兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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京都旅行がタノシスギル件−恋−

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着物に着替え終わったあと、お店の前で早月くんと健に合流した。
会った瞬間に健と目が合ってしまって、あたしはそいつから不自然にふっと目を逸らす。
だけど健はそのままあたしの目の前に来て、そんなことを気にしているような様子もなく、言った。

「…似合ってんじゃん」
「!」
「お前ほんとオレンジ好きだな」

そう言って、だけど照れたように笑うから。
あたしはそんな健に「ありがと」とだけ言うと、さりげなく健から離れて早月くんの元に行く。
早月くんは何やら近くで別の観光客の女の子達に囲まれていて、でもあたしと目が合うと、「あ、世奈ちゃん!」とその子達と別れて来てくれた。
…そんなあたしの後ろで、玲香ちゃんが早速健に引っ付いている。

「健くん!どう?似合う?」
「ん、似合ってるよ」
「じゃあ可愛いっ?」
「ん、可愛い」

そんな会話を聞きながら、あたしは平気なフリをして早月くんに言った。

「どう?オレンジ。可愛くない?」
「可愛い!あっ、ねぇせっかくだから写真撮らせて!」

早月くんはそう言うと、ちょっと恥ずかしがるあたしをよそにスマホのカメラを起動して、それをあたしに向ける。
そしてその姿を一枚撮ると、その時玲香ちゃんが早月くんに言った。

「ね、早月くんちょっと提案があるんだけど」
「ん、どしたの?」
「今日、行ってみたい場所皆いっぱいあるじゃない?でも一日で全部回るのはちょっと難しそうだし、今日は二手にわかれて観光しない?
その方が行きたいところにいっぱい行けるでしょ?」

玲香ちゃんがそう言うと、早月くんがその提案に「いいね!」なんて頷く。
一方、そんな提案を聞いたあたしは、思わずびっくりして目を見開いた。
…え、そんなことしたら…
だけどそんな二人の後ろで、健が納得がいかなそうに言う。

「けどな、せっかく4人で来てるんだし、4人でゆっくり回った方がよくねぇ?」
「でも他に観光客いっぱいいるし、やっぱ二手に分かれたほうがいろいろラクだって。…世奈ちゃんも、早月くんとゆっくりしたいだろうし」
「!」

玲香ちゃんがそう言うと、その時あたしの方を向いた玲香ちゃんと目が合う。
何か…あたしも、頷かなきゃ、いけないみたい。
あたしはそう思うと、物凄く複雑な気分に陥りながらも、早月くんに寄り添って言った。

「う、うん。実はあたし…早月くんと二人だけで行ってみたい神社があるの」
「え、」
「ごめん。今日は一日二手にわかれよ?」

あたしはそう言うと、精一杯の笑顔で健の方に目を遣る。
だけど一方の健は、そんなあたしの言葉に“悲しい目”をした。
きっとそれが、さっき玲香ちゃんが言っていたその目なんだろう。
すると、あたしの言葉を聞いた早月くんが言った。

「…じゃあ、もう決まりだね」

……やだ。二人きりになんてなってほしくない。
確かに離れるって決めたけど、こんなのいきなりすぎない?
待って。せめて4人で行動しようよ。
健、もっと何か言ってよ。
だけど健は…

「…そっか。じゃあ仕方ないな」

そう言うと、やがて玲香ちゃんと二人でその場を後にしてしまった…。

「っし、じゃあ世奈ちゃん!僕らも行こ!」
「!…う、うん」
「世奈ちゃんどこ行きたい?」
「え。えっとー…」

…タノシミにしていたはずの、京都旅行。
行きたい場所は行く前からいくつも決まってて、最初はここで、次にここ行って、で、その次は…って。
でも…あれ?何で今はその場所が一つも浮かばないんだろう。
あたしが考えていると、早月くんがふいに「世奈ちゃん○○寺行きたいって言ってたよね?」なんて覚えていてくれていたから、あたしはその言葉に頷いて、やがて二人で目的地に向かった。

…………

その後はたくさんの場所を早月くんと二人で巡って、楽しい時間を過ごした。
ゴールデンウィークということもあってどこに行っても人が溢れ返っていたけれど、早月くんはあたしがはぐれてしまわないようにずっと手を繋いでくれていた。
あたしが食べたいと言っていた甘味処の抹茶パフェのことも早月くんは覚えてくれていて、事前に場所を調べておいてくれたのか、ずっとリードしてくれて。

…今頃、健と玲香ちゃんも楽しくやってるのかな。
ふいにそんなことが気になったけれど、あたしはすぐにぶんぶんと首を横に振る。
って、ダメダメ!あたしは健から離れるんだ。
もう健を振り回さないって決めたんだから!

そうやって一人で葛藤しているあたしを、早月くんが見つめていたことに気づかずに、その後も二人で観光を楽しんだ…。

…………

そして、夕方頃。
ずっと行ってみたかった恋愛に効く神社に、あたしと早月くんは最後に訪れた。
そこの参拝客はやっぱりカップルばかりで、何だか目の遣り場に少し困ってしまう。
本当はここで欲しいお守りがあって、来たんだけど…

「…あ、世奈ちゃんこれ可愛い!」
「うん?」
「恋愛のお守り。男性用と女性用があって、カップルが二人で買って毎日持ち歩いてると別れないんだって」
「…へぇ。可愛いね」

早月くんの言葉を聞くと、あたしはやっとそれを見つけてそれをまじまじと見つめる。
…これだ。あたしが欲しかったのは。
本当なら、観光途中のどこかで健と二人でこれを買ってみたかった。
…でももう買っちゃダメになっちゃったからなぁ。

「早月くんてこういうの好きなんだ?」
「だって可愛いじゃん」
「ほんと男のコなのに乙女チックだね」
「ん、よく言われる」

でも夢があるね、なんて言う早月くんの隣で、あたしはふいに周りを見渡して言った。

「…ねぇ早月くん、あたしちょっとトイレ探してくるからここで待ってて」
「え、一人で平気?」
「うん、何があったらスマホがあるし」
「そっか。じゃあ待ってるよ」

そしてあたしは一旦早月くんから離れると、早速トイレを探す。
でもさっき見かけた気がして、なんとなくだけど場所は覚えてるんだ。
だからそのなんとなくの場所に一人で向かっていると…

「…?」

その時。
境内にある赤い橋の上で、あたしはふいに見覚えのある人影を2人見つけた。
その赤い橋はあたしも気になっていた橋で、そこで好きな人とキスをすると幸せなカップルになれるらしい。
それはいいんだけど。
その赤い橋の上にいたのは、なんと健と玲香ちゃんだった。

「…!」

健はあたしの存在に気づいていないけれど、一方の玲香ちゃんがあたしの存在に気がついたようで、ふいに目が合う。
そして、わざとなのか。

「…ね、健くん」
「ん?」

玲香ちゃんはふいに健の服の袖をくいくいと引っ張ると、振り向き間際に…健にキスをした。

「!!…っ、」

そのキスシーンを見た瞬間、あたしの心臓がバクン、と嫌な音を立てて、一瞬その場から動けなくなる。
だけど次の瞬間、口を離したあと…玲香ちゃんとまた目が合った。
しかし、あたしがうかうかしていると…

「…玲香、」
「うん?」

健が、ふいに玲香ちゃんの名前を呼んで…そのままなんと玲香ちゃんを抱きしめた。
そんな衝撃的なシーンを目撃してしまったあたしは、咄嗟にその場から逃げるように二人に背中を向ける。
なんとなくトイレに行こうと思っていたけれど、そんな余裕すらなくなって、あたしはすぐに早月くんの元に走った。

「っ、早月くん!」
「…あれ。意外と早かったね」

早月くんはまた観光客の女の子達に話しかけられていたけれど、あたしが来るとすぐにその子達とバイバイしていた。
でも、そんなの構わない。もう知らない。あたしはちょっと息を切らしながら、早月くんに言った。

「…お守り、せっかくだから買お?」
「え。お守りって…」
「さっきの、二人で買うお守り」
「!」

あたしがそう言うと、一方の早月くんは驚いたように目を見開く。
だって、さっきの二人で買うお守りといったら、もう一つしかない。
あたしの言葉を聞くと、早月くんが少し戸惑いつつ言った。

「…で、でもアレ、恋人同士で買うお守りだよ?僕は確かに世奈ちゃんが好きだけど、まだ付き合ってるわけじゃ…」
「じゃあ付き合っちゃえばいいじゃん。あたしは早月くん好きだよ」
「!」
「あたしと付き合ってよ、早月くん」

あたしはそう言うと、目の前の早月くんに抱きついた…。






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