黒猫ちゃんは愛される

抹茶もち

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同室は不良な美丈夫でした

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「んんんんん~⋯⋯おいひぃ~⋯⋯」

 レアチーズケーキを口に含むと、あまりの美味しさに思わず目を閉じて幸せを噛み締める。

「遥、あー」

 と聞こえてきたので、反射的に隣を向きかぱりと口を開けると甘い栗の香りが口内に広がり、またおいひぃい~⋯⋯と惚ける。

「ふはっ⋯⋯遥、すげぇ美味そうに食うよな」

 そう言って隆が嬉しそうにこちらを見ているので、遥もレアチーズケーキを一口掬う。

「隆、あーん」

 言いながら遥の口もあー⋯と開いているのを見て、隆は再度モンブランを掬い、遥の口に入れてから自らも差し出されたケーキの乗ったスプーンを口に入れた。

 ───ここに第三者が居たなら間違いなくバカップルかよとツッコミたくなる様な、砂糖を吐きそうな甘い空気が漂っているが2人はそれに気付いていない。
 隆は幸せそうに甘味を食べる遥が可愛くて仕方がなく、トロトロに甘やかしてやりたいと確かに思ってはいるが、遥はたいして何も考えていない。強いて言うなら2種類甘味を食べられるなんて贅沢だなぁ~くらいだ。


「あぁ~⋯もう無くなっちゃった。どっちのケーキも美味しかったね」

「あぁ、どっちも濃厚で美味かったな。珈琲にも合う味だった。また買いに行こう」

 ん、と上機嫌に頷いてから食べ終わったお皿やマグカップをキッチンに運びパパっと片す。チラリと時計を確認するといつの間にか16時になっており、いつの間に、と驚く。

 今日は朝から色々あったもんなぁ、と思い返しながらも、こんなに表情筋をたくさん使ったのも家族や緋彩の皆と居る時以外では初めてだ、と気付く。これから3年間楽しい事がたくさんあるといいなぁと思いながらソファに沈み込んでいると、お腹が膨れたのもあり一気に眠気が襲ってきた。

「ん?遥眠い?目がトロンとしてる。夜ご飯前に起こしてやるからちょっと寝てきたら?」

 横で携帯を構っていた隆がそう言ってくれたので、ありがとう、とウトウトしながら寝室に向かい、ずっと付けていた黒コンを外しベッドに潜り込み、そのまま深い眠りに落ちた。




「⋯⋯る⋯はる⋯⋯遥、起きれるか?」

 まだ寝惚けている頭に隆の低く甘い声が聴こえてくる。

「⋯⋯んぅ⋯りゅー⋯⋯?」

 重たいまぶたを持ち上げると、頭を撫でながらこちらを伺っていた隆が目を見開いた。

「⋯⋯遥、瞳の色⋯⋯。カラコン付けてたのか?」

「ん⋯⋯?めのいろ⋯?あぁ、ねるまえに外したんだったっけぇ?おにぃに付けとけって言われてつけてたの。ひみつねぇ~・・・・・・」

 まだ覚醒していない頭を一生懸命動かし、少し舌足らずになりつつもそう言い、まだ眠いなぁと目を擦りながら体を起こすと、遥を起こすために床にしゃがんでいた隆と目が合った。

「隆と目線が同じなの不思議な感じだねぇ~⋯⋯。起こしてくれてありがとぉ⋯」

 まだトロトロとした微睡みの中に居る遥は、トロンとした今にもまた眠ってしまいそうな瞳で隆に向かい合う。

「いや⋯⋯。まだ眠そうだな」

 そう言いながら少し熱に浮かされたように体を遥の方に寄せ、右手を髪の毛に差し込み後頭部に添え顔を覗き込む。

「⋯⋯ん、まだ眠いけどよる寝れなくなるから起きる⋯」

 遥は寝惚けていたが、隆に至近距離で見詰められている事にはちゃんと気付いていた。しかしこの数時間 一緒に過ごし甘やかしてくれた隆に気を許してしまっていたので、蒼と居る時と同じようにすっかり無防備だ。

 嫌がられていないか観察するように遥を見ていた隆は近い距離を拒否されない事に安堵し、そうか、と甘い笑みを浮かべ、大切な物に触れるように、遥のまぶたにそっと口付けた。

 さすがにびっくりした遥は、ぱっちりと瞳を見開き隆を凝視する。

 そんな遥を見た隆は、甘い笑みを浮かべたまま、遥の瞳、蜂蜜みたいで綺麗だな。甘そう。と言い、このキスは俺なりのスキンシップだ、となんでもない事のように言い切った。

 あまりにも隆が堂々としているので、今までまともに友達が居なかった遥は正解が分からず、そんな人も居るのか⋯。と普通に騙された。

「そっかぁ、そうなんだ、突然だったからびっくりしちゃった」



 チョロい。



「でも目、覚めただろ?」

 そう悪戯っぽく笑いながら体を離した隆に、一瞬ポカンとしてから確かに目覚めました、と遥も笑った。
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