あぁ、ありがとう。やはり天使だ。・・・・・・遥は水分とったか?」
「え?いえ、まだです」
「そうか。では遥こそちゃんと水分を取るように」
「はい、ありがとうございます。じゃあ冷蔵庫にあったお水頂きますね」
慧先輩、話し方はぶっきらぼうだけど、やっぱり優しい人だなぁ、なんて思いながらキッチンへ向かってお水をゴクリゴクリと飲む。うん、僕も喉乾いてたみたい。
お水を飲みながら携帯を確認すると、おにぃから連絡がきてた!予定通り明後日には帰国できるようでホッとする。やっと皆んなに会える。嬉しいなぁ~!
「遥、飲み終わったなら歯磨きして来い。俺は先にベッドに行っている」
ニコニコとおにぃに返信をしていると、髪を乾かし終わってサラリと前髪ができている慧先輩が声をかけてくれたので、はぁい、と返事をして脱衣所に駆け込んだ。歯磨きをした後、先に寝室へ行っていた慧先輩の横に滑り込む。
背中を向けて微動だにしない慧先輩。もう寝ちゃったのかな?やっぱり疲れてるんだね。
熱に寄り添うようにペトリとおでこを慧先輩の背中にくっつけて目を閉じると、僕も疲れていたのかすぐに夢の中へ落ちていった。
「煩悩滅却・・・・・・我慢だ・・・・・・」
シンとした室内にポツリと苦しげに落ちた呟きをぐっすりと眠る僕が拾う事は無かった。
────寝苦しさに瞼をあげる。視界に飛び込んできたのは筋肉質な胸元。慧先輩に抱き枕のように抱きしめられているみたい。寝苦しさは僕の上に力なく置いてある腕の重みだったみたい。外はまだ少し薄暗く早朝といった感じだし、起きるのにはまだ早いみたい。
ごそりと身動ぎすると、ぎゅっと腕に力が入ってビクリとする。起こしちゃったかな?ソロソロと顔を見上げると、慧先輩が寝惚けたようにぼんやりと目を開けていた。
「慧先輩・・・・・・?起こしちゃいましたか?まだ寝てても大丈夫ですよ」
小声でそう囁くと慧先輩はぼんやりとしたまま、なんだ、夢か。と呟いて僕の頬を撫でる。
「夢なら・・・・・・いいよな」
「へ?慧せんぱ・・・・・・っ!?」
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