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1:あたしはブサイクが嫌い。
しおりを挟む「私、イジメに遭ってるんです」
あたしの向かいのソファーに座っている、高校二年生の女子生徒がそう言った。
彼女の名は、“佐藤さん”。
学年が違うから性格はよくわからないけれど、その見た目はとにかく暗い。
長くて全く結んでいない黒髪に、ノーメイクの顔、おまけにメガネ。
……マジか。
「具体的に、どんなイジメに遭ってるの?」
そしてそんな彼女にあたし、生徒会長の菅谷美希がそう聞けば、彼女はうつ向いて話し出した。
「え、えっと…
例えば、メガネを壊されたりだとか、お昼に教室でお弁当を食べていたら、お弁当ごとゴミ箱に捨てられたりだとか…」
「……」
「…と、とにかく、困ってるんです」
佐藤さんは半ば挙動不審にそう言うと、かけているメガネを整える。
……へぇ、
困ってる、ねぇ。
あたしは普段、誰からも慕われ好かれている人気者の生徒会長を務めていて、
昼休みや放課後になれば、こうやって生徒達から何かしら相談を受けることが多い。
…ま、その大半は「イジメ」とかの所謂嫌がらせなんだけど。
あたしが佐藤さんの話に相槌を打つと、傍で聞いていたあたしの幼なじみ、大野春斗(通称、ハル)が顔を歪ませて言った。
「何それ、最悪。ひっどいなぁ…」
ハルとは、幼稚園の頃からの腐れ縁。
唯一本当のあたしのことを知っていて、信頼できる副生徒会長でもある。
ただ、性格とか雰囲気とか、普段の行動が可愛すぎてウザイけど。
あたしはそうやって勝手に口を挟むハルを軽く睨みつけると、気を取り直して、佐藤さんに言った。
「…えっと、佐藤さん」
「は、はい」
「はっきり言わせてもらうけど、あたしは、イジメっていうのはたいていイジメられる側が悪いと思ってる」
「!!…え」
あたしがそう言うと、佐藤さんは案の定「はぁ!?」って顔をした。
「私は絶対に悪くない」と。
まぁ、イジメられてる側からすれば、当然そう思うだろうね。
そして、佐藤さんは…
「…あ、あの…えっと…わたっ私のどこが悪いんでしょうか」
またしても噛み噛みで挙動不審になりながらそう言うと、あたしから顔を背けて下を向く。
その言葉にあたしは、優しく微笑んで佐藤さんに言った。
「…はっきり言わせてもらうね」
「は、はい…」
「全部」
「…えっ!?」
「だから…
全部が悪い。まず見た目から最悪。
出直して来い、ブス!」
…………
…………
「はぁー、マジあり得ないんだけど、あのブス女」
佐藤さんがこの生徒会室を出て行ったあと、あたしはソファーの背もたれに寄り掛かりながらそう言った。
今は、昼休み。
廊下からは、何がそんなに楽しいのか、生徒達の騒ぎ声が聞こえている。
するとそう言ったあたしに、ハルがあたしの隣に座って来て、言った。
「いや、だからって今のは無いんじゃないかなぁ。
あの佐藤さんってコ、さっき泣きながらここ出てったじゃん」
今頃独りで泣いてるんじゃ…。
ハルはそう言うと、両手を自身の口元にあてて、心配そうな顔をする。
でも、そうは言うけれど、それでもあたしは人気生徒会長。
あたしのことが嫌いな人なんて、1人もいない。
あたしは今までにイジメ相談を受けると、いつもさっきみたくだいたいはそう言ってあしらってきたのだ。
だけど…
「大丈夫。今は泣いてるだろうけど、数週間経ったら“この前はありがとうございました!”って満面の笑顔でここに来るから」
「!」
そう。皆は必ず、しばらくするとそう言ってあたしの元にやって来る。
人間、物事をハッキリ言ってあげるのが大事。
どう見たってブスなのはブスだもの。
でも、努力をすれば絶対可愛くなれるから。
先ずはあたしが、全てのことに気付かせてあげるんだ。
イジメ対策は、その後。
「…本当に、来るのかな」
「…、」
だけどそれでもハルは心配らしく、そう言って入り口のドアを見遣る。
…そんな心配なら見に行けばよくない?
だからあたしは、ムカついて言った。
「あのねぇ、見た目が原因でイジメに遭うなんて、よくあることでしょ」
「!」
「さっきの佐藤さんは、確実にまず見た目から損してる。
メガネが壊された?だったらコンタクトにすりゃあいいじゃない。
お弁当がゴミ箱に捨てられた?だったら捨てられたモンそいつの口に突っ込んであげれば!?」
あたしはそう言うと、思わず目の前のテーブルをバシッと叩く。
その音と行動に、ハルはビックリして固まるけれど…
「対策や仕返しなんていくらでも出来る!でも何で佐藤さんはわざわざ同じことを繰り返す?
本当に困ってるならそういう努力くらいしろっての!」
あたしが半ば興奮気味にそう言うと、ハルは引きつった表情で「そうですね」と同意した。
確かに佐藤さんは、もしかしたら自分でもよくわかってるのかもしれない。
ただきっと、その一歩を踏み出す勇気がないだけだから。
そんな簡単じゃないことくらい、あたしにだってわかる。
だからまたここに来てくれるのが、あたしにとっての新しい“楽しみ”になるんだ。
…………
「あ~ダル、次の授業サボろうかな」
「いやいやダメでしょ、生徒会長」
その後は5限目の授業開始の予鈴が鳴って、あたしとハルは教室に戻った。
あたしとハルは同じクラス。3年の騒がしくて楽しいクラスだ。
「おー生徒会長お疲れ、」
「お疲れ、由乃」
そしてあたしが教室に入るなり、友達の由乃がそうやって話しかけてきた。
由乃は高校に入学してからの仲の良い友達。
容姿も可愛くて、優しいコ。
“ブスとはつるまない”
それが、あたしのルールだから。
「ってかさ、美希って完全に見た目は生徒会長らしくないよね」
「ええー?」
すると由乃が、あたしの顔を見て冗談交じりにそう言った。
だけど別に、その言葉にムカついたりはしない。
実際によく言われることだから。
あたしは生徒会長のクセに髪は金髪に近い茶髪に染めていて、ミディアムな長さの髪にウエーブをかけている。
確実に、校則的にはアウト。
いやむしろ、あたしは校則違反の常習者。
だけど、いいんです。
だってあたしは、皆からの人気者だから。
そしてあたしは自分の席に行くと、次の授業である数学の教科書を取り出した。
数学も得意だし、別に苦じゃない。
っていうか、苦手科目がそもそも無いし。
するとその時、あたしの隣の席に座っているハルが、前の席の持田渉(ワタル)に言った。
「ねー持田くん、数学の教科書貸してよ」
そう言って、そいつの肩を後ろからぽんぽん叩く。
持田=この学校で一番の“ブサ男”。
髪ボサボサだし、「ちゃんと洗ってんの?」って感じで。
それに、よく見ると肌汚いし。
身長は高めだけどちょっとだけぽっちゃりめで…何かもう、視界にも入れたくない感じのメガネ君。
ちなみにそんな彼には、恋人どころか友達すら一人もいない。
…ハル、よくそいつの肩なんかに触れるよね。
ってか、教科書くらいあたしが見せてあげるのに。
あたしがそう思っていたら、ブサ男がくるりと後ろを向いて、ハルに教科書を渡した。
「わーい、ありがとー!」
「…いえ」
そんなブサ男にハルが嬉しそうにそう言うと、ブサ男はまた前を向いて同じ数学の教科書を取り出す。
…何で同じ教科書二冊も持ってんだよ。
悪いけどあたしは、持田渉が嫌いだ。
イケメンが大好きなあたしにとって、持田の存在は本当にウザイ。
しかもこのクラスは皆が明るい雰囲気だけれど、持田1人がそれを少し崩してるとさえあたしは思う。
そして、ふと考える。
さっきの佐藤さんは、イジメには遭っているけれど、そうやって構ってもらえるだけまだ幸せかな?
だって持田に至っては、イジメどころか誰も全く相手にすらしないのだ。
(ただし、ハルは例外)
…あ、でももし今後持田が生徒会室にやって来て、「誰からも相手にされないんです」とか相談してきたらどうしよう。
悪いけど、無理!
アンタなんか外に居る虫と遊んでれば!
あたしはそう思うと、斜め前の席にいる持田に、表情を歪めながら目を遣った。
「…っ、」
…“あり得ない”と思っていた。この時までは。
だけどこの先、
あたしの運命が少しずつ変わろうとしていることを、あたしはまだ、知りもしなかった…。
そして、そんなあたしの姿を…
「…、」
隣からハルが、切ない目で見つめていたことも、あたしは、知るよしもない。
…………
放課後。
生徒会長としての仕事が終わって外に出ると、外はもう真っ暗だった。
「わー暗いねぇ」
まぁこんなのは別にいつものことだけど、ハルはいつもと同じセリフを口にして、あたしと一緒に家に帰る。
向かう先も、同じ場所。
でもだからといって、別に一緒に住んでるってわけでもなくて。
あたしはいつも、夕飯だけはハルの家で食べている。
ハルにはちゃんと家族がそばにいるけど、あたしの両親はいつも仕事で家にいないから。
昔それを知ったハルがあたしに、「じゃあ家来なよ」って言ってくれてから、それはずっと変わっていない。
ただ…
「……」
「今日の晩ごはん、何かなぁー?ハンバーグだったらいいなぁ、」
最近は…凄く、
凄く凄く凄く、あたしはこの家に来たくない。
だって…。
「ただいま~!ハル参上ー!」
「…ただいまぁ」
そしてやがてようやくハルの家に着くと、廊下の奥からある一人の男が顔を出した。
「おかえり、二人とも」
……春夜(シュンヤ)くん、
彼の名は、大野春夜。24歳。
ハルと血の繋がった兄弟で、あたしとも昔から仲が良い。
実は、あたしは春夜くんのことが、好きなのだ。
もうだいぶ昔から、一方的に片思いをしている。
だけど春夜くんは…
「こーら春斗、帰ってきたら手くらい洗え、」
「ぐえっ!?」
もうすぐ、別の女の人と結婚してしまう。
ハルがリビングに入ろうとすると、そんなハルの首根っこを春夜くんが掴んだ。
春夜くんは、あたしのこの気持ちを知らない。
あたしが何も言わないし、隠しているから。
あたしは洗面所でハルと手を洗いながら、ハルにこっそり言った。
「…あたし、夕飯をここに食べに来るのは、今日までにする」
「えっ!?」
「辛いから」
ハルは、あたしの気持ちを知ってる。
むしろ、ハルしか知らない。
春夜くんの幸せそうな笑顔を近くで見ているのは、もう耐えられないんだ。
ご飯を食べている間も、あたしの向かいに座っている春夜くんの手には、キラリと光るものが嫌でも視界に入って…。
実際に春夜くんの彼女に会ったことはないけれど、どうしても心の奥で恨んでしまう。
良いコでいたいのに、なれなくて。
あたしの中のどす黒い思いは、春夜くんの笑顔を見る度に、増えていく。
「ごちそうさまっ」
「あれ、美希もういいの?」
「うん。今日はすぐ帰らなきゃだし」
…いや、別に、そんなことないけど。
あたしがそうやって春夜くんと会話をしてその場から立ち上がったら、隣に座っていたハルが、慌てて箸を置いてあたしに言った。
「あ、送ってく!」
「別にいいよ~アンタまだ食べてる最中でしょうが」
「じゃあ玄関までっ」
そう言うと、あたしが「いい」って断っているのに、ハルは本当に玄関までついてきてくれて…
「じゃあ、また明日ね」
あたしがそう言って手を振ったら、突如ハルがそれを遮るように言った。
「あ…あのさ、美希ちゃん!」
「?」
その声にあたしがその手を止めてハルを見れば、何やらキョドっている様子のハルが目の前にいて…。
何か、いつもとらしくない。
そう思っていたら、ハルが意を決すように言葉を続けた。
「きょ、今日が最後なら、良かったら明日からふたっ…!」
しかし…
「!」
次の瞬間、あたしの携帯の着信音がそれを邪魔するかのように鳴り響いて、あたしは固まるハルにお構いなくそれに出た。
「あ、ごめんハル電話」
「!!」
「もしもしー?」
「……」
…電話の相手は、由乃。
別に急用とかじゃなかったから、あたしは一言二言話をすると、電話を切って携帯をポケットの中に戻す。
「…で、ハル何だっけ?」
「……いや、もういいですすみません」
「え、そう?」
そして結局その後はハルと別れて、あたしはその場を後にした。
「はぁ…」
外に出ると、薄暗い道が続いていた。
家はすぐそこと言えど、歩いて5分。
だけどずっと暗い道が続くわけじゃないし、途中でゲーセンやレストラン、コンビニ、ブティック、カラオケ等が並んだ大通りも通る。
前から自転車が走ってくる。
後ろから急ぎ足のおっさんが、あたしを通り越していく。
何がそんなに可笑しいのか、数人で一つの携帯を見ながら笑っている他校の女子生徒。
手を繋いでイチャイチャする高校生カップル。
いつも通り、つまんない。
ハルがいないと、あたしはいつも急に孤独になるんだ。
だけど…
「…?」
今日は、いつもと違った。
…近くから聞こえてくる、聞きなれない誰かの歌声。
優しい声だけど…でも、どこか力強い男の人の歌声で…。
声がする方を辿って歩いてみると、道の隅に出来ている数人の人だかり。
何だかその歌声につられて傍まで来てみれば、そこにいたのは…
まだ若い、1人のストリートミュージシャンだった。
「!」
その人は慣れたように、ギターをかき鳴らす。
そしてその音にそって、大きな声で1人で歌う。
帽子を深く被っているため、顔は見えないけど…声からして男だ。
この時はまだ…あたしは気づかない。
あたしは何だかその人の歌声に惹かれて、それを聞き入った。
最初は立ったまま聞いていたけれど、聞いていくうちにそのミュージシャンの目の前に座っていて…。
曲は、ありがちな失恋ソング。
“待って”とか、
“好きだったのに”とか、
“叶わない”とか……そんな歌詞が、並んでいる。
でも今のあたしの心には、その歌詞が妙に響いて。
気がつけば…泣いていた。
「…っ…」
しかもそれは、一滴だけじゃなくて、二滴三滴……と、大粒の涙が、あたしの頬を伝っていく。
頭の中に、春夜くんを思い浮かべてしまう。
だって、あたしのこの失恋は…その曲と見事に一致しているから。
「…気に入ってくれた?」
「!」
しばらくあたしが泣いていると、いつの間にか曲が終わって、目の前のその人が声をかけてきた。
声をかけられるとは思ってもみなかったあたしは、急いで涙を拭くとその人に言う。
「あっはい、まぁ…」
「そう、良かった」
あたしの返事にその人はそう言うと、満足そうに頷いてギターを片付け始める。
…もう終わっちゃうんだ。
あと一曲くらい聞きたかったな。
だけど気がつけば、今ここに座っているのはあたし一人だけ。
ついさっきまで周りで聞いていた他の人達は、もう既にいなくなっていて。
あたしがまだ涙を拭いていると、その人がまた言った。
「アンタの名前は?」
「…菅谷美希」
「へぇ、美希ちゃんってんだ」
そう言って立ち上がり、ケースに入れたギターを肩に抱える。
そして…
「あ、あの、貴方の名前はっ…」
あたしはその人の名前が聞きたくてそう聞いたら、その人がより深く帽子を被って言った。
「俺のは内緒、」
「!」
「じゃーな」
そう言って背を向けて、足早にその場を後にしてしまった……。
******
翌日。
音楽室で夕べの失恋ソングを鼻唄でうたっていると、その時隣に座っているハルが、怪訝そうにあたしに言った。
「…美希ちゃん、それ何て曲なの?」
「えっ?あ…」
「?」
…気がつけば、今は音楽の授業中。
しかも黒板には、でかでかと「歌テスト」と書かれてあって。
その文字通り今日は歌のテストがあって、皆の前で一人ずつ課題曲を歌わなければならない。
そのために今は、各自で10分だけ練習する時間なのだけれど、あたしは一人全く違う歌を鼻唄でうたっていた、というわけだ。
ハルの問いかけに、あたしが「何でもいいでしょ」って言うと、ハルが憂鬱そうに言った。
「っていうか、あ~あ。歌テストなんて嫌だなぁ」
「え、そう?」
「美希ちゃんは良いよね。抜群に歌が上手いから、いつも先生に誉められてるし。でもほら、俺はかなり音痴だからさぁ」
ハルはそう言うと、また何度目かわからない深いため息を吐く。
…確かに、ハルはかなり歌が下手だ。
天才的な音痴で声も酷く、思わず「すっこんでろ!」と言いたくなるほど。
でも………
ブサ男もハルに負けないくらい、酷いと思うけどなぁ。
第一ブサ男は、皆での合唱の時はほとんど歌っていないのを、あたしは知ってる。
(っていうかクラスで皆が言ってる)
たぶん歌があり得ないくらい下手だからなんだと思うけど、口はちゃんと開いてるくせにほとんど歌わないのだ。
…でも、まぁいいわ。
だって今日でブサ男の酷い姿を目撃することになるんだし、
あたしの後ろにいる由乃と大爆笑しながら見てやるんだから。
あたしが独りそう思ってほくそ笑んでいると、やがて練習時間が終わってとうとうテストに突入した。
歌う順番は、出席番号順。
うちのクラスは「あ~え」から始まる苗字の奴がいないから、一番最初は…
大野春斗。
ハルだ。最悪。
「じゃあ、大野くん。前に来て」
「は…はい」
先生にそう言われると、緊張した面持ちでピアノの隣に立つハル。
先生がピアノを弾いて、それに合わせて歌うらしい。
……どこからか「げ、大野かよ」って男子の声が聞こえた気がした。
あたしの前にいる女子が、家から持参してきたらしい耳栓を自身の耳に入れる。
耳栓を持ってきていない奴らは、みんな手で耳を塞いだりして…。
だけど…
その中で、ただ一人。
あたしの斜め前に座っているブサ男は、何故か何もしている様子はない。
あたしを含め皆がハルの酷い声を聞きたくないのに、ブサ男一人だけはただ両手を下に下ろしている上に、耳栓すらしていないのだ。
…コイツ、大丈夫なのか?
今からハルが歌うっていうのに。
あたしがそう思いながら一人首を傾げていると、やがてピアノの音が鳴り出してハルが歌い出した。
…………
ハルの歌は、やっぱり今日も酷かった。
思わず「お前はいつもこの曲をどう聞いてるんだ!?」って言いたくなってくるほど酷くて、
終わってからしばらくしても……皆はやっぱり酷くダメージを受けている。
…一方のハルは、自分の番が終わってすっきりした顔してるけど。
そしてそのうちにあたしの番も終わって、歌のテストもようやく終盤に差し掛かった頃。
自身の手元にあるクラスの名簿を見て、先生が言った。
「じゃあ次、持田くん」
「!」
その言葉に、あたしはうつ向いていた顔をバッと上げる。
ブサ男だ!
そしてブサ男はみんなと同じように、ピアノの傍に行く。
皆はブサ男の歌声を聞いたことがないけど、思うことはあたしと同じで。
「どーせコイツもヘタなんだろ」って、そんな感じ。
ブサ男も可哀想にねぇ。わざわざ笑われに前に行くなんて。
あたしはそう思うと、後ろにいる由乃と一緒にクスクス笑った。
あー、何か歌う前から超ウケる、
そしたら、そのうちに先生がピアノを弾き始めて…さっきと同じ、音楽が鳴り始めた。
するとブサ男が、その音に合わせてようやく歌い始めて…
「…ひっどいねぇ」
「ね、耳栓持ってくればよかった」
その歌声はやっぱり、ハルほどではないけど結構酷い。
音程外れまくりだし、声もイマイチだし、笑いを堪えてんのが辛い。
アンタなんか引っ込んでろっつの、
あたしがそう思っていたら、その時先生がふとピアノの伴奏を止めて、言った。
「持田くん、ちゃんとピアノの音聞いてしっかり歌って?
じゃないと、このままじゃ赤点だよ」
そう言うと、先生はブサ男に向かって口を尖らせる。
その光景に、数人の生徒達が(あたし含め)クスクス笑っていると、ピアノの伴奏がまた最初から鳴った。
…ああ、良かったぁ。あたしは歌が上手で。すぐに終わったし。
しかしあたしがそう思っていると、次の瞬間…
「…!!」
突然…
本当に突然、ブサ男が、ピアノを弾いている先生の手を止めて、言った。
「ピアノは要りません」
「え、」
「ピアノ無しで歌います、」
それだけを言うと、ブサ男はビックリしてぽかん、としている先生やあたし達に構わずに、手に持っていた音楽の教科書をもとじてしまう。
…は?え、は?なに?
もしや、アカペラで歌う気?
……いやまさか。コイツにそんな難しいことが出来るわけないじゃん。
そんな突然で意味のわからないブサ男の行動に、一方のあたし達は皆?だらけ。
ピアノ無しで歌う生徒なんて、いなかった。
教科書もとじて歌いたがる生徒なんて、それもいなかった。
それなのにブサ男は、本当にそのまま歌いだして…
「!!」
しかもその歌声は、
思わず皆が目を見開いてビックリするくらい、物凄く上手い。
いや、上手いなんてもんじゃない。
さっきの音痴が嘘みたい。
ってかそんなことよりもあたし、
この声…知ってる。
優しくて、だけど力強い歌声の…
あのストリートミュージシャンと、全く同じ声だ。
思わず、自分の耳を疑う。
ブサ男があのストリートミュージシャンと被る。
そんなわけない。
そんなわけないってわかっているのに、
あたしの中で変な確信が生まれる。
ってかこの人…本当にあのブサ男なのか?
そう思いながら歌を聴いていたら、そのうちにブサ男の番が終わった。
「…すげー」
するとその直後、そんな誰かの声とともに自然と拍手がわき起こる。
だけど一方のブサ男は、その拍手に何も動じなくて…また自分の席に戻っていった。
……何で…?
…確認してみなきゃ。
ってか、何が何でも確認したい。
「持田くん!」
「?」
その後、音楽の授業が終わると、あたしは音楽室を出るなりブサ男を呼び止めた。
あたしがそう呼ぶと、ブサ男は目をぱちくりさせてあたしの方を振り向く。
「?…何でしょうか」
たぶんブサ男は、普段はあたしから声をかけるようなことは全くといっていいほどないから、ビックリしているんだろう。
そんな様子からして、明らかにあのストリートミュージシャンとは違って見えるのに。
普通だったなるべく視界にも入れたくない相手だけど、あたしはそいつの傍に行った。
「あの、単刀直入に聞いてもいい?」
「?…何をですか?」
「あんた…ストリートミュージシャンやってるでしょ」
あたしがそう言うと、周りにいる生徒とともに、ブサ男の表情が一瞬にして固まった。
だけど…それでもあたしの中の“確信”は消えなくて。
「…え、」
そしてその一文字だけを呟いたブサ男を、あたしはじっと見つめる。
…さぁ、どう答える?
何て言う?
そう思っていたら…
「っ、ちょっと来て下さい!」
「!」
その時突然、ブサ男はそう言ってあたしの腕を引っ張った。
「ちょ、何するの!」
ちゃんと答えなさいよ!
しかしあたしがそう言っても、ブサ男はそのまま走ってあたしを何処かに連れていく。
出来ればその場で答えを聞きたかったのに、ブサ男は適当な空き教室に入ると、あたしの方を振り向いて言った。
「な、なな、何てこと言うんですか!」
「へ、」
「さっきのことです!あ、あの場で言うことないでしょう!他の生徒もたくさんいるのに!」
ブサ男はそう言うと、口を尖らせてあたしから目を背ける。
え?何でよ。
「別に良くない?だってストリートミュージシャンだよ?普段から皆の前で歌ってるんじゃないの?」
「いや、でもそれとこれとは…!」
「で、どうなのよ?ストリートミュージシャンなんでしょ?
今更違うとは言わせないよ。
あたしはもう確信してんだから、」
あたしはそう言うと、自身の腕を組んでブサ男を見上げる。
その言葉に、一瞬だけ黙り込むブサ男。
眼鏡の奥の、目を泳がせて…。
だけどやがてまたあたしに目を遣ると、観念したように頷いた。
「……はい」
「!」
「菅谷さんの言う通りです。俺、ストリートミュージシャンやってます」
…………
「あれ?美希ちゃんは?」
音楽が終わったあと、俺が音楽室で先生につかまっていたら、いつのまにか美希ちゃんの姿がなくなっていた。
先に教室に戻ったのかな。
だけど俺が近くにいた生徒に聞くと、音楽室で雑談をしていた女子達が言う。
「え、美希ならさっき、ブサ男にどっか連れて行かれたよー」
「えっ!?」
「ストリートミュージシャン?がどうとか言ってた。あのブサ男が、そんなことするわけないのにね」
「!!」
っ、嘘…バレた!?
俺はそんな女子達の言葉を聞くと、「ありがとう」ってすぐに音楽室を後にする。
空き教室なんていっぱいあるからどこなのかわからないけど……何だか嫌な予感がするなぁ。
そもそも持田くんがストリートミュージシャンをやっていたことを知っていた俺は、それは絶対秘密だから大好きな美希ちゃんにさえ秘密にしていたのに……
あの美希ちゃんにそれが本当にバレてしまったんなら、いったいどうなるのやら。
そう思いながら、すれ違う生徒皆に二人の居場所を聞きながら急いでいると、やがて俺はそれを掴むことが出来た。
「ああ、その二人ならついさっきその教室に…」
「ありがとう!」
しかし…
「でも、ちょっと待って大野くん」
「!」
俺がさっそくその中に入ろうとしたら、何故かそれをその女子に止められてしまう。
な、何だよ。急いでるのに!
「今は、いくら大野くんでも中には入らない方がいいと思う」
「!」
そう言って、言葉で「通せんぼー」をされてしまう。
いや、意味わかんないし!
「何で!」
そしてちょっと怒り気味でそう聞いたら、その女子が言った。
「ほら、ブサ男って、美希のこと好きだって有名じゃない?」
「!」
………ん?
「だから、あんな必死で誰もいない教室に連れ込むなんて……あたしは今ブサ男は美希に告ってる最中だと思うんだよねぇ」
その女子はそう言うと、「だから、良いコだからここで大人しく待ってな」って俺の頭をよしよしする。
あー!また子ども扱いした!俺はちゃんと皆とタメなのに!
………って、
「す、すすす好き!?」
「うん、」
「持田くんが!?美希ちゃんを!?」
「だからぁ、そうなんだってば。あんた美希の幼なじみのくせに知らないわけ?」
そう言って、ため息交じりに横目で見られる。
っつか、持田くんが美希ちゃんを好きなんて…そんなこと初耳だよ!
第一持田くんは、他に好きなコが…。
俺はそう思うと、不安いっぱいにその教室に目を遣った。
…美希ちゃん、
…持田くん、
ストリートミュージシャンのことは、何が何でもバレないでほしい。
でも…それは無理かな。
今この教室に俺が入って行ったら…
また俺は美希ちゃんに怒られるんだろうか。
…………
「俺、ストリートミュージシャンやってます」
ブサ男がそう言ったのを見ると、あたしは一瞬だけ言葉を失った。
…その姿は本当に別人なんだけど(特に話し方とか)、でも明らかに同一人物だし。
なんで、そんなことしてるの?
そう聞こうかと口を開いたけど、彼は…路上ライブをするくらいだし、もしかしたら将来そういう道に進みたいのかもしれない。
(ただ…顔がなぁ)
あたしがいつまでも黙ったままでいたら、ブサ男が言った。
「あ…あの、菅谷さん?」
「…え、」
「もしかして…ひ、引いてますか?」
ブサ男はあたしにそう問いかけると、オドオドした様子でうつ向く。
…だから、そういうのやめなって。もっと堂々としたら?
あたしはそう思いながらも、首を横に振って言った。
「いや……引いてはない。要は、将来歌手になりたいから、そういうことしてるんでしょ?持田くんは。
すごい!そのはっきりした夢は、生徒会長のあたしから見ても凄いと思う」
「ほ、ほんとですかっ…!?」
「うん。ただ……」
「?」
あたしはそこまで言うと、そいつから目を逸らして意味もなく窓の外に目を遣る。
……素晴らしいくらいの快晴。
なんだかこの雰囲気とは合わないような気がしないでもないけど。
そしてあたしが外を眺めながらそんなことを思っていたら、ブサ男が不安げに言った。
「た、ただ……何ですか?」
「……」
そう問いかけて、あたしが何を言うのかと身構えるそいつ。
自分でわからないのか。
あたしはそう思うと、いつもと同じ勢いでブサ男に言った。
「……顔が悪い」
「…えっ」
すると、あたしのそんな言葉にブサ男の表情が一瞬にして固まる。
って、そりゃそうだ。こんなハッキリしたことを突然言われれば。
だけどあたしは、それにも構わずに言葉を続けた。
「だってそうでしょ。ミュージシャンはだいたいみんな顔が良い。だけど何?
アンタの顔は崩れすぎてる!そりゃあね、どっかのバンドのDJみたいにピエロか何かの仮面を被れば、何とかなるだろうけどっ、」
「…っ」
「まぁ確かに、アンタは歌だけは上手い。それは尊敬する。けどその顔じゃあ、どんなに頑張って良い曲作ったって、所詮は…」
全部台無しだよ。諦めなよ。
しかし、あたしがそう言葉を続けようとした、その時───…
「だっ、だから何だって言うんですかっ!!」
「!!」
突如、ブサ男がその言葉を遮って言った。
「顔が悪いって、俺は顔で勝負してるんじゃありません!
普段テレビに出てるいろんなアーティストみたいに、俺は“歌”で頑張りたいんです!
別に俺は、顔が命の“アイドル”を目指してるわけじゃない!」
「!」
「確かに、何でも出来る生徒会長の菅谷さんから見れば、俺はただの笑いものにしか映らないでしょうけど、それでも俺は自分の力を試してみたいんです!
何も知らないたかが生徒会長の貴方に、そんなことをズカズカ言われる筋合いはありません!」
「…っ、」
ブサ男がそこまで言った直後、一瞬だけその場が静まり返る。
まさかこの男が、ここまで必死に言い返してくるとは思わなくて…。
っていうか、ここまで必死に言い返されたのって…初めてかもしれない。
あたしがそんなことを思いながら思わず固まっていると、ふいに我に返ったらしいブサ男が言った。
「…っ、あ、す、すみません!」
「!」
「つい、熱くなってしまって…」
そう言うと、慌ててあたしから視線を逸らし、顔を俯かせる。
「…え、あ…いや、」
「…?」
そして一方のあたしは、少し困惑状態。
何て返したらいいのかわからない…。
謝る言葉すら浮かばないくらい、頭の中が真っ白になっていて…。
…今まで…
あたしにそうやって反発すること、ハルすらしなかったのに。
そう思っていたら…
「あ、あの…美希ちゃん…?」
その時ふいに教室のドアが開いて、そこから見慣れた顔がひょこっと姿を出した。
…ハルだ。
何で…ハルがここに?
あたしがそう思っていたら、ハルが口を開いて言った。
「どうしたの?二人とも」
そしてそう問いかけて、今度はその視線をブサ男に遣ると…口パクで、そいつに何かを問いかける。
その問いかけにブサ男が黙って頷くのを見て、ハルが「はぁー」とため息交じりに頭を抱えた。
…なんかそのよくわからないやりとり、見ててイライラするんだけど。
あたしがそう思っていたら、ハルがあたしに言った。
「…美希ちゃん」
「?」
「あのね、持田くんが路上ライブしてることは、誰にも言わないでね」
「!」
そう言うと、両手を合わせて「お願い」って首を傾げる。
…え、ちょっと待って。
「何でアンタが知ってんの!?」
そうやってハルがブサ男のストリートミュージシャンのことを突然言い出すから、あたしは思わずまたビックリしてそう問いかけた。
すると、その言葉を聞いたブサ男があたしに言う。
「大野くんが、俺の路上ライブの第一発見者なんです」
「え!?」
そう言うと、?のあたしに説明し始める。
どうやらハルがあたしの送り迎えをしていた夜に、たまたま見かけてすぐに「持田くん!?」とバレてしまったらしい。
ハルには周りにバレないように口止めしていたから、幼なじみのあたしですら知らなかったんだとか。
「だから…とにかくこのことは誰にも言わないで下さい。
菅谷さんにバレてしまったのは仕方ありませんが、これ以上はバレたくないので」
ブサ男はそう言うと、ハルと一緒に「お願いします」って頭を下げてきた。
…ってか、何でそんなに内緒にしててほしいのさ。
あたしはそう思いながらも、しばらく考えたあと…後に「うん」と頷いて…
「…わかったよ、内緒にしておく」
そう言って、頷いた。
…だけど、
「よかったねぇ、持田くん」
「はい。一時はどうなることかと…」
「…、」
一方、そんなブサ男の姿を、あたしは少し離れた場所から見てふとさっきのことを思い返す。
“顔で勝負してるんじゃありません!”
“顔が命の“アイドル”を目指してるわけじゃない!”
“何も知らないたかが生徒会長の貴方に、そんなことをズカズカ言われる筋合いはありません!”
……たかが生徒会長、ね。
あたしはそう言われたあの時、確かにブサ男が他の人とは違う“何か”を持っていることに気が付いた。
それは、路上ライブがどうのこうのじゃなくて…。
……この、やけにフワフワした気持ちは、何だろう。
そう思っているうちはまだ、あたしは気づかない───…。
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