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時期外れの編入生が来るようです
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おう!!!と大きな声で元気に返事をした一ノ瀬くんが意気揚々とこちらへ向かってくる。
⋯⋯あ、通り道のクラスメイトが足をひょっこり出してる。引っ掛けようとしてるのかな?危ないよって言おうとしたら、一ノ瀬くんはその足をギュムギュムと踏み付けて進んでくる。
⋯⋯お強い。皆の足の方が心配になってきた。
そんな事をぼんやりと考えていると、何故か僕の席の前でピタリと足を止めた一ノ瀬くんに顔をグイッと覗き込まれて、壁側に追いやられる。
・・・・・・え?なに?
僕がきょとんとしながらドアップになった一ノ瀬くんを見つめていると、教室に絶叫が響き渡った。
へ!?何事???ひと月でやっとこの絶叫に慣れてきたと思ってたのに、不意打ちだとやっぱり驚いてしまう。
ビクリと震えた肩に一ノ瀬くんが気付いて、至近距離のまま両肩をグイッと掴まれた。なになになに?!
「お前、名前は?俺の事は雪兎って呼べよな!!!」
この絶叫、阿鼻叫喚の中でもしっかり聞こえる一ノ瀬くんの声、やばくない???
「⋯⋯え?え・・・・・・っと、僕は水瀬遥、です。雪兎、くん?」
「はる、遥、か!!俺の事もちゃんと呼び捨てで呼べよ!俺達友達だろ!!!遥の事は俺が護るからな!!!!」
僕の声ちゃんと聞こえててよかった・・・・・・。っていうかお友達?僕ってもう一ノ瀬くん・・・・・・あ、いや、雪兎とお友達になってたの?!いつの間に?んっと、それに護るって、何から?えぇ?
混乱しつつもとりあえず返事をしなきゃと思って口を開いた。
「えっと、あの、うん、ゆき、と?ありがとう??でも僕、そんなに弱くないから大丈夫、だよ?」
混乱したまま口を開いたから言葉尻が全部曖昧になってしまった。でも雪兎の勢いに押されてしまって頭が纏まらない。僕の周りはゆっくり考えて話しても待ってくれる人ばかりだったから、今まで本当に甘やかしてもらってたんだなぁって、こんな所で実感してしまった。人見知りだからか、慣れていない人に対してあんまり主張出来ない⋯⋯この押せ押せテンションに流されてしまうぅ。
「大丈夫だ!!俺は強いからな!!!気を遣わなくていいぞ!!遥は俺と一緒に居させてやるから安心しろ!!」
・・・・・・えっと、うん、僕もこれくらい主張が出来るようになれたらいいんだろうか?すごいなぁ。今までだって僕弱くないよって皆にちゃんと自己申告してるけど、一度も信じてもらえてないのは、僕にこの押しの強さが無いからなんだろうか??
うーん……。まぁいっか。隆も颯汰も律も伊織先生も奏さんも、皆なぜか甘えてくれって言ってくれるし。突き詰めて考えると僕がとっても弱っちく見えるってことに悲しくなってしまうから、もう考えるのはやめよう、うん、そうしよう。
至近距離でなんだか意気込んでいる雪兎をぼんやりと見ながらも思考がずれる。えっと、なんだっけ?結局何の話をしてたんだっけ??
「えっと、よくわかんないけど、お友達になってくれるって事だよね?ありがとう。嬉しいよ」
とりあえず、よく逃げられちゃう僕とお友達だって言ってくれるんだから、ありがたいよね、ってことでお礼を言う。まだ緊張してるからか、表情筋は全く動いてくれないけど。
「・・・・・・おう!俺も遥と友達になれて嬉しいぞ!!!」
そう言って雪兎は、にっこりと笑った、と思う。瓶底眼鏡と毬藻髪で口元しか見えないから多分、だけど・・・・・・。
んー・・・・・・でもこの子って、眼鏡外したら美少年なのでは??この至近距離だと眼鏡の奥がぼんやりと見えるんだよね。整ってる気がするんだけど。
まぁでも隠したいのなら無理に暴くこと無いよね。僕も一応瞳の色隠してるわけだし。でも隠したがってるのにこんなに分かりやすかったら、すぐバレて雪兎が困っちゃうよね・・・・・・?ちょっと忠告位しておいた方がいいかな?
「えっと・・・・・・雪兎、耳貸して?」
「お?おう?!」
なぜかほんのり顔を赤くした雪兎が耳を貸してくれたので、周りに聞こえないようにそっと囁く。
「こんな至近距離だと、眼鏡の奥見えちゃうよ?隠したいなら気を付けた方がいいかも」
言い終わってそっと離れると、赤くなっていた顔をさらに赤くさせ、耳を押さえた。バレちゃったのが恥ずかしかったのかな?
「・・・・・・やっべぇ。吐息交じりえっろぉ・・・・・・」
「え?何?ゴメン聞こえなかった。えっと、バレちゃったの恥ずかしかったの?僕、誰にも言わないから安心して?」
さっきまで元気いっぱいで、周りの絶叫なんてものともせずに通っていた声が、僕が雪兎の耳を貸してもらってる間、もっと絶叫が大きくなっていたせいか全然聞こえなかった。でも多分誰にも言わないでって事が言いたかったんだよね?あんなに顔赤くして恥ずかしがってるんだもん。
「へぁ?!お、おう!ありがとな!!!・・・・・・やっべぇ、口に出てた」
「ん?うん。僕たちもうお友達なんでしょ?お友達の秘密を守るのは当たり前だからね」
ありがとうって言われた後も口が動いてた気がするけど、聞こえなかったから気のせいかな?それにしても皆いつまで絶叫してるんだろう?っていうかなんでそんなに叫んでるの??
「あーーーーーっもう!!!もう我慢できねぇ。一ノ瀬お前、遥にちょっかい出すなよ。こいつは駄目だっ」
いつの間にか伊織先生が雪兎の襟首を猫ちゃんを掴むみたいにして、僕から引き離してくれた。ずーっと至近距離だったからね。僕は席に座ったまま、雪兎と壁に挟まれてたから動けなくてちょっと困ってたし助かっちゃった。
伊織先生には、今度お礼に寮のコンビニでチロルなチョコをたくさん買って持っていこうと心に決めた。
⋯⋯あ、通り道のクラスメイトが足をひょっこり出してる。引っ掛けようとしてるのかな?危ないよって言おうとしたら、一ノ瀬くんはその足をギュムギュムと踏み付けて進んでくる。
⋯⋯お強い。皆の足の方が心配になってきた。
そんな事をぼんやりと考えていると、何故か僕の席の前でピタリと足を止めた一ノ瀬くんに顔をグイッと覗き込まれて、壁側に追いやられる。
・・・・・・え?なに?
僕がきょとんとしながらドアップになった一ノ瀬くんを見つめていると、教室に絶叫が響き渡った。
へ!?何事???ひと月でやっとこの絶叫に慣れてきたと思ってたのに、不意打ちだとやっぱり驚いてしまう。
ビクリと震えた肩に一ノ瀬くんが気付いて、至近距離のまま両肩をグイッと掴まれた。なになになに?!
「お前、名前は?俺の事は雪兎って呼べよな!!!」
この絶叫、阿鼻叫喚の中でもしっかり聞こえる一ノ瀬くんの声、やばくない???
「⋯⋯え?え・・・・・・っと、僕は水瀬遥、です。雪兎、くん?」
「はる、遥、か!!俺の事もちゃんと呼び捨てで呼べよ!俺達友達だろ!!!遥の事は俺が護るからな!!!!」
僕の声ちゃんと聞こえててよかった・・・・・・。っていうかお友達?僕ってもう一ノ瀬くん・・・・・・あ、いや、雪兎とお友達になってたの?!いつの間に?んっと、それに護るって、何から?えぇ?
混乱しつつもとりあえず返事をしなきゃと思って口を開いた。
「えっと、あの、うん、ゆき、と?ありがとう??でも僕、そんなに弱くないから大丈夫、だよ?」
混乱したまま口を開いたから言葉尻が全部曖昧になってしまった。でも雪兎の勢いに押されてしまって頭が纏まらない。僕の周りはゆっくり考えて話しても待ってくれる人ばかりだったから、今まで本当に甘やかしてもらってたんだなぁって、こんな所で実感してしまった。人見知りだからか、慣れていない人に対してあんまり主張出来ない⋯⋯この押せ押せテンションに流されてしまうぅ。
「大丈夫だ!!俺は強いからな!!!気を遣わなくていいぞ!!遥は俺と一緒に居させてやるから安心しろ!!」
・・・・・・えっと、うん、僕もこれくらい主張が出来るようになれたらいいんだろうか?すごいなぁ。今までだって僕弱くないよって皆にちゃんと自己申告してるけど、一度も信じてもらえてないのは、僕にこの押しの強さが無いからなんだろうか??
うーん……。まぁいっか。隆も颯汰も律も伊織先生も奏さんも、皆なぜか甘えてくれって言ってくれるし。突き詰めて考えると僕がとっても弱っちく見えるってことに悲しくなってしまうから、もう考えるのはやめよう、うん、そうしよう。
至近距離でなんだか意気込んでいる雪兎をぼんやりと見ながらも思考がずれる。えっと、なんだっけ?結局何の話をしてたんだっけ??
「えっと、よくわかんないけど、お友達になってくれるって事だよね?ありがとう。嬉しいよ」
とりあえず、よく逃げられちゃう僕とお友達だって言ってくれるんだから、ありがたいよね、ってことでお礼を言う。まだ緊張してるからか、表情筋は全く動いてくれないけど。
「・・・・・・おう!俺も遥と友達になれて嬉しいぞ!!!」
そう言って雪兎は、にっこりと笑った、と思う。瓶底眼鏡と毬藻髪で口元しか見えないから多分、だけど・・・・・・。
んー・・・・・・でもこの子って、眼鏡外したら美少年なのでは??この至近距離だと眼鏡の奥がぼんやりと見えるんだよね。整ってる気がするんだけど。
まぁでも隠したいのなら無理に暴くこと無いよね。僕も一応瞳の色隠してるわけだし。でも隠したがってるのにこんなに分かりやすかったら、すぐバレて雪兎が困っちゃうよね・・・・・・?ちょっと忠告位しておいた方がいいかな?
「えっと・・・・・・雪兎、耳貸して?」
「お?おう?!」
なぜかほんのり顔を赤くした雪兎が耳を貸してくれたので、周りに聞こえないようにそっと囁く。
「こんな至近距離だと、眼鏡の奥見えちゃうよ?隠したいなら気を付けた方がいいかも」
言い終わってそっと離れると、赤くなっていた顔をさらに赤くさせ、耳を押さえた。バレちゃったのが恥ずかしかったのかな?
「・・・・・・やっべぇ。吐息交じりえっろぉ・・・・・・」
「え?何?ゴメン聞こえなかった。えっと、バレちゃったの恥ずかしかったの?僕、誰にも言わないから安心して?」
さっきまで元気いっぱいで、周りの絶叫なんてものともせずに通っていた声が、僕が雪兎の耳を貸してもらってる間、もっと絶叫が大きくなっていたせいか全然聞こえなかった。でも多分誰にも言わないでって事が言いたかったんだよね?あんなに顔赤くして恥ずかしがってるんだもん。
「へぁ?!お、おう!ありがとな!!!・・・・・・やっべぇ、口に出てた」
「ん?うん。僕たちもうお友達なんでしょ?お友達の秘密を守るのは当たり前だからね」
ありがとうって言われた後も口が動いてた気がするけど、聞こえなかったから気のせいかな?それにしても皆いつまで絶叫してるんだろう?っていうかなんでそんなに叫んでるの??
「あーーーーーっもう!!!もう我慢できねぇ。一ノ瀬お前、遥にちょっかい出すなよ。こいつは駄目だっ」
いつの間にか伊織先生が雪兎の襟首を猫ちゃんを掴むみたいにして、僕から引き離してくれた。ずーっと至近距離だったからね。僕は席に座ったまま、雪兎と壁に挟まれてたから動けなくてちょっと困ってたし助かっちゃった。
伊織先生には、今度お礼に寮のコンビニでチロルなチョコをたくさん買って持っていこうと心に決めた。
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