黒猫ちゃんは愛される

抹茶もち

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夏休みが始まります

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「くじょうくん、いい匂い」

「そ、かな・・・・・・?遥くんのほうが甘くて・・・・・・いい匂いだよ」


 膝に乗った僕に覆いかぶさるようにして首元に顔を埋めた九条くんの、少し冷たい鼻先がスリッと首筋を撫でた感触にビクリと体が震えた。


「ン・・・ッ。くじょうくん、お鼻、つめたいね?」

「・・・・・・遥くんが火照ってるからだと、思うよ?」

「んぅ?そかなぁ?」

「うん、遥くん首元まで桃色になってるもん。・・・・・・ね、遥くん、お願いがあるんだけど、いいかな?」

「おねがい?なぁに?」

「・・・・・・俺の事も名前で呼んでほしい、なっ、て。だめかな?」

「みなとくん?」

「ん゛んん~・・・・・・嬉しい。本当はずっと名前で呼んで欲しかったけど、言い出せなかったから。これからも名前で呼んでくれたら嬉しい、な?」

「ん、わかった、みなとくん~!」


 名前くらいいくらでも呼ぶのになんだか可愛いなぁ~。ニコニコになりながら名前を呼んで首元に伏せられたままの九条くんの頭を撫でた。

 ん~、やっぱりみなとくんの髪の毛、とっても綺麗で触り心地いいなぁ~。
 そのままサラサラと梳いてみなとくんの髪の毛の感触を楽しむ。


「・・・・・・遥くんって、俺の髪の毛好き?」

「ん、好き。初めてお話しした時も思ったけど、みなとくんの髪の毛、キラキラしててサラサラでとっても綺麗なんだもん。みなとくんは知れば知るほど優しくて格好良くて、キラキラしてるから絵本の中の王子様みたいだよねぇ」

「う゛~・・・・・・。遥くんが可愛すぎて死にそう。もういっそ俺も酔ってしまいたい・・・・・・うん、俺もチョコ食べよ」


 首元でブツブツと何かを呟いていたみなとくんは、おもむろに顔を上げて僕の頭を撫でてくれた。お返ししてくれてるのかな?うれしい。

 撫でられるままみなとくんを見つめていると、僕を撫でたまま反対の手でチョコを摘んだ。もしかして食べさせてくれるのかな?ちょこれーと!

 期待に瞳をきらめかせていると、チョコレートがみなとくんのお口に入っていってしまう。

 あぁ・・・・・・!ちょこれーと・・・・・・。

 思わず体がチョコを追いかけてしまい、みなとくんのお口と僕のお口がぶつかった。

 あ、みなとくんのお口、甘い・・・・・・。

 唇にチョコレートがついていたのか、みなとくんの唇が甘く感じて、思わずそのままペロリと舐めた。美味しい。みなとくんから少し体を離して自分の唇をペロリと舐める。


「みなとくん甘くて美味しい」

「・・・・・・あぁもう!必死で我慢、してたのにっ!」


 熱を湛えた目元を苦しそうに歪めた九条くんの大きな手に後頭部を掴まれ、そのままグイッと引き寄せられたかと思ったら、みなとくんに僕の熱を持った唇を食べられた。


「ん・・・ッ、ふぅ・・・、ん・・・んッ」


 ちゅっちゅぷっ、と角度を変えて唇を食まれる。上手に息ができなくて、鼻にかかった甘えたような声が口から漏れていく。

 何度も何度も唇を食べられ、もともと働いていなかった頭が、唇から伝わる熱くて甘い熱によりもっとふわふわしてきてしまった頃、ちゅ・・・・・・っとリップ音を響かせてみなとくんが離れていく。


「あ・・・・・・、やだぁ、もっと甘いのちょーだい?」


 離れていく熱が寂しい。もっと甘いの欲しいのに。と、みなとくんのTシャツの胸元をぎゅっと握る。


「・・・・・・っ!ん、いいよ。ねぇ遥くん、嫌だったら殴っていいから」


 一瞬息を呑んだみなとくんは、何かを堪えるようにぎこちなく笑んでおもむろにチョコレートを手に取った。

 チョコレート食べさせてくれるのかな?さっきのは終わり?と思いながらみなとくんを見つめ続けていると、摘んでいたチョコレートをそのまま自らの口の中へ放り込み、すぐに僕の唇を塞いだ。

 さっきの甘くて気持ちいいやつだぁ、って嬉しくなってそっと目を閉じ受け入れると、押しつけたままの唇にチョコレートがトン、と当たった。

 ちょこれーと、くれるのかな?

 唇を少し開き、チョコレートを招き入れようとすると、チョコレートと一緒にみなとくんの熱い舌がぬるりと入ってきた。

 初めての経験にビクリと体を震わせると、僕の後頭部を支えてくれていた大きな手がゆっくりと頭を撫でてくれる。その優しい手の感触に、強張った体からふにゃりと力が抜けた。そのままみなとくんにもたれかかり、熱を受け入れた。

 逃げそうになる舌を優しく絡め取られ、お互いの舌の熱でチョコレートが溶けていく。その甘さを味わうように舌をねぶられていたかと思えば口蓋をゆっくりとめられる。惜しみなく与えられる熱に、口内から体の隅々までその熱がゾクゾクと僕を染めていく。


「んぅ・・・・・・ッふ、あ・・・」

「ん・・・・・・、遥、くん、きもち?やじゃなかった?」


 口内からチョコレートが無くなった頃ゆっくりと唇が離れていき、至近距離からみなとくんの掠れた声が聞こえる。おろしていた瞼をゆっくりと上げ、生理的な涙で潤んだ瞳のままみなとくんと見つめ合った。


「ん、きもち・・・・・・。やじゃないよ。でももう体にちから、はいんない」

「かわい・・・・・・。ね、やじゃなかったなら、もっとしていい?」

「ん、いい、よ?」


 コクリと頷くと、ありがとう、と掠れた声で呟いた湊くんに、何度も何度も同じようにチョコレートを食べさせてもらい、僕はその間ずっと甘えた声を出し続けた。

 僕がふにゃふにゃでどうしようもなくなった頃、虫歯になったら困るから歯磨きしようね、と姫抱っこで洗面台に連れていかれ、歯を磨いた後また姫抱っこでベッドまで連れて行ってくれた。

 一緒にベッドに入ったのに、背を向けてしまったみなとくんに寂しくなってしまう。せめて熱を感じたいとその広い背中にピタリとくっついた。


「あー・・・・・・もう。遥くんは俺を萌え殺す気なの?可愛いことばっかりしてるとやめてあげられなくなっちゃう・・・・・・」


 ブツブツと何かを呟いていたと思ったら、くるりとこちらを向いてくれた。嬉しい。

 なんて思っていたら、ここでもたくさん唇を食べられた。チョコレートの味はもうしないはずなのに、みなとくんの舌はすごく甘く感じて、もっともっと、ってたくさんねだってしまった。

 体の奥が熱くなるような深いキスの合間に戯れるような軽いキスもたくさんされ、その心地いい熱に僕はいつの間にか深い眠りに落ちていった。


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