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積み残し編……もうちょっと続くんじゃよ

拠点完成

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 数日かけて避難準備を終わらせてクリード侯爵領へと全員で向かう。
 まずは庁舎へ行ってマークたちに説明、それから領内の全ての領民に布告を出す。
 その後魔王城の設置……まぁまぁ忙しそうだな。

 近いうちに会議の招集もかかるだろうが、それはアンドレイさんに預けているタブレットで連絡してくるだろう。
 会議は連絡が来てから考えたらいい。

 そんなことを考えながらウルトに乗って移動する。

 初めて乗車するメイドたちのポカンとした表情を眺めたり、大きくなったサーシャのお腹を撫でたりとのんびりした時間を過ごせた。

 サーシャのお腹はもうかなり大きくなっている。そう遠くないうちに産まれてくるだろう。
 それまでに戦争が終わればいいが……そうもいかないだろうなぁ……

 おのれ王国め、こんな大切な時期に戦争を仕掛けてきやがって……

 数時間掛けて庁舎に到着、すぐにマークとダニエルを呼び出して状況を説明する。

「なるほど……」
「城……ですか」

 ウルトに積んで城を持ってきたと言うと、やはり2人は絶句し固まってしまった。
 まぁどこの世界に城運んでくるやつが居るんだよって話だよね。

「まぁ城だね。俺もびっくりしたけどね」

 最初からなんだか嫌な予感はしてたんだ。けどさすがに魔王城持ってくるとは思わないだろ!?

「それで……その城はどちらに?」
「この庁舎の北側、将来のクリード侯爵屋敷と新庁舎プラスアルファの敷地を使うんだってさ」

 城だから当然俺の屋敷予定地の敷地だけで足りるわけがない。
 なので俺の屋敷に隣接して建てられる新庁舎予定地、さらにその周囲1キロ程を占領することになる。

「あの……その城はこの後も活用されるのでしょうか?」
「いや、事が済んだら返しに行かせるよ。あんなでかい城はいらんよ」
「やはり大きいのですね……」

 マークとダニエルは遠い目をしている。
 俺の屋敷予定地、新庁舎予定地、さらにその周囲を使うということで想像はしていたのだろうが、俺の口からデカいと聞いて現実逃避しそうになっていた。

「そもそも王城よりデカいからな?  教国の臣である俺が陛下より大きい城に住むなんて有り得ないさ」
「そこまで大きいのですか?」

 大きいよ。一国の王と魔王、どっちがすごいのかは分からないけど城は魔王の方が大きい。

「まぁ、とりあえず設置するよ。もし万が一、王国の部隊がこっちに攻めて来た時には避難所として領民を受け入れるから、それも周知させないとな」

 ここに居る領民だけでなく、他の場所で作業している領民にも伝えないと。

「その辺はこちらで対応しておきます」
「よろしく頼む」

 領民への説明をマークたちに任せて俺は設置地点へ移動して魔王城を設置、ウルトはよめーずと使用人を降ろしてから外壁建設へと向かって行った。

「御館様……これは?」

 浄化魔法を駆使して中の掃除をしようと歩き始めたところで、ジェイドとフィリップが駆け寄ってきた。

「2人ともご苦労さま。今度戦争があるみたいだから念の為に持ってきたんだ」

 ウルトが。

「持ってきた?  城を?」
「うん。城を」

 フィリップは城を見上げて呆然としている。

「これはなんと言うか……」

 ジェイドはなにか言い淀んでいるが、言いたいことはわかる。
 禍々しいよね。

 とりあえず2人に掻い摘んで現状を説明、従軍についても言っておいた。

 戦争、従軍と聞いてアーヴィング親子は好戦的な笑みを浮かべている。バトルジャンキーかな?

「とりあえず掃除してくるから、何も知らずに様子を見に来る領民が居たら説明しておいてもらえる?」
「手伝いは不要ですか?」
「いらないかな。俺とベラ、イリアーナの3人で浄化魔法使うだけだから」

 最初にサーシャとリン、ソフィアの部屋を浄化して3人には安静にしてもらわないとな。

 手分けして城内に浄化魔法を掛けて周り、それが終わるとマークとダニエルたちと打ち合わせ。
 数日中には全領民が領都に到着する見込みとのことだ。

「それで、食料なのですが……」
「今領民ってどれくらい居るの?」
「6000人程です」
「6000か……俺の持ってる食料を全部解放すれば半年くらいは養えるかな?」

 大半魔物肉だから野菜類が少し心許ないかな?

「よろしいのですか?」
「構わない。こちらの都合で領都内に留め置くんだ、それくらいは出すさ」

 今ならミノタウロス肉も放出しちゃう。
 帝国の迷宮の9階層まで行けば狩れることがわかっているのだから出し惜しみは無しでいこう。

「それと……諸侯軍の編成はどうなってる?」
「はい。現在警備隊隊長のゲルト殿が編成を行っております。明日には仕上がるかと」

 警備隊隊長……ああ、リンの叔父のあの人か。
 この人は元々王国魔法師団の部隊長まで上り詰めた凄腕魔道士だ。
 それなのに俺とリンが結婚して領地を賜るやいなや魔法師団を退職、うちの領地で働かせてくれと言ってくれたありがたい人だ。

「そうか、了解した。編成が完了したら一度集めてくれ、渡しておきたいものがある」
「御館様手ずからですか?」
「ああ、希望者には魔法付与された装備品を貸与しようかと思って」

 腐るほどあるからな。
 開発の資金難に陥ったら売り払おうかとも思っていたのだが、案外資金には余裕がある。
 一番金と時間と人で手のかかる部分をウルトがやってるからね。

 そうだ、手柄をあげたら褒美にしてもいいかな?
 流通量はそんな多くないから上位の冒険者や騎士でもない限りは持ってないだろうし、使わなくても売れば大金になる。
 これはいい考えかもしれない。

 とりあえず今日のうちにやるべきことは一通り終えたので魔王城に戻りよめーずやジェイドたちと一緒に夕食をとり休むことにする。

 俺の寝室は俺がマークたちと打ち合わせをしている間に勝手に決められていたようで、最上階の王の私室のような部屋だった。

 そして何故か、サーシャとリンの2人が俺の寝室で待っていた。

「レオ様、おかえりなさい」
「お疲れ様」
「ああ、ただいま……2人でどうしたの?」

 何故?  もしかして3人で……?

 いや、以前リンとアンナ2人ががりで搾り取られたことはあるがサーシャとリンの2人でってことはないだろう。
 そもそも2人共妊娠しているんだ、そんなことはない……よね?

「レオ様にお伝えしておかなければならない事があります」
「俺に?  なに?」

 なんだろう?

「レオ様がマークたちとお話をしている間に、ウルト様が能力を使って王国を監視していました」
「ああ、【傲慢なる者の瞳】を使って監視してたんだね。俺もそのうちやろうと思ってたよ」

 そこで見えたものをアンドレイさんに伝えれば情報戦で優位に立てるからね。

「はい。そこで……黒髪の人間を発見したそうです」
「黒髪……ってことは……」
「勇者ね。この世界の生まれの人間に黒髪は居ないのよ」

 俺自身と勇者たち以外見たことないからな、何となくそう思ってた。
 てか、黒髪って優性遺伝だってテレビで見たことあるけど、そうでも無いんだな……

「勇者の存在が確定したのか……でも魔王も居ないのに勇者召喚って出来るのか?」
「可能です。勇者召喚の過程で帰還条件設定というものがあります。本来その帰還条件設定は魔王の討伐になるのですが、魔王が存在しない今はその条件設定は使えませんので他の条件を設定したのでしょう」

 なるほど、だから魔王を倒してすぐに帰還するかどうかの選択肢が現れたのか……やけにしつこかったな、アレ。

「それって達成不可能な条件を設定したら召喚された勇者は帰れなくなる?」
「どういった手段で判断しているのかは分かりませんが、達成不可能な条件は設定出来ないと聞いたことがあります」
「そうなんだ……なら今回はどんな設定にしたんだろうね……」
「おそらくだけど、レオの捕縛、もしくは殺害だと思うわよ」

 それしかないよなぁ……
 それ以外の設定で達成されて帰還されたら無駄でしかないもんな。

「このことはアンドレイさんたちには?」
「まだ伝えていません。まずはレオ様にと」
「あたしもサーシャちゃんももうクリード家の人間だからね。実家よりあなたを優先するわよ」

 おお……

「あ、ありがとう、嬉しいよ。ところでなんで食事の時じゃなくて今なの?」
「魔王が居なくても勇者召喚が出来ることは国家機密に該当します。国の上層部の者しかこのことは知りません。ですが、聖女であったベラさんとイリアーナさんなら知っている可能性はありますね」
「うちの実家は伯爵家だし、そもそも初代が召喚された人間だからね。当然知っているわ」

 ふむふむ、なるほど……
 国家機密なら他の人に知られる訳にはいかないのか。

「でも今回のことで魔王が居なくても勇者召喚が出来ることがバレるんじゃ?」
「そうですね。ですので教皇猊下はお怒りだと思います」

 聖女は協会の管轄だからかな?

「まぁ……うん。話はわかったよ。明日俺からアンドレイさんには伝えておく」
「よろしくお願いします。ではそろそろ休みましょうか」
「ちょっと待って」

 サーシャが立ち上がろうとするのを引き止める。

「はい?」
「たまには一緒に寝よう。妊娠が分かってから一度も一緒に寝てないだろ?」
「しかし……」
「嫌か?」
「いえ、決して嫌なわけでは……」

 久しぶりで照れているのか、サーシャの顔が紅い。可愛い。

「なら……いいだろ?」
「……はい」

 よし。

「旦那様と正妻の仲が良くて何よりだわ。じゃああたしは部屋に戻るわね」

 リンも……と言おうとしたが目で制された。今日はサーシャと2人で過ごせという事か。

「ああ、おやすみリン」
「おやすみなさい」

 リンが部屋を出ていったあと、久しぶりにサーシャとくっついて寝ることが出来た。
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