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積み残し編……もうちょっと続くんじゃよ

新婚旅行ベラ編3

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 ベラの勧めで農民兼盗賊の方々からお話を伺ってみた。

 話を纏めると、この盗賊たちはカーン子爵領にある小さな村の村民らしい。

 戦争に王国が敗北、さらにカーン子爵諸侯軍もほぼ壊滅、そのため税率が大幅に引き上げられたそうだ。

 税を払ってしまうと満足に食べることも出来なくなる。
 そのため、村の年寄り連中は飲食を拒否、このままでは彼らの祖父母や両親世代はみんな餓死してしまうと。

 それを避けるため、貴族に税として作物を奪われて家族が死ぬくらいなら田舎から奪って生きのびてやろうと今回決起したそうだ。

 盗賊やるくらいならみんなで山や森に入って獲物を狩ればいいと思うのだが……

「今、リバークは相当に景気がいい。だからリバークから運ばれる荷物を狙って……」

 どうやらリバークの景気はいいらしい。
 リバークの街とその周辺は王国の直轄地らしく、戦争で大きな被害を受けた他の貴族領と比べると税率の上昇はそこまでのようだ。

 もちろんそこまで引き上げないことにも理由がある。
 それは迷宮。
 迷宮の魔物が弱体化していることで狩りが容易となり、その産出物は王国全体に供給されている。

 今回の戦争の戦死者の多くは農民、つまり食料の生産率が下がっているのでリバークの迷宮から取れる食肉が必要なのだ。

 さらに他の貴族領では軒並み税率が上がっている。
 冒険者もそこで狩りをしても税金でかなり実入りが減ってしまう。

 ということはリバークに冒険者が集まる。
 その冒険者たちがたくさん狩って素材をたくさん持ち帰る。
 それを加工して各地に出荷というサイクルでかなりの好景気だそうだ。

 こいつらはリバークから各地に出荷される荷物を狙っていたようだ。

「旦那様、彼らは今回が初めての襲撃とのことです。証言に嘘はありません」
「わかるの?」
「はい」

 なんで分かるの?  そういうスキルなんてあったのかな?

「旦那様、わたくしは彼らのような方を救いたいのです」

 俺と結婚する前、国に帰ったら変な貴族やら王族やらと結婚させられて人助けが出来なくなるのは嫌だと言っていたな……
 俺と結婚すれば人助けも出来ると。

 うーむ……ベラはこいつらの証言に嘘は無いと確信してるみたいだし、ここは旦那として器の大きさを見せつけるべきか?

「おい、お前らの村って何人くらい居るんだ?」
「さ……300人くらいです」

 300か……それなら戦争の時に使ったウルト転移を使えば2往復で済むか……

「そうか……お前ら、ベラに話したことに嘘がないと誓えるか?  嘘があった場合、一族郎党皆殺しの上晒し首だけどいい?」
「嘘はありません!!」

 おお、断言したな……

「分かった。じゃあお前ら、移住する気はあるか?」
「移住……?」
「どこに?」
「王国内はどこも似たようなものだって……」

 ザワザワと後ろの盗賊(仮)たちが騒ぎ始めるが、リーダー格の男だけは黙って俺を見つめていた。

「どこまで?」
「教国」

 俺が答えると、全員が黙り込んでしまった。

「嬉しい誘いですが……教国までだと辿り着けない者が多く……」
「それは問題ない。こちらで運んでやる」
「え?」

 リーダー格の男はぽかんと口を開けるが、早く答えて欲しい。
 俺は新婚旅行中なのだ、盗賊くずれとお話している時間は勿体ないのだ。

「移動はどうにかしてやる。全員間違いなく運んでやる。それで、移住するつもりは?」
「俺だけでは決められません……みんなで相談しないと……」

 ふむ、ですよね。

「分かった、お前たちの村の場所を教えろ。数日後に確認しに行ってやる」
「よろしいのですか?」
「いいから教えろ。俺の奥さんがお前たちを救いたいんだそうだ」

 俺はどうでもいいけど。

「あ……ありがとうございます!」

 男たちはベラに深く頭を下げた。
 何故かベラも返礼していた。

「じゃあ……俺たちは一度村に帰ります」
「分かった。そうだ、これを持っていけ」

【無限積載】から大きめのカバンを取り出してそこに適当に魔物肉を突っ込みリーダー格の男へと投げ渡す。

「これは……」
「俺たちが行くまでそれで持たせろ。足りるか?」

 足りないならまだ出すよ。

「い、いえ……」
「本当か?  遠慮するな」

 今の表情の変化、おそらく足りないのだろう。
 カバンをもう3つほど取り出して同じように魔物肉を詰めて適当な男に投げ渡しておく。

「ありがとうございます!」
「俺たちが行くまでに盗賊行為したらこの話無しだからな?」
「はい!」

 男たちが去っていくのを確認してからベラと並んで馬車に戻る。

「あれでよかった?」
「はい。ありがとうございました」

 良かった。ベラも満足してくれたようだ。

「じゃあ行こうか」
「へ、へい!」

 一部始終を見ていた御者の男は困惑しながらも馬に鞭を入れて走らせ始めた。

「さて……一応マークに連絡入れておいた方がいいよな……」

 スマホを取り出して電話帳を開き、変態の項目をタッチ、先輩に電話を掛けた。

「はいはーい!  電話なんて珍しい、どうかしたの?」
「先輩、おつかれっす。マーク近くに居ます?」
「居るよ?  代わろうか?」
「お願いします」

 電話をマークに代わってもらい、300人の移住希望者を迎え入れるかもしれないと話をする。

「それで場所はあるか?」
「場所はありますが……王国の村人ですよね?」
「そうだね。ベラがどうしても助けたいって。俺も賛成してるよ」
「……かしこまりました」

 なんだかあまり納得してない感じだな。
 まぁ他所の国から移民を募るとか普通にしないだろうし。

「御館様、移民の移動はあまり目立たないようお願いします」
「それは分かってるよ。ウルトに乗せてから俺だけそっちに転移してから【トラック召喚】使うから」
「それなら良いのですが……」

 なんだ?  歯切れ悪いな。

「言いたいことがあるなら言え」
「はい……王国側に見つかりますと、面倒なことになりかねませんのでご注意下さい」

 なるほどね。それくらいは弁えてるよ。それに……

「分かってるよ。だけどね、今回の移民受け入れはベラの希望なんだよね。奥さんの望みを叶えるためなら王国くらい敵に回しても構わないさ」
「私どもとしましては全く構わなく無いのですが……」

 まぁ、頑張れ。

「そういうことだから、また連絡する」
「かしこまりました」

 通話を終了してスマホをポケットに仕舞う。
 久しぶりに電話したけどなんだか不思議な感じだったな。

「受け入れられるって」
「良かったですわ」

 結果を聞いて、ベラも安心したように息を吐いた。

 それから俺たちは他愛もない話をしながら馬車に揺られながら移動。
 夕方には宿泊予定の小さな街に到着した。

 街一番と聞いた宿の前まで馬車で移動、俺とベラはそこで降りる。

「ご苦労さま。アンタもこれで適当な宿に泊まって疲れを癒してくれ」
「こ、こんなに!?」

 俺が御者の男に手渡したのは大銀貨。これだけあれば大抵の宿には泊まれるだろう。

「疲れを残されても困る。釣りは返さなくてもいいから」
「ありがとうございます!」

 朝適当な時間に迎えに来てくれるように頼み、馬車を見送る。

「入ろうか」
「はい」

 俺たちは宿へと入り、この宿一番の部屋に宿泊することにした。

 今夜も2人きり。楽しく過ごせそうだ。
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