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同室は不良な美丈夫でした
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side:水瀬遥
「⋯⋯っし!遥、腹減ってるか?昼飯食いに行こう。食堂案内する」
少しの間膝に顔を落としている隆を観察していると、パッと顔を上げて笑った。
隆って笑うと普段鋭い目が垂れて印象変わるなぁ。優しい顔になる。と、そんな事をぼんやり思いながら返事をしようと口を開きかけた時
ぐぅ~⋯⋯
遥のお腹が代わりに返事をしてしまった。
こんなタイミングで⋯と恥ずかしくなり真っ赤になった顔を両手で隠すと、隆が1歩こちらに寄りポンっと頭に手を乗せた。
「腹、減ってるみたいだな。良かった。行けそ?」
指の間を少し開けチラリと伺うと、隆は優しい顔で笑んでいた。
そろそろと手を下ろし、ん、と頷き隆を見上げると、ふっと笑って髪の毛をくしゃりと撫でられた。
2人で部屋を出て1階に降り、食堂へ向かう。
「桜華学園って本当に広いよね。僕方向音痴だから寮の中でさえ迷っちゃいそうだよ」
なかなか辿り着かない食堂に、ちゃんと道を覚えなきゃと思いつつ先程から既にどこを曲がったのか分かっていない遥はきょろきょろしている。そんな遥を隆は優しげな眼差しで見つめていた。
「遥は方向音痴なんだな。⋯⋯別に俺と一緒に行動すればいいんだから急いで覚える必要ないんじゃね。そのうち覚える。それに朝晩は俺が飯作るよ。食堂じゃなくて部屋で一緒に食おう」
「え?いいの?大変じゃない?」
「登下校は目的地一緒なんだし問題無い。どっか行きたい時は付き合うし。俺がしたくてするんだから気にすんな。それに俺、元々中等部の頃から騒がれんの嫌で自炊してたんだよ。1人分も2人分も変わんねぇし⋯⋯それに俺はお前と一緒にゆっくり飯食いたい」
少し照れたように言う隆に、遥はふわふわと笑う。
「えへへ⋯⋯ありがとう。何から何までお世話になっちゃってごめんね。でも中等部から自炊してたなんて凄いね。隆のご飯楽しみだなあ。僕もちょっとは料理出来るから、僕にも手伝わせて。一緒に作ろう」
「別に凄かねぇけど⋯⋯そうだな、とりあえず今日の夜は一緒に作るか。帰り、スーパー寄って帰ろう」
「うんっ!楽しみだなぁ」
そんな事を話しながら歩いていると、両開きの大きな扉が開け放たれているのが見えた。
「あそこが食堂⋯っつーかどっちかって言うとカフェだな。席に着いてからタブレットで注文する感じ。⋯⋯あー、時間的にも寮の食堂はまだましかな⋯。遥、食堂ん中入る時ちょっとうるさいかも。あんまりうるさかったら耳塞いどけよ」
そう言ってスタスタと入っていく隆に、うるさい?耳塞ぐ?と首を傾げながらもついて入ると、中で食事していた生徒達が一斉にこちらを向いてポカンと呆けた、後。
「「「きゃああああああああ!!!」」」
「嘘っ!大神様が寮の食堂にいらっしゃった~!?」
「格好いい~!素敵ぃいいい!!!」
「大神様ぁ~抱いてくださいぃぃーーー!」
「隣の美少年は?!あんな子居た?!」
「外部生?!めちゃくちゃ美人⋯⋯!」
「うぉ⋯⋯抱きてぇ⋯⋯」
狂喜乱舞といった様で生徒達が叫び出した。
遥はビクッと肩を震わせ両耳を抑えた。大神はうるせぇ⋯と顔をしかめながらも止まってしまった遥の背中に手をそっと添えて席まで促した。
呆然としつつ促されるまま席に着いた遥に、隆は苦笑しつつ大丈夫か?と問いかけ向かいに座る。
「あ⋯⋯うん、びっくりしちゃった。今の何事?」
叫び声は収まったが、未だヒソヒソと声が聞こえてくるのを感じ、顔が強ばる。中学の時も遠巻きにされていたが、こんな風に全方位から熱の篭った様な目で見られるような事は無かった、と思う。
「この学園はちょっと特殊なんだよ。ここでは同性が恋愛対象になるし、顔がよけりゃアイドルみたいにギャーギャー騒がれる。高校じゃあ親衛隊ってのも出来るらしいしな。遥も美人なんだから騒がれるだろ。まぁそのうち慣れる」
苦虫を噛み潰したような顔で隆が言うので、ちょっと笑ってしまった。
「ふふっ⋯⋯何言ってるの、僕はアイドルの人達みたいに顔良くないよ。じゃあ隆が格好いいからこんなにキャーキャー言われてたんだね。凄いなぁ。隆はすぐにその、親衛隊?ってのができるんだろうね」
「あー⋯⋯いや、今のは俺に対してだけじゃねぇと思うけど。俺は中等部ん頃から遠巻きにされてたし。間違いなくお前、すぐ親衛隊が出来ると思うぞ。っつーかお前、無自覚か」
「んんん??僕に?そんな事ないと思うけど。無自覚って何が?」
「⋯⋯いや、なんでもない。それより注文しようぜ。1人1台タブレット使って注文するんだけど、最初にココにカードかざして。カードと紐付けしないといけないから。和洋中何でもあるけど何食いたい?」
遥が首を傾げていると、隆がタブレットを差し出して来たので、意識がそちらに逸れた。
遥は食べる事が大好きなのだ。
タブレットにカードをかざしながらハイテクだねぇ~!っと遥のテンションは上がり途端に瞳がキラキラしてくる。
「隆のオススメは?何が好き?」
「俺?俺は定食系食うことが多いかな。人気なものだったらパスタとかオムライスとか。」
「んんんー⋯⋯そうなんだ、余計に迷ってきちゃった」
「どれで迷ってんの?」
「えっとねー⋯⋯。この日替わり定食かオムライス」
「じゃあ俺が日替わり定食頼むから、遥はオムライス頼みなよ」
なんでもない様に言われ、遥は目をまん丸にしてタブレットから隆に目線を戻す。
「えっ?いいの?隆も食べたいものあるんじゃない?」
「んや、俺も日替わり定食食べたかったし、気になるんだろ?一緒に食べればいいじゃん」
そう言って隆は遥からタブレットをサッと取り、パパっと注文をしてくれた。
「あっ⋯⋯!待ってぇ、今日は隆に奢りたかったのにっ!」
そう焦っていると、隆は可笑しそうにしながら、俺も遥もゴールドカードだから学園持ちだろ、と笑われ頭をくしゃりと撫でられた。
「あっ⋯⋯そっかぁ⋯⋯そうだった」
そういえばさっき部屋を出る時、隆がゴールドカードをポケットに突っ込んだのを見たんだった。じゃあ何か奢る系のお礼は全く意味が無いやつ⋯何かお礼になること⋯とウンウン悩んでいる遥が気にしないのをいい事に、隆は遥の頭を撫で続けるのであった。
「⋯⋯っし!遥、腹減ってるか?昼飯食いに行こう。食堂案内する」
少しの間膝に顔を落としている隆を観察していると、パッと顔を上げて笑った。
隆って笑うと普段鋭い目が垂れて印象変わるなぁ。優しい顔になる。と、そんな事をぼんやり思いながら返事をしようと口を開きかけた時
ぐぅ~⋯⋯
遥のお腹が代わりに返事をしてしまった。
こんなタイミングで⋯と恥ずかしくなり真っ赤になった顔を両手で隠すと、隆が1歩こちらに寄りポンっと頭に手を乗せた。
「腹、減ってるみたいだな。良かった。行けそ?」
指の間を少し開けチラリと伺うと、隆は優しい顔で笑んでいた。
そろそろと手を下ろし、ん、と頷き隆を見上げると、ふっと笑って髪の毛をくしゃりと撫でられた。
2人で部屋を出て1階に降り、食堂へ向かう。
「桜華学園って本当に広いよね。僕方向音痴だから寮の中でさえ迷っちゃいそうだよ」
なかなか辿り着かない食堂に、ちゃんと道を覚えなきゃと思いつつ先程から既にどこを曲がったのか分かっていない遥はきょろきょろしている。そんな遥を隆は優しげな眼差しで見つめていた。
「遥は方向音痴なんだな。⋯⋯別に俺と一緒に行動すればいいんだから急いで覚える必要ないんじゃね。そのうち覚える。それに朝晩は俺が飯作るよ。食堂じゃなくて部屋で一緒に食おう」
「え?いいの?大変じゃない?」
「登下校は目的地一緒なんだし問題無い。どっか行きたい時は付き合うし。俺がしたくてするんだから気にすんな。それに俺、元々中等部の頃から騒がれんの嫌で自炊してたんだよ。1人分も2人分も変わんねぇし⋯⋯それに俺はお前と一緒にゆっくり飯食いたい」
少し照れたように言う隆に、遥はふわふわと笑う。
「えへへ⋯⋯ありがとう。何から何までお世話になっちゃってごめんね。でも中等部から自炊してたなんて凄いね。隆のご飯楽しみだなあ。僕もちょっとは料理出来るから、僕にも手伝わせて。一緒に作ろう」
「別に凄かねぇけど⋯⋯そうだな、とりあえず今日の夜は一緒に作るか。帰り、スーパー寄って帰ろう」
「うんっ!楽しみだなぁ」
そんな事を話しながら歩いていると、両開きの大きな扉が開け放たれているのが見えた。
「あそこが食堂⋯っつーかどっちかって言うとカフェだな。席に着いてからタブレットで注文する感じ。⋯⋯あー、時間的にも寮の食堂はまだましかな⋯。遥、食堂ん中入る時ちょっとうるさいかも。あんまりうるさかったら耳塞いどけよ」
そう言ってスタスタと入っていく隆に、うるさい?耳塞ぐ?と首を傾げながらもついて入ると、中で食事していた生徒達が一斉にこちらを向いてポカンと呆けた、後。
「「「きゃああああああああ!!!」」」
「嘘っ!大神様が寮の食堂にいらっしゃった~!?」
「格好いい~!素敵ぃいいい!!!」
「大神様ぁ~抱いてくださいぃぃーーー!」
「隣の美少年は?!あんな子居た?!」
「外部生?!めちゃくちゃ美人⋯⋯!」
「うぉ⋯⋯抱きてぇ⋯⋯」
狂喜乱舞といった様で生徒達が叫び出した。
遥はビクッと肩を震わせ両耳を抑えた。大神はうるせぇ⋯と顔をしかめながらも止まってしまった遥の背中に手をそっと添えて席まで促した。
呆然としつつ促されるまま席に着いた遥に、隆は苦笑しつつ大丈夫か?と問いかけ向かいに座る。
「あ⋯⋯うん、びっくりしちゃった。今の何事?」
叫び声は収まったが、未だヒソヒソと声が聞こえてくるのを感じ、顔が強ばる。中学の時も遠巻きにされていたが、こんな風に全方位から熱の篭った様な目で見られるような事は無かった、と思う。
「この学園はちょっと特殊なんだよ。ここでは同性が恋愛対象になるし、顔がよけりゃアイドルみたいにギャーギャー騒がれる。高校じゃあ親衛隊ってのも出来るらしいしな。遥も美人なんだから騒がれるだろ。まぁそのうち慣れる」
苦虫を噛み潰したような顔で隆が言うので、ちょっと笑ってしまった。
「ふふっ⋯⋯何言ってるの、僕はアイドルの人達みたいに顔良くないよ。じゃあ隆が格好いいからこんなにキャーキャー言われてたんだね。凄いなぁ。隆はすぐにその、親衛隊?ってのができるんだろうね」
「あー⋯⋯いや、今のは俺に対してだけじゃねぇと思うけど。俺は中等部ん頃から遠巻きにされてたし。間違いなくお前、すぐ親衛隊が出来ると思うぞ。っつーかお前、無自覚か」
「んんん??僕に?そんな事ないと思うけど。無自覚って何が?」
「⋯⋯いや、なんでもない。それより注文しようぜ。1人1台タブレット使って注文するんだけど、最初にココにカードかざして。カードと紐付けしないといけないから。和洋中何でもあるけど何食いたい?」
遥が首を傾げていると、隆がタブレットを差し出して来たので、意識がそちらに逸れた。
遥は食べる事が大好きなのだ。
タブレットにカードをかざしながらハイテクだねぇ~!っと遥のテンションは上がり途端に瞳がキラキラしてくる。
「隆のオススメは?何が好き?」
「俺?俺は定食系食うことが多いかな。人気なものだったらパスタとかオムライスとか。」
「んんんー⋯⋯そうなんだ、余計に迷ってきちゃった」
「どれで迷ってんの?」
「えっとねー⋯⋯。この日替わり定食かオムライス」
「じゃあ俺が日替わり定食頼むから、遥はオムライス頼みなよ」
なんでもない様に言われ、遥は目をまん丸にしてタブレットから隆に目線を戻す。
「えっ?いいの?隆も食べたいものあるんじゃない?」
「んや、俺も日替わり定食食べたかったし、気になるんだろ?一緒に食べればいいじゃん」
そう言って隆は遥からタブレットをサッと取り、パパっと注文をしてくれた。
「あっ⋯⋯!待ってぇ、今日は隆に奢りたかったのにっ!」
そう焦っていると、隆は可笑しそうにしながら、俺も遥もゴールドカードだから学園持ちだろ、と笑われ頭をくしゃりと撫でられた。
「あっ⋯⋯そっかぁ⋯⋯そうだった」
そういえばさっき部屋を出る時、隆がゴールドカードをポケットに突っ込んだのを見たんだった。じゃあ何か奢る系のお礼は全く意味が無いやつ⋯何かお礼になること⋯とウンウン悩んでいる遥が気にしないのをいい事に、隆は遥の頭を撫で続けるのであった。
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