20 / 42
第2章「甘苦い二人暮らし」
恋愛不足。③
しおりを挟む
公ちゃんのその言葉に、あたしは少しショックを受ける。
え、迷惑なの!?
だけど公ちゃんは、何だか煮え切らない様子で。
「あ、いや、そういう“迷惑”じゃなくてな。何つーの?…」
「…嬉しくはないんだ?」
「…」
そしてあたしのその問いかけに、黙って目を逸らす公ちゃん。
さすがにちょっと傷つくな。
そんな公ちゃんに、
「…わかった」
「…」
「迷惑なら仕方ないね。じゃあ今日は一緒に帰らない。さよーなら」
「えっ、」
そう言って、あたしは独り教室に戻ろうとした。
だけど、戻ろうとした時、公ちゃんが言った。
「真希のことは、」
「…?」
「真希のことは大事だから、嬉しいとか嬉しくないとかじゃないんだって」
「…じゃあ、何?」
「…」
答えを聞くのがちょっと怖い気もする中で、呟くように公ちゃんにそう問いかける。
大事って、でもそれって幼馴染としてなのはわかってる。
あたしの問いかけに公ちゃんは少し黙るから、やっぱり答えを聞くのが怖くて、はぐらかそうとした。
はぐらかそうとしたら、公ちゃんが言った。
「…っつか、あんま困らせないでくんない」
「え、」
「お前はほんと、マジで何もわかってないから」
「?」
え、ちょっと、それ質問の答えになってないよ。
だけどその瞬間、ちょうどタイミング悪く休憩終わりのホイッスルの音が体育館の中に響いて、公ちゃんは逃げるように行ってしまった。
「あっ、俺行くわ」
「え、ちょっとまだっ、」
「先帰んなよ、あと1時間で終わるから!」
「…」
一応、待っていてはほしいんだ。
あたしは仕方なくその言葉に頷くと、やがて独り体育館を後にした。
…わかってないって、何が?
公ちゃんはあたしが何をわかってないって言ってるの?
『…っつか、あんま困らせないでくんない』
やっぱりあたしがいると迷惑なんじゃん。
きっと公ちゃんは、あたしの気持ちを知っててはっきり言えないんだ。
そんな公ちゃんに、キスするなんて…やっぱり無理に決まってる。
…公ちゃんが助けてくれないなら、あたしは結局どこに引っ越したらいいの…。
******
それから約一か月後。
あたしは深くため息を吐くと、目の前の見慣れない大きな家の前に立った。
…最悪だ。何でこんなことになってしまったんだろう。
あたしは事前に水野くんから貰っていた家の鍵をカバンから取り出すと、やがてそのドアの鍵を開けた。
玄関の扉を開けるとそこには当たり前のように水野くんが立っていて…水野くんはあたしと目が合うなり言う。
「…ども、」
「ど、どーも…」
ここに来る直前に、水野くんには直接連絡を入れていた。
だから玄関で待っていてくれた…のかな?
実はあれから、「もう二度と水野くんに近寄らない」と決心したはいいものの、そううまくはいかなくてあたしは親に半ば強引にここに引っ越しさせられてしまったのだ。
水野くんは未だに納得がいっていないあたしを家に入らせると、落ち着いた口調で言う。
「これから、よろしく」
それを聞くと、あたしもとりあえず「よろしく」と頭を下げた。
…どうやら今日から、水野くんとの二人暮らしがとうとうスタートしてしまうらしい。
水野くんはあたしの手荷物を持つと、「部屋、案内するね」と廊下の奥を進んだ。
「…うん」
え、迷惑なの!?
だけど公ちゃんは、何だか煮え切らない様子で。
「あ、いや、そういう“迷惑”じゃなくてな。何つーの?…」
「…嬉しくはないんだ?」
「…」
そしてあたしのその問いかけに、黙って目を逸らす公ちゃん。
さすがにちょっと傷つくな。
そんな公ちゃんに、
「…わかった」
「…」
「迷惑なら仕方ないね。じゃあ今日は一緒に帰らない。さよーなら」
「えっ、」
そう言って、あたしは独り教室に戻ろうとした。
だけど、戻ろうとした時、公ちゃんが言った。
「真希のことは、」
「…?」
「真希のことは大事だから、嬉しいとか嬉しくないとかじゃないんだって」
「…じゃあ、何?」
「…」
答えを聞くのがちょっと怖い気もする中で、呟くように公ちゃんにそう問いかける。
大事って、でもそれって幼馴染としてなのはわかってる。
あたしの問いかけに公ちゃんは少し黙るから、やっぱり答えを聞くのが怖くて、はぐらかそうとした。
はぐらかそうとしたら、公ちゃんが言った。
「…っつか、あんま困らせないでくんない」
「え、」
「お前はほんと、マジで何もわかってないから」
「?」
え、ちょっと、それ質問の答えになってないよ。
だけどその瞬間、ちょうどタイミング悪く休憩終わりのホイッスルの音が体育館の中に響いて、公ちゃんは逃げるように行ってしまった。
「あっ、俺行くわ」
「え、ちょっとまだっ、」
「先帰んなよ、あと1時間で終わるから!」
「…」
一応、待っていてはほしいんだ。
あたしは仕方なくその言葉に頷くと、やがて独り体育館を後にした。
…わかってないって、何が?
公ちゃんはあたしが何をわかってないって言ってるの?
『…っつか、あんま困らせないでくんない』
やっぱりあたしがいると迷惑なんじゃん。
きっと公ちゃんは、あたしの気持ちを知っててはっきり言えないんだ。
そんな公ちゃんに、キスするなんて…やっぱり無理に決まってる。
…公ちゃんが助けてくれないなら、あたしは結局どこに引っ越したらいいの…。
******
それから約一か月後。
あたしは深くため息を吐くと、目の前の見慣れない大きな家の前に立った。
…最悪だ。何でこんなことになってしまったんだろう。
あたしは事前に水野くんから貰っていた家の鍵をカバンから取り出すと、やがてそのドアの鍵を開けた。
玄関の扉を開けるとそこには当たり前のように水野くんが立っていて…水野くんはあたしと目が合うなり言う。
「…ども、」
「ど、どーも…」
ここに来る直前に、水野くんには直接連絡を入れていた。
だから玄関で待っていてくれた…のかな?
実はあれから、「もう二度と水野くんに近寄らない」と決心したはいいものの、そううまくはいかなくてあたしは親に半ば強引にここに引っ越しさせられてしまったのだ。
水野くんは未だに納得がいっていないあたしを家に入らせると、落ち着いた口調で言う。
「これから、よろしく」
それを聞くと、あたしもとりあえず「よろしく」と頭を下げた。
…どうやら今日から、水野くんとの二人暮らしがとうとうスタートしてしまうらしい。
水野くんはあたしの手荷物を持つと、「部屋、案内するね」と廊下の奥を進んだ。
「…うん」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる