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最終章……神の座を目指して
167話……戦士の夜
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その日の夕食後、少しなら時間が取れるという事で再び俺は皇帝陛下にお目通りしていた。
「ほう、聖女を欲するか」
褒美に聖女イリアーナが欲しいと頼むと、皇帝陛下は愉しそうに笑みを浮かべた。
「確か婚約者がおったの……その辺りの問題はどうなっておる?」
「本人と父ジェイドには話を通しております。明日の模擬戦、私が勝てば娘を貰い受けると」
「それで了承しておるのだな?」
「はい」
正確にはまだイリアーナの口からは聞いていない。
しかし外堀を埋めていたのはイリアーナだし、問題無いと信じている。
ジェイドとの話し合いの席にも居たのに口を出してこなかったし、普通によめーずと並んで座っていたしもう既成事実だろこれ。
「問題は相手の出方かの」
「そうですね……」
なんて言ったかな? ネリ……ネル……ねるねるねーるね?
「ネフェリム侯爵家か……武闘派の家だの」
「武闘派ですか」
あーそれそれ。
武闘派なのに婚約者を攫われて何もしなかったの?
「確か当主はレベル60を超える中位職だったかの? ジェイドを除けば帝国最強の戦士であるな」
「貴族なのに?」
「貴族なのに、だの。確か……ネフェリム家の男児は強くあれ……だったかの? 家訓のようだの」
皇帝陛下って配下の貴族家の家訓まで把握してるのか?
侯爵家だし重臣だからか。
「難しいですか?」
「ふむ……なにかネフェリム家に落ち度でもあればなんとかなるかの?」
落ち度か……
「ジェイド殿が言うには婚約者が攫われたにも関わらず何もしなかったと。さらにはあっさりと新しい婚約者探しをしていたと伺いましたが」
「ふむ……確かに聖女が誘拐された時も教国にて保護されている事を伝えた時も何も言ってこなかったの……」
これは……いけるか?
「皇帝陛下、帝国には決闘という文化があると聞き及んでおります」
「ネフェリム家に決闘を挑むと?」
「必要とあらば」
そう答えると、婚皇帝陛下は少し悩むような仕草を見せた。
あと一押しで行けそうだ。
「皇帝陛下、陛下は私が挙げた功績に対し聖女イリアーナを望むことに異論はお有りですか?」
「余個人としては無い」
「であれば後は私とネフェリム家の問題。私がネフェリム家を納得させれば問題はありませんね?」
「無いの」
よし。
そもそも政治的交渉とか出来ないんだから無理にやる必要は無いだろ。
武力を背景にしたっていいじゃない。勇者だもの。
「全く……英雄色を好むと言うが……そこまでして欲しいものなのかの?」
「私にとっては億の金貨より価値あるものです」
「あいわかった。明日の模擬戦にはネフェリム家の者も見学に来るだろう。その時に席を設けてやるからそこで話すが良い」
「ありがたき幸せ」
これで障害はネフェリム家のみ。白手袋用意しとこ……
「しかし王国から聞いていた話とかなり印象が違うの……やはり虚偽か」
「王国……ですか?」
なんだろ……玉座の間で剣聖の死体投げつけたことかな……
いや今やってることもそう大差ないと思うんだけど……
「そなたが勇者たちを脅し操り聖女を自らの手に入れるために誘拐させた黒幕である……とな。実際に見て話をしてみればそなたはそのようなことを考える人物ではないと余は感じたぞ」
「それは……まぁ……」
そんな話になってたの!?
「故に同盟を結び教国に存在する偽の勇者を共に討とう、と打診を受けた。断っておいて正解だったの」
「お……おお?」
言葉も出ない……まさか一歩間違えたら王国と帝国両方から狙われてただなんて……
「わざわざ自ら聖女を返還しに来るとはの、その実力、人柄を鑑みて余はそなたと敵対するつもりは無い」
「あ……ありがとうございます」
「ふ、余計なことまで話してしまった、許せよ」
「そのようなことは……」
どうしたらいいんだこれ?
「ふふ……余はそなたを気に入った。一度だけ問おうか。教国を離れ余に、帝国に使える気はあるか?」
「申し訳のない事でごさいます。私は私を受け入れてくれた教国に恩義があります。その恩義を裏切ることは出来ません」
「で、あるか。残念ではあるが仕方ないの。しかし余がそなたを気に入ったことに変わりは無い。陛下などと堅苦しい呼び方ではなくゲオルグと呼ぶことを許可しよう」
「そんな……恐れ多いことでございます」
何言ってんの? 何言ってんの!?
「皇帝権限で敬語禁止としてやろうかの?」
「そんな……お戯れを」
勘弁してください。
「冗談だ。まぁ何か困ったことがあれば余に頼るといい。余に出来ることなら力になろう。その代わり、また余の話し相手になって欲しい」
「私のような粗忽者でよろしければ」
「そなたがよい。ではやらねばならぬ仕事があるでな、そろそろ失礼しようかの」
「はっ! 此の度は私のために時間を割いて頂き誠にありがとうございます」
「よい。余もそなたと話すのは楽しい。ではまたの」
皇帝陛下が執務に戻られたので俺も自室に与えられた部屋へと戻る。
「……って言うことがあったんだ」
「それは……なんとも……」
「はぁ……皇帝陛下に気に入られたのね……」
部屋に戻るとまだよめーずは部屋で待っていたので先程の皇帝陛下とのやり取りを伝えることにした。
「すごいですね」
「かっこいいッス!」
「はぁ……憧れちゃいますわね……」
ソフィア、アンナ、ベラもなにかコソコソと話している。
かっこいい? 憧れ? 何の話だろ?
「そうですね。少し……妬いてしまいそうです」
「あら? いいじゃない、あたしたちはなし崩し的にって感じだったけど、サーシャちゃんはちゃんとプロポーズされたじゃない」
「それはそうですけど……」
あー……察した。
「なし崩し的になんて思わせていたなら申し訳無い……その……最初はアレだったけど今は……」
「はいストップ! それは今じゃないわよ」
「え?」
「ちゃんと2人きりの時に……ゆっくり聞かせてね?」
「ああ、分かったよ」
今度はちゃんと伝えないとな。
「自分もレオさんのこと大好きッスよー!」
「強く勇ましくそして優しい。レオ殿以上の旦那様は居ませんね」
「あ、あたしも好き……です。その、囚われの姫を助ける王子様みたいで……」
3人は何言ってるの……特にベラ……
アレか? 魔王城で助けた時のこと言ってるのか?
でもあの時意識無かったじゃん……
「ふふ……なんだか楽しそうですね」
「そうね。よし、今日は全員一緒に寝ましょうか!」
「リン!?」
お前が一番何言ってんの!?
「ちょっと狭いかもしれませんが……詰めれば大丈夫そうですね」
なんでサーシャも納得してるの!?
「自分、レオさんの隣がいいッス!」
「あ! ずるい! あたしも……!」
「私は……その……」
「はいはい! 場所は公平に……ジャンケンで決めるわよ!」
俺の隣で寝る権利を奪い合うよめーず女の戦いが勃発した。
「もうちょっとこう……そこッス、いい感じッス!」
「ではレオ様、おやすみなさい」
「あ、ああ……おやすみ……」
俺の右側には正妻の意地か最後まで勝ち抜いたサーシャ、左側にはアンナが寝転がった。
アンナは腕枕の細かい位置までリクエストしてくる。
当然右腕もサーシャが枕にしているので俺はもう身動きが取れない。
サーシャの隣にはベラ、アンナの隣にはソフィアも横になっている。
リンは一番外側だ。一番最初に負けていた。
「じゃあ消すわよー、おやすみなさい」
「「おやすみなさーい」」
両手が使えないので両隣のサーシャとアンナに布団を掛けてもらい目を閉じた。
ナ、ナニモシテナイヨ?
「ほう、聖女を欲するか」
褒美に聖女イリアーナが欲しいと頼むと、皇帝陛下は愉しそうに笑みを浮かべた。
「確か婚約者がおったの……その辺りの問題はどうなっておる?」
「本人と父ジェイドには話を通しております。明日の模擬戦、私が勝てば娘を貰い受けると」
「それで了承しておるのだな?」
「はい」
正確にはまだイリアーナの口からは聞いていない。
しかし外堀を埋めていたのはイリアーナだし、問題無いと信じている。
ジェイドとの話し合いの席にも居たのに口を出してこなかったし、普通によめーずと並んで座っていたしもう既成事実だろこれ。
「問題は相手の出方かの」
「そうですね……」
なんて言ったかな? ネリ……ネル……ねるねるねーるね?
「ネフェリム侯爵家か……武闘派の家だの」
「武闘派ですか」
あーそれそれ。
武闘派なのに婚約者を攫われて何もしなかったの?
「確か当主はレベル60を超える中位職だったかの? ジェイドを除けば帝国最強の戦士であるな」
「貴族なのに?」
「貴族なのに、だの。確か……ネフェリム家の男児は強くあれ……だったかの? 家訓のようだの」
皇帝陛下って配下の貴族家の家訓まで把握してるのか?
侯爵家だし重臣だからか。
「難しいですか?」
「ふむ……なにかネフェリム家に落ち度でもあればなんとかなるかの?」
落ち度か……
「ジェイド殿が言うには婚約者が攫われたにも関わらず何もしなかったと。さらにはあっさりと新しい婚約者探しをしていたと伺いましたが」
「ふむ……確かに聖女が誘拐された時も教国にて保護されている事を伝えた時も何も言ってこなかったの……」
これは……いけるか?
「皇帝陛下、帝国には決闘という文化があると聞き及んでおります」
「ネフェリム家に決闘を挑むと?」
「必要とあらば」
そう答えると、婚皇帝陛下は少し悩むような仕草を見せた。
あと一押しで行けそうだ。
「皇帝陛下、陛下は私が挙げた功績に対し聖女イリアーナを望むことに異論はお有りですか?」
「余個人としては無い」
「であれば後は私とネフェリム家の問題。私がネフェリム家を納得させれば問題はありませんね?」
「無いの」
よし。
そもそも政治的交渉とか出来ないんだから無理にやる必要は無いだろ。
武力を背景にしたっていいじゃない。勇者だもの。
「全く……英雄色を好むと言うが……そこまでして欲しいものなのかの?」
「私にとっては億の金貨より価値あるものです」
「あいわかった。明日の模擬戦にはネフェリム家の者も見学に来るだろう。その時に席を設けてやるからそこで話すが良い」
「ありがたき幸せ」
これで障害はネフェリム家のみ。白手袋用意しとこ……
「しかし王国から聞いていた話とかなり印象が違うの……やはり虚偽か」
「王国……ですか?」
なんだろ……玉座の間で剣聖の死体投げつけたことかな……
いや今やってることもそう大差ないと思うんだけど……
「そなたが勇者たちを脅し操り聖女を自らの手に入れるために誘拐させた黒幕である……とな。実際に見て話をしてみればそなたはそのようなことを考える人物ではないと余は感じたぞ」
「それは……まぁ……」
そんな話になってたの!?
「故に同盟を結び教国に存在する偽の勇者を共に討とう、と打診を受けた。断っておいて正解だったの」
「お……おお?」
言葉も出ない……まさか一歩間違えたら王国と帝国両方から狙われてただなんて……
「わざわざ自ら聖女を返還しに来るとはの、その実力、人柄を鑑みて余はそなたと敵対するつもりは無い」
「あ……ありがとうございます」
「ふ、余計なことまで話してしまった、許せよ」
「そのようなことは……」
どうしたらいいんだこれ?
「ふふ……余はそなたを気に入った。一度だけ問おうか。教国を離れ余に、帝国に使える気はあるか?」
「申し訳のない事でごさいます。私は私を受け入れてくれた教国に恩義があります。その恩義を裏切ることは出来ません」
「で、あるか。残念ではあるが仕方ないの。しかし余がそなたを気に入ったことに変わりは無い。陛下などと堅苦しい呼び方ではなくゲオルグと呼ぶことを許可しよう」
「そんな……恐れ多いことでございます」
何言ってんの? 何言ってんの!?
「皇帝権限で敬語禁止としてやろうかの?」
「そんな……お戯れを」
勘弁してください。
「冗談だ。まぁ何か困ったことがあれば余に頼るといい。余に出来ることなら力になろう。その代わり、また余の話し相手になって欲しい」
「私のような粗忽者でよろしければ」
「そなたがよい。ではやらねばならぬ仕事があるでな、そろそろ失礼しようかの」
「はっ! 此の度は私のために時間を割いて頂き誠にありがとうございます」
「よい。余もそなたと話すのは楽しい。ではまたの」
皇帝陛下が執務に戻られたので俺も自室に与えられた部屋へと戻る。
「……って言うことがあったんだ」
「それは……なんとも……」
「はぁ……皇帝陛下に気に入られたのね……」
部屋に戻るとまだよめーずは部屋で待っていたので先程の皇帝陛下とのやり取りを伝えることにした。
「すごいですね」
「かっこいいッス!」
「はぁ……憧れちゃいますわね……」
ソフィア、アンナ、ベラもなにかコソコソと話している。
かっこいい? 憧れ? 何の話だろ?
「そうですね。少し……妬いてしまいそうです」
「あら? いいじゃない、あたしたちはなし崩し的にって感じだったけど、サーシャちゃんはちゃんとプロポーズされたじゃない」
「それはそうですけど……」
あー……察した。
「なし崩し的になんて思わせていたなら申し訳無い……その……最初はアレだったけど今は……」
「はいストップ! それは今じゃないわよ」
「え?」
「ちゃんと2人きりの時に……ゆっくり聞かせてね?」
「ああ、分かったよ」
今度はちゃんと伝えないとな。
「自分もレオさんのこと大好きッスよー!」
「強く勇ましくそして優しい。レオ殿以上の旦那様は居ませんね」
「あ、あたしも好き……です。その、囚われの姫を助ける王子様みたいで……」
3人は何言ってるの……特にベラ……
アレか? 魔王城で助けた時のこと言ってるのか?
でもあの時意識無かったじゃん……
「ふふ……なんだか楽しそうですね」
「そうね。よし、今日は全員一緒に寝ましょうか!」
「リン!?」
お前が一番何言ってんの!?
「ちょっと狭いかもしれませんが……詰めれば大丈夫そうですね」
なんでサーシャも納得してるの!?
「自分、レオさんの隣がいいッス!」
「あ! ずるい! あたしも……!」
「私は……その……」
「はいはい! 場所は公平に……ジャンケンで決めるわよ!」
俺の隣で寝る権利を奪い合うよめーず女の戦いが勃発した。
「もうちょっとこう……そこッス、いい感じッス!」
「ではレオ様、おやすみなさい」
「あ、ああ……おやすみ……」
俺の右側には正妻の意地か最後まで勝ち抜いたサーシャ、左側にはアンナが寝転がった。
アンナは腕枕の細かい位置までリクエストしてくる。
当然右腕もサーシャが枕にしているので俺はもう身動きが取れない。
サーシャの隣にはベラ、アンナの隣にはソフィアも横になっている。
リンは一番外側だ。一番最初に負けていた。
「じゃあ消すわよー、おやすみなさい」
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両手が使えないので両隣のサーシャとアンナに布団を掛けてもらい目を閉じた。
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