異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

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最終章……神の座を目指して

163話……帝都到着

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 ミュラー伯爵を仲間に加えて北へと進む。
 いきなり街道を逸れた時にはミュラー伯爵も驚いていたが揺れることもなくただ真っ直ぐ進むウルトに感動していた。

「これは素晴らしい……まるで風になったような気分だ!」

 絶賛である。

 ウルトに乗るまではイリアーナのことをチラチラと気にしていたのにウルトに乗り込み走り出すとイリアーナのことなんて気にもとめず外の景色を眺めていた。

 しばらく進み日が落ちる。
 停車して寝てもいいのだが、せっかくなので移動しながら寝ることにする。
 何がせっかくなのかは分からない。

「ウルト、大きくなってくれ」
『かしこまりました』

 ググッとウルトが大きくなる。仕切りはまだ無い。

「これは……?」
「まずは夕食にしましょう」

 テーブルとイスを【無限積載】から取り出して夕食の準備をする。
 我が家の料理長、ベリルに大量に料理を作ってもらい保存しているのでそれを食べることにする。

「旅という概念が覆されそうだ……」

 この世界では有り得ない高速での移動、さらに車内で食事まで。
 馬車での旅では有り得ない光景にミュラー伯爵はさらに感動を深めたようだ。

 適当に取り出した食事を摂りミュラー伯爵と自分に浄化魔法を掛けて就寝準備を整える。
 ミュラー伯爵は流石に布団までは【アイテムボックス】に入れて無かったようなのでまだ使っていなかった新品の寝具を渡すことにする。

【無限積載】の中には使わないもの、使ってないもの大量に入っている。
 整理しないとと思いつつ放置してしまっている。
 そのうち整理しないとな……ほんとに……

「このまま雑魚寝するのかな?  私は気にしないが、流石に奥方殿たちと同じ部屋と言うのは……」
「ああ、大丈夫ですよ。仕切りますので御安心を」
「仕切る?  どうやって……」

 言葉で説明するより見せた方が早い。
 ウルトに指示を出して仕切りを生み出して個室を作る。

「おお……」

 いきなり現れた壁にミュラー伯爵は面食らっている。
 当然だ、これを見て面食らうなという方が酷というものだ。

「今居るここがリビングのようなものですね。お好きな部屋へどうぞ」
「凄いな……神器と言うのはなんでもありなのだろうか?」

 ウルトが特殊なだけだと思います。

 ミュラー伯爵は一番奥の個室を選び中に入る。

「寝るのには十分な広さですね」
「御手洗は行きたいと口に出して貰えればウルト……私の神器がその都度作りますので」

 作ると言っても垂れ流すための穴が出来るだけなんだけどね。

「至れり尽くせりですね……」
「まぁ……ではごゆるりと」

 ミュラー伯爵を中に残して部屋を出る。
 さて……俺は何処にしようかな?

 サーシャたちも順次部屋に入っていくので空いている部屋に入ろうと思い全員が部屋に入るのを待っていると、部屋数が足りないことに気が付いた。

「ウルト、1部屋足りないぞ」
『マスターはどなたかと御一緒されるかと……』

 しないよ?

 ミュラー伯爵やイリアーナも居るのに御一緒はしないよ?

「はいはい。いいからこっちに来なさい」
「ちょっと待ってよ!」

 俺とウルトの会話を聞いていたのであろう、リンが俺の腕を掴みとある部屋に押し込む。

「私と同室でよろしいのですか?」
「昨日はあたしが独り占めしちゃったからね、今日は正妻様の所で寝なさい」

 部屋に居たのはサーシャ、リンは俺を押し込んでから扉を閉めて自分の部屋へと戻って行った。

 なんだろう、俺の行動が俺以外の人の意思で決まっているような気しかしない。

 まぁそれでも特に異存がある訳でもない、サーシャと共に1晩を過ごして翌朝、朝食の準備の為に起きてウルトに到着予定を尋ねるとなんとあと3時間もしないうちに到着するそうだ。

「侯爵、おはようございます」
「伯爵、おはようございます。よく眠れましたか?」
「はい、おかげさまで」

 ミュラー伯爵も起きてきた。
 顔色はいい、言葉通りしっかり眠れたのだろう。

「どうやらあと3時間もしないうちに到着するそうで……とりあえず朝食をどうぞ」
「あと3時間……ですか!?」
「早いですよねぇ……」
「いや……早いなんてものじゃ……」

 とりあえず朝食を取り出してミュラー伯爵にも勧める。
 困惑しつつもお礼を言って受け取ってくれた。

 しかし走り続けて丸1日で着くかなと思っていたが1日かからなかったな……

 朝食と片付けを終えるとあとはやることは無い。
 よめーずwithイリアーナは固まっておしゃべりに興じているので俺はミュラー伯爵と会話をして時間を潰す。

「それで勇者とはどのような者たちだったのですか?」
「勇者ですか……見た目は清廉潔白で強そうな空気は纏っていましたが……完全に見掛け倒しでしたね……」
「勇者が見掛け倒し……」

 そういう話が好きなのかミュラー伯爵は勇者に関しての質問が多かった。
 でも話せば話すほどなんとも言えない表情になって行くのでなんだか心苦しい。
 かと言って嘘つく訳にも行かないし……

「そうだ、勇者たちの神器見てみます?」
「あるのですか!?」

 ミュラー伯爵のテンションの低さに何故か申し訳なくなったのでそんな提案をしてみると、思った通り食いついてきた。

「これが勇者の聖剣で、これが剣聖の魔剣で……」

【聖剣召喚】や【魔剣】召喚などを使って次々と勇者装備セットを喚び出していく。

 剣聖の魔剣を除き未だ戦闘で使っていない。そのうち使ってみようかな……

「凄まじい力を感じますが……侯爵はこれらを持つ相手に単身で勝利したのですよね?」
「そうですが……奴ら戦意を喪失していましたから……」

 一番に立ち上がるべき勇者が最初に腰を抜かしてたからな……
 失禁までされて流石にどうしたものかと思ったね。

 そんな話をしていると帝都を囲う外壁が見えてきた。

「おっと、見えてきましたね……あちらに貴族用の通用門がありますので」

 そこからはミュラー伯爵の案内で進み貴族用の通用門という門に到着、門の前で全員で降りて受付をする。

 門番とのやり取りは全てミュラー伯爵が行ってくれたので俺たちは身分証を見せるだけで通ることが出来た。

 ミュラー伯爵が居なければあちらの人が沢山並んでいる門から入らなければならなかったと考えると同行してくれたことに感謝しかない。

「では行きましょうか……謁見の手続きが済むまではうちの屋敷を使ってください」

 門で馬車を用意してもらい貴族街にあるミュラー伯爵屋敷へと案内された。

 数日中には謁見が叶うだろうとのことでそれまで自由に使って構わないと言われた。

「では使いの者を出しますので。謁見までは我が家と思って寛いでください」

 そうして俺たち全員に客間が割り振られた。
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