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第2章「甘苦い二人暮らし」

恋愛不足。③

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公ちゃんのその言葉に、あたしは少しショックを受ける。
え、迷惑なの!?
だけど公ちゃんは、何だか煮え切らない様子で。

「あ、いや、そういう“迷惑”じゃなくてな。何つーの?…」
「…嬉しくはないんだ?」
「…」

そしてあたしのその問いかけに、黙って目を逸らす公ちゃん。
さすがにちょっと傷つくな。
そんな公ちゃんに、

「…わかった」
「…」
「迷惑なら仕方ないね。じゃあ今日は一緒に帰らない。さよーなら」
「えっ、」

そう言って、あたしは独り教室に戻ろうとした。
だけど、戻ろうとした時、公ちゃんが言った。

「真希のことは、」
「…?」
「真希のことは大事だから、嬉しいとか嬉しくないとかじゃないんだって」
「…じゃあ、何?」
「…」

答えを聞くのがちょっと怖い気もする中で、呟くように公ちゃんにそう問いかける。
大事って、でもそれって幼馴染としてなのはわかってる。
あたしの問いかけに公ちゃんは少し黙るから、やっぱり答えを聞くのが怖くて、はぐらかそうとした。
はぐらかそうとしたら、公ちゃんが言った。

「…っつか、あんま困らせないでくんない」
「え、」
「お前はほんと、マジで何もわかってないから」
「?」

え、ちょっと、それ質問の答えになってないよ。
だけどその瞬間、ちょうどタイミング悪く休憩終わりのホイッスルの音が体育館の中に響いて、公ちゃんは逃げるように行ってしまった。

「あっ、俺行くわ」
「え、ちょっとまだっ、」
「先帰んなよ、あと1時間で終わるから!」
「…」

一応、待っていてはほしいんだ。
あたしは仕方なくその言葉に頷くと、やがて独り体育館を後にした。

…わかってないって、何が?
公ちゃんはあたしが何をわかってないって言ってるの?

『…っつか、あんま困らせないでくんない』

やっぱりあたしがいると迷惑なんじゃん。
きっと公ちゃんは、あたしの気持ちを知っててはっきり言えないんだ。
そんな公ちゃんに、キスするなんて…やっぱり無理に決まってる。
…公ちゃんが助けてくれないなら、あたしは結局どこに引っ越したらいいの…。

******

それから約一か月後。
あたしは深くため息を吐くと、目の前の見慣れない大きな家の前に立った。
…最悪だ。何でこんなことになってしまったんだろう。
あたしは事前に水野くんから貰っていた家の鍵をカバンから取り出すと、やがてそのドアの鍵を開けた。
玄関の扉を開けるとそこには当たり前のように水野くんが立っていて…水野くんはあたしと目が合うなり言う。

「…ども、」
「ど、どーも…」

ここに来る直前に、水野くんには直接連絡を入れていた。
だから玄関で待っていてくれた…のかな?

実はあれから、「もう二度と水野くんに近寄らない」と決心したはいいものの、そううまくはいかなくてあたしは親に半ば強引にここに引っ越しさせられてしまったのだ。
水野くんは未だに納得がいっていないあたしを家に入らせると、落ち着いた口調で言う。

「これから、よろしく」

それを聞くと、あたしもとりあえず「よろしく」と頭を下げた。
…どうやら今日から、水野くんとの二人暮らしがとうとうスタートしてしまうらしい。
水野くんはあたしの手荷物を持つと、「部屋、案内するね」と廊下の奥を進んだ。

「…うん」
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