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第6章……復讐の勇者編

140話……復讐者

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 強欲の剣を鞘に戻して【痛覚倍増】の効果が付与された細剣を取り出して右手に握る。

「右腕と右足だったな?」

 あの時勇者に斬り落とされたことを思い出す。

「ひっ……やめて……死んじゃう……」

 この期に及んで命乞いとは……
 いっそ襲いかかって来た方が楽に死ねるかもしれないのに苦痛を味わいたいとは殊勝なことだ。

 剣を振るって勇者の右腕と右足を斬り飛ばす。

「ぎゃあああああああああァ"ァ"ァ"ァ"ァ"」

 痛みに耐えかねてゴロゴロと転げ回る。
 おいおい、そんな転がると余計血が流れるぞ?

 とりあえず勇者は放置、しばらくは死なないだろ。

 聖騎士の首と見つめあっている賢者に歩いて近付く。
 隣に立ってもまだ聖騎士の首を見つめている賢者の右肩に細剣を突き刺す。

「あっ!  ぎっ……!」

 勇者とは違い叫び声を耐えようとはするのか、勇者よりはるかに根性あるな。

「こ、この……!」

 顔を上げこちらを睨みつけてくる賢者、なにやら魔法を使おうとする魔力の流れを感じたのでとりあえず蹴り飛ばす。

「そうだ、これを使ってみるのも面白いかもな」

 蹴り飛ばされ蹲る賢者を見ながら思いついたスキルを試してみる。

【魔剣召喚】
 俺の大切な人を貫いた因縁の剣だがコイツらを絶望の底に叩き込むにはこれ程ちょうどいい武器も無いだろう。

「それは……愛子さんの!」

 俺の手に握られた黒い刀身の剣を見て賢者は目を見開く。

 この剣のもつ効果を知っているのかその体は微かに震えている。

 初めて使ったスキルだが、握った瞬間にこの剣の持つ効果が頭に浮かんでくる。

【不治】【毒攻撃】【身体能力向上】の3つか……

【毒攻撃】はスキルで持っているし【身体能力向上】は【身体強化(極)】の下位スキル……まぁ重ねがけ出来るみたいだし死にスキルでは無いか……

 それより期待出来るのは【不治】だ。
 ケイトかああなってしまったことでその能力は知っているがこれは今この場面で最高とも言える能力だろう。

 魔剣を見せつけるようにしながら賢者に近付いていく。

「や、やだ!  来るな来るな来るな!」

 咄嗟のことでイメージもまともに出来ていない小規模な魔法を飛ばしてくるが全て魔剣で叩き落とす。

 真横まで近付き魔剣を振り上げる。

「いやだ!  いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!」

 泣きながら首を横に振る賢者、目を合わせてにこりと微笑んでおく。

 斬られないと思って少し安心したのか震えが止まる。
 そのタイミングを見計らって……魔剣で賢者の腹を貫いた。

「ぎゃああああああああああああ!!!」

 気を弛めた瞬間の激痛、賢者は喉が張り裂けんばかりに絶叫する。とてもうるさい。

 ついでとばかりに突き刺したまま【精神攻撃】を発動、精神汚染で静かになればいいな……

「あ……ば……ばば……」

 目の光が消え口の端からヨダレを垂らし痙攣し始めた。
 うわぁ……効果ありすぎて気持ち悪い……

 若干引きながらも賢者の後ろ襟を掴んで引き摺り勇者の所に連れていく。

 勇者の隣に放り投げると転がり続けていた勇者とぶつかった。

「ひっ!  け、けんと!?」
「あぅ……あ……ばぁ……」

 目の焦点も合わず、口からヨダレと意味の無い声を漏らし続ける賢者を見て勇者はさらに青ざめる。

「げんどぉ……なおじで……」

 残った左手で賢者を揺すり話しかけているが賢者が反応することは無い。
【精神攻撃】えげつな……

「治してやろうか?」
「へ?」

 正直治せるかどうかは分からないけど多分出来るだろ。

「治してほしいか?」
「おね……おねがいじまず!  このままじゃ……しんじゃう……」

 床に頭を擦り付けて懇願してくる勇者に近付き優しく質問する。

「じゃあ賢者殺すけどいいよね?」
「……へぁ?」

 何をボケた顔をしてるのやら……今の俺の回復魔法の腕でちぎれた手足を治せるわけが無いだろうに……
 治すには賢者の能力を強欲の剣で奪わないと……ってそんな事こいつが知るわけないか。

「いい?」
「それで……治してくれるなら……」

 いいんだ……

「分かった、じゃあ……」

 強欲の剣で賢者の胸を貫く。

 《【魔杖召喚】を獲得、【魔法適性(全)】を獲得、【魔法効果増大(極)】を獲得、【魔法効果範囲拡大(極)】を獲得》

 《【魔力感知(上)】を獲得、統合進化【魔力感知(極)】を獲得》

 《職業【賢者】を獲得、副業に設定します》

「へぇ、結構……」
「ああああ……けんと、けんとぉ……」

 今度は賢者にすがりついて泣き始めた。
 お前が殺していいって言ったんだよ?

 勇者の腕と足を回収して切断面にくっつける。

「動くなよ?」

 回復魔法を発動させて勇者の傷を癒していく。
 しばらくすると傷口がくっついて元通り動かせるようになった。

「あ、ありが……」
「じゃあ続けようか。抗うならどうぞご自由に」

 立ち上がり勇者の顔面を蹴り飛ばす。
 鼻血を吹き出しながら「へぶぁ!」と情けない声を出して勇者は吹き飛んでいく。

 再び【痛覚倍増】の効果付きの細剣を取り出して勇者のくっついた右手の甲を貫いた。

「ぎゃああああ!!  やめて!  やめてぇ!」

 無言で引き抜いてもう一度突き刺す。今度は【腐食攻撃】を加えての攻撃。
 ブスっと突き刺すとその周辺が緑色に染まり出して悪臭を放ち始めた。

「あがっ!?  やめ、やめてぇぇえええ!!」

 刺した剣をグリグリとしてから引き抜く。
 次は【状態異常攻撃】を付与して右太ももの辺りを突き刺す。

 勇者は声にならない叫びを上げて必死に傷口を抑えている。

 泣くのはいいけど反撃して来ないの?

 それからも何度か刺してみたが泣き喚くばかりで反撃してくる気配は無かった。

 一度回復魔法で勇者の傷を癒してさらに突き刺していく。
 時折【魔剣召喚】で喚び出した魔剣でも攻撃を加える。

 この魔剣で斬り付けられると回復出来ないことはこいつも知っているようで魔剣での攻撃は必死で避けようとしている。
 もちろん回避なんて許さない。動きも遅いし見え見えなのだから外すわけも無い。

 回復不能になる魔剣で斬った場所に【痛覚倍増】の細剣を突き刺すと俺の鼓膜が破れるんじゃないかと言うほどの声を上げる。

 そんなことを死なないよう気をつけながら数度繰り返し、喉が裂けたのか大きな声を出さなくなった勇者の様子を観察する。

 蹲りずっと「やめて、助けて、死んじゃう」を繰り返していた。
 そろそろいいかな?  最初に殺した忍者の分までやっちゃった感じもあるし少し可哀想になって……いや別にならないな。

「で、死にたくないの?」
「うぅ……うぁ……」

 こっちを見ることもしない。それでも小さくコクコクと首を縦に振っている。こうなると哀れだな……
 やったの俺だけど。

 細剣と魔剣を片付けて強欲の剣を抜く。

「言い残したいことは?」
「呪ってやる……呪い殺してやる……」

 返事出来るじゃん。
 でも呪殺じゃなくて自分の手で俺を殺すべきだったね。

「じゃあな」

 目を逸らさないようしっかりと勇者を見つめながらその首目掛けて強欲の剣を振るった。

 《【聖剣召喚】を獲得、【限界突破】を獲得、【ブースト】を獲得、【回復力強化(大)】を獲得》

 《【身体強化(特)】を獲得、統合進化【身体強化(極)】を獲得》
 《直感強化(特)を獲得、統合進化【直感強化(極)】を獲得》
 《【知覚強化(特)】を獲得、統合進化【知覚強化(極)】を獲得》

 《職業【勇者】を獲得、副業に設定します》



読者様から頂いた魔剣のイラストです。
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