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第6章……復讐の勇者編
148話……プロポーズ
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ウルトの予定通り3時間弱でアルマン教国聖都が見えてきた。
ここから見える景色に変わりはなく平和そのものに見えた。
「帰ってきたわね」
「ほんの数日のはずなんですが、何だかとても久しぶりに思えますね……」
サーシャとリンは感慨深そうに話している。
速度を弛めて正門に近付いて行くと門から見えたのはたくさんの人。
俺たちが近付くと人々はこちらを指指したり両手を上げて万歳のようにしたりと大歓迎ムードだ。
「あれは一体……」
「もしかして……勇者様を待っているのでしょうか?」
ベラとイリアーナはまたヒソヒソしている。それ好きだね……
「ウルト、外部音声よろしく」
『かしこまりました』
ウルトに頼みみんなの声を聞いてみるとやはり俺たちを称える大歓声が聞こえてきた。
「クリード、あそこにソフィアとアンナが居るわよ」
「お父様とお母様まで!」
リンの指差した場所を見るとソフィアとアンナがこちらに向かって大きく手を振っていた。
そのすぐ後ろには兵士に護衛されているアンドレイさんの姿も見えた。
「どうして私たちが戻ってくることを知っているのでしょう?」
「ああ、俺がさっき【思念共有】のスキルを使ってソフィアたちに連絡したからね。まさかこんな大勢の人が集まるとは……」
今から帰るよくらいの軽い気持ちでの連絡だったのに大事になってしまった。
ソフィアとアンナ、サーシャやリンの家族に無事戻ったことを伝えてそれから謁見を頼もうかと思ってたんだけどな……甘かったか。
門の前でウルトから降りて徒歩で街に入る。
「おかえりサーシャ、クリードくん。無事で良かった……」
「お父様、ちょっと……」
アンドレイさんは一目散にサーシャに駆け寄り抱きしめる。
サーシャも言葉では拒絶しているが無理に引き剥がそうとはしていない。
父娘の再会を眺めているとアンドレイさんはサーシャを離して俺の方へとやって来る。
「クリードくん、ありがとう! サーシャを助けてくれて本当にありがとう!」
俺の手を取り何度もお礼を言う。
この人一応公爵だしすごく偉い人なはずなんだけどやっぱり人の親なんだな……
「ライノス公爵……そろそろ」
そんなアンドレイさんの行動をソフィアが窘める。
まぁお礼も十分言われたし頃合でしょ……そろそろ大貴族らしい振る舞いをお願いしたい。めっちゃ人見てるし。
「そうだな……今後の流れを説明するためにも一度我が家に戻ろうかこちらへ」
貴族らしい風格というか堂々とした態度で俺たちを案内し始めた。
アンドレイさんたちと共に大歓声に迎えられながら大通りを進むと豪奢な馬車が待っていたのでそれに乗り込む。
「クリード殿、リン殿、お疲れ様でした。サーシャ様もご無事で何よりです」
「でもなんスかあれ? いきなり頭の中にクリードさんの声が聞こえたッスよ?」
「ああ、【思念共有】ってスキルでね、なんか手に入ったから使ってみたんだ。迷宮攻略してるって連絡もしたんだけどそれも聞こえてた?」
連絡可能距離を調べたくて送ったんだよな。
ソフィアたちは聞こえていたと頷いた。
「いくらこっちから話しかけても返事来ないから無視されてるのかなって思ってたッス!」
「クリード殿は私たちの体だけが目当てだったのかと……」
ソフィアが顔を押えてオヨヨ……と嘘泣きをするがお前そんなキャラじゃないだろ……
それやるならアンナだろ……ソフィアがやるとガチっぽく聞こえるんだよ……
「ところでそちらのお嬢さん方はどなたかな?」
「こちらは私と一緒に囚われていた王国の聖女ベラさんと帝国の聖女イリアーナさんです」
馬車に乗り込み人目が無くなったところでアンドレイさんが2人の聖女のことを聞いてきた。
隠す必要も無いのでサーシャが素直に応えるとアンドレイさんは何かを察したようだ。
「なるほど……それで2人は何故教国に?」
「それは後で説明します。それよりお父様、今後の予定とは?」
「夕方に国王陛下並びに王太子殿下、それと教皇猊下との謁見、その後晩餐会だな」
謁見……晩餐会……
俺はどんな顔して参加すればいいんだ……?
それに謁見に相応しい服とか持ってないぞ?
今から買いに行って間に合うか? それかもう明けの明星でいいかな? やけに神々しいし……
「クリードくんたちの礼服はこちらで用意してある、心配しなくていいよ」
謁見の服装について考えているとアンドレイさんから助け舟が出された。
そんなに顔に出ていたのかな……
「助かります……最悪この鎧なら見栄えはいいかと思ってました」
「素晴らしい鎧だね。でも流石に鎧姿は……ね」
ですよね。
しばらく馬車に揺られライノス邸に到着。
使用人に囲まれてあれやこれやと着飾ることになった。
「サーシャ、ちょっとだけいいかな?」
全ての支度を終えあとは出発を待つだけとなった頃、サーシャを見つけたので声をかける。
「どうされました? 良くお似合いですよ」
開口一番褒められた。
これは俺も褒め返すべきだな。
「ありがとう。サーシャもよく似合ってるな。普段の修道服姿もいいけどこっちは可憐って感じかな? ごめんねこういうの慣れてなくて」
喋ってて自分で何を言っているのか分からなくなってしまった。
女性を褒めた経験なんてそんなに無いからどう褒めていいのか咄嗟には思いつかない。
「ふふ、ありがとうございます。それで、なにか用事があったのでは?」
「そうだった、少し話せる? 出来れば2人で」
「分かりました。では私の私室でよろしいですか?」
サーシャと2人で部屋に入り対面に座る。
さて……どう切り出せばいいんだろう?
日本で恋人がいた事はあるけど学生時代のことだしプロポーズとかどう言えばいいのか分からない。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
どう切り出すか悩んでいると目の前に紅茶を差し出された。
一口飲んで口を湿られてとりあえず口を開く。
行き当たりばったり上等、喋ってるうちになんとかまとまるだろう。
「あのさ、今後の話なんだけど」
「はい。リンさんから聞いていますが、陛下に対してはその……思うところはあるでしょうが……」
ちゃうねん。
いやまぁそれもアレだけど今はちゃうねん。
「そこは弁えてるから……そうじゃなくてそういうのが終わったあとのこと」
「晩餐会のことですか? おそらくクリード様はたくさんの女性に求婚されると思いますがその……」
ちゃうね……いやちゃうくないな。
それよりなんだかモジモジしてるサーシャが服装も相まってとても可愛らしく見える。
「まぁそれも関係あるかな? その……求婚のことなんだけど」
「クリード様の立場や実力を考えますと15人でも多くは無いですが、あまり増やすのは……」
いや15人とか無理だから。もう手一杯だから。
「いや逆、もう増やしたくない……ってそうじゃなくてさ」
「はい?」
キョトンとした顔で聞き返される。
あれ? これ求婚されるとは思ってないやつ? フラれるやつ?
「その……俺はこれ以上増やしたいとかは全く思ってないんだけど……」
「はぁ……」
本気で分かってなさそうな顔がキツい。
「えっと……でも1人だけ増やしたいというか、いや、そんな言い方じゃダメか」
「イリアーナさんですか?」
だからちゃうねん。
「違うよ。俺が欲しいのはサーシャだ」
「え?」
え?
あれこれやらかした?
「いや、あの……だから……」
「いえ、あの……ちょっとした行き違いと言いますか……そんな顔しないで下さい」
自分でもわかるほど挙動不審だった。
サーシャが言葉と仕草で落ち着くよう伝えてくるので表面上だけでも落ち着いたフリをする。
「ウルト様の中でリンさんから私とクリード様が結婚するのは既定路線だと聞いていたので……まさかこんな求婚の申し込みをされるとは……」
だんだんと赤くなり声が小さくなっていく。
「えっと……」
リン……聞いてないぞ……いやサーシャとも結婚すればいいとは言ってたけども!
「だから……その……はい、不束者ですがよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げ了承してくれた。
「えーと……こちらこそ」
俺も同じように頭を下げる。
同時に顔を上げると真っ赤な顔のサーシャがそこに居た。
「はぁ……緊張した」
「もしかしてずっと私と結婚するか分からないままベラさんとのことも話していたのですか?」
「はい……」
サーシャに伝える前に増えるとか予想外過ぎたわ。
「まぁ……そういう事で。まずはアンドレイさんたちに報告した方がいいのかな?」
「既に知っていますよ? 知らなかったのはクリード様だけかと」
「なんでや……」
なんで本人置いて話が進むんや……
「それならまぁ……あ、聞いておきたいこともあったんだ」
それから少しの間謁見の際のルールやマナーを教えてもらい出発までの時間を過ごした。
ここから見える景色に変わりはなく平和そのものに見えた。
「帰ってきたわね」
「ほんの数日のはずなんですが、何だかとても久しぶりに思えますね……」
サーシャとリンは感慨深そうに話している。
速度を弛めて正門に近付いて行くと門から見えたのはたくさんの人。
俺たちが近付くと人々はこちらを指指したり両手を上げて万歳のようにしたりと大歓迎ムードだ。
「あれは一体……」
「もしかして……勇者様を待っているのでしょうか?」
ベラとイリアーナはまたヒソヒソしている。それ好きだね……
「ウルト、外部音声よろしく」
『かしこまりました』
ウルトに頼みみんなの声を聞いてみるとやはり俺たちを称える大歓声が聞こえてきた。
「クリード、あそこにソフィアとアンナが居るわよ」
「お父様とお母様まで!」
リンの指差した場所を見るとソフィアとアンナがこちらに向かって大きく手を振っていた。
そのすぐ後ろには兵士に護衛されているアンドレイさんの姿も見えた。
「どうして私たちが戻ってくることを知っているのでしょう?」
「ああ、俺がさっき【思念共有】のスキルを使ってソフィアたちに連絡したからね。まさかこんな大勢の人が集まるとは……」
今から帰るよくらいの軽い気持ちでの連絡だったのに大事になってしまった。
ソフィアとアンナ、サーシャやリンの家族に無事戻ったことを伝えてそれから謁見を頼もうかと思ってたんだけどな……甘かったか。
門の前でウルトから降りて徒歩で街に入る。
「おかえりサーシャ、クリードくん。無事で良かった……」
「お父様、ちょっと……」
アンドレイさんは一目散にサーシャに駆け寄り抱きしめる。
サーシャも言葉では拒絶しているが無理に引き剥がそうとはしていない。
父娘の再会を眺めているとアンドレイさんはサーシャを離して俺の方へとやって来る。
「クリードくん、ありがとう! サーシャを助けてくれて本当にありがとう!」
俺の手を取り何度もお礼を言う。
この人一応公爵だしすごく偉い人なはずなんだけどやっぱり人の親なんだな……
「ライノス公爵……そろそろ」
そんなアンドレイさんの行動をソフィアが窘める。
まぁお礼も十分言われたし頃合でしょ……そろそろ大貴族らしい振る舞いをお願いしたい。めっちゃ人見てるし。
「そうだな……今後の流れを説明するためにも一度我が家に戻ろうかこちらへ」
貴族らしい風格というか堂々とした態度で俺たちを案内し始めた。
アンドレイさんたちと共に大歓声に迎えられながら大通りを進むと豪奢な馬車が待っていたのでそれに乗り込む。
「クリード殿、リン殿、お疲れ様でした。サーシャ様もご無事で何よりです」
「でもなんスかあれ? いきなり頭の中にクリードさんの声が聞こえたッスよ?」
「ああ、【思念共有】ってスキルでね、なんか手に入ったから使ってみたんだ。迷宮攻略してるって連絡もしたんだけどそれも聞こえてた?」
連絡可能距離を調べたくて送ったんだよな。
ソフィアたちは聞こえていたと頷いた。
「いくらこっちから話しかけても返事来ないから無視されてるのかなって思ってたッス!」
「クリード殿は私たちの体だけが目当てだったのかと……」
ソフィアが顔を押えてオヨヨ……と嘘泣きをするがお前そんなキャラじゃないだろ……
それやるならアンナだろ……ソフィアがやるとガチっぽく聞こえるんだよ……
「ところでそちらのお嬢さん方はどなたかな?」
「こちらは私と一緒に囚われていた王国の聖女ベラさんと帝国の聖女イリアーナさんです」
馬車に乗り込み人目が無くなったところでアンドレイさんが2人の聖女のことを聞いてきた。
隠す必要も無いのでサーシャが素直に応えるとアンドレイさんは何かを察したようだ。
「なるほど……それで2人は何故教国に?」
「それは後で説明します。それよりお父様、今後の予定とは?」
「夕方に国王陛下並びに王太子殿下、それと教皇猊下との謁見、その後晩餐会だな」
謁見……晩餐会……
俺はどんな顔して参加すればいいんだ……?
それに謁見に相応しい服とか持ってないぞ?
今から買いに行って間に合うか? それかもう明けの明星でいいかな? やけに神々しいし……
「クリードくんたちの礼服はこちらで用意してある、心配しなくていいよ」
謁見の服装について考えているとアンドレイさんから助け舟が出された。
そんなに顔に出ていたのかな……
「助かります……最悪この鎧なら見栄えはいいかと思ってました」
「素晴らしい鎧だね。でも流石に鎧姿は……ね」
ですよね。
しばらく馬車に揺られライノス邸に到着。
使用人に囲まれてあれやこれやと着飾ることになった。
「サーシャ、ちょっとだけいいかな?」
全ての支度を終えあとは出発を待つだけとなった頃、サーシャを見つけたので声をかける。
「どうされました? 良くお似合いですよ」
開口一番褒められた。
これは俺も褒め返すべきだな。
「ありがとう。サーシャもよく似合ってるな。普段の修道服姿もいいけどこっちは可憐って感じかな? ごめんねこういうの慣れてなくて」
喋ってて自分で何を言っているのか分からなくなってしまった。
女性を褒めた経験なんてそんなに無いからどう褒めていいのか咄嗟には思いつかない。
「ふふ、ありがとうございます。それで、なにか用事があったのでは?」
「そうだった、少し話せる? 出来れば2人で」
「分かりました。では私の私室でよろしいですか?」
サーシャと2人で部屋に入り対面に座る。
さて……どう切り出せばいいんだろう?
日本で恋人がいた事はあるけど学生時代のことだしプロポーズとかどう言えばいいのか分からない。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
どう切り出すか悩んでいると目の前に紅茶を差し出された。
一口飲んで口を湿られてとりあえず口を開く。
行き当たりばったり上等、喋ってるうちになんとかまとまるだろう。
「あのさ、今後の話なんだけど」
「はい。リンさんから聞いていますが、陛下に対してはその……思うところはあるでしょうが……」
ちゃうねん。
いやまぁそれもアレだけど今はちゃうねん。
「そこは弁えてるから……そうじゃなくてそういうのが終わったあとのこと」
「晩餐会のことですか? おそらくクリード様はたくさんの女性に求婚されると思いますがその……」
ちゃうね……いやちゃうくないな。
それよりなんだかモジモジしてるサーシャが服装も相まってとても可愛らしく見える。
「まぁそれも関係あるかな? その……求婚のことなんだけど」
「クリード様の立場や実力を考えますと15人でも多くは無いですが、あまり増やすのは……」
いや15人とか無理だから。もう手一杯だから。
「いや逆、もう増やしたくない……ってそうじゃなくてさ」
「はい?」
キョトンとした顔で聞き返される。
あれ? これ求婚されるとは思ってないやつ? フラれるやつ?
「その……俺はこれ以上増やしたいとかは全く思ってないんだけど……」
「はぁ……」
本気で分かってなさそうな顔がキツい。
「えっと……でも1人だけ増やしたいというか、いや、そんな言い方じゃダメか」
「イリアーナさんですか?」
だからちゃうねん。
「違うよ。俺が欲しいのはサーシャだ」
「え?」
え?
あれこれやらかした?
「いや、あの……だから……」
「いえ、あの……ちょっとした行き違いと言いますか……そんな顔しないで下さい」
自分でもわかるほど挙動不審だった。
サーシャが言葉と仕草で落ち着くよう伝えてくるので表面上だけでも落ち着いたフリをする。
「ウルト様の中でリンさんから私とクリード様が結婚するのは既定路線だと聞いていたので……まさかこんな求婚の申し込みをされるとは……」
だんだんと赤くなり声が小さくなっていく。
「えっと……」
リン……聞いてないぞ……いやサーシャとも結婚すればいいとは言ってたけども!
「だから……その……はい、不束者ですがよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げ了承してくれた。
「えーと……こちらこそ」
俺も同じように頭を下げる。
同時に顔を上げると真っ赤な顔のサーシャがそこに居た。
「はぁ……緊張した」
「もしかしてずっと私と結婚するか分からないままベラさんとのことも話していたのですか?」
「はい……」
サーシャに伝える前に増えるとか予想外過ぎたわ。
「まぁ……そういう事で。まずはアンドレイさんたちに報告した方がいいのかな?」
「既に知っていますよ? 知らなかったのはクリード様だけかと」
「なんでや……」
なんで本人置いて話が進むんや……
「それならまぁ……あ、聞いておきたいこともあったんだ」
それから少しの間謁見の際のルールやマナーを教えてもらい出発までの時間を過ごした。
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