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第6章……復讐の勇者編

134話……少しの別れ

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 ルシフェルが話している途中だった気もするが俺たちは迷宮を脱出して入口前へと転移した。

「最後くらい聞いてやれば良かったのに」
『いいえ、あれは堕天使です。悪魔です。悪魔の戯言にマスターが耳を傾ける価値はありません』

 価値は無いって……マンモンの時はそんな事言ってなかっただろうに……

「まぁまぁ、出てきちゃったんだから気にしても仕方ないでしょ。とりあえずその鎧着てみてよ」

 それもそうだな、気にしてもどうにもならない。
 今からもう一度ルシフェルの居る最奥まで再攻略するのはちょっとね……

「先に【傲慢なる者の瞳】を試してみたいんだけど……」
『かしこまりました。誰を探しますか?』

 俺よりウルトが使う気満々だな……まぁ【万能感知】と組み合わせるとか言ってたし当然か。

「勇者……いや、先にサーシャがどこに囚われてるのか知りたいな」
『かしこまりました。少々時間がかかるかもしれませんのでその間に鎧の装備をしてみてください』
「わかった。リン手伝ってもらえる?」

 フルプレートとか着たこと無いからね……どうやって着るのかも分からない。

『マスター、その鎧は神器より格上の装備品、名前を呼んで装着したいと願えば装着出来るはずです』

 なにそれ超便利、

「えっと……【明けの明星】」

 俺が呼ぶと鎧は解けるように光の粒子となって俺の体を覆った。

「おお……」

 次の瞬間には粒子は鎧に変わり全身鎧が俺の体を包んでいた。

 着心地を確かめるために立ち上がって軽くストレッチをしてみるが驚いた。
 全身鎧を装備している感じが全くしないのだ。

 体の動きを全く阻害しない、重さを感じない、さらには金属の擦れ合う音もしない。

 本当に存在するのかと思い胸甲を叩いてみるとコンコンと金属らしい音が鳴る。
 不思議だ。

「似合うじゃない、かっこいいわよ。それで着心地はどう?」
「そうかな?  うん、着心地というか……着てる感じが一切しないな。重さも感じないし動きも全く阻害されないよ」

 説明するとへぇ……といった顔でウンウン頷いている。

「さて、サーシャの居場所はわかったかな?」
『はい。魔王城の地下に囚われている模様、おそらく睡眠状態です。部屋には複数の魔族の反応もあります』

 複数の魔族に囲まれて寝てるのか?

「世話係?」
「あとは自殺しないよう監視も兼ねてるんでしょうね……」

 そりゃそうか、魔族側からすればサーシャに、聖女に死なれるのが一番困るだろうし。

『両隣の部屋も同じような感じですので王国、帝国の聖女だと思われます』
「なるほどね……そこまでの経路は分かるのか?」
『もちろん把握済みです』

 さすがウルト、もう能力を使いこなしている。

「あれ?  でも悪魔の力は使えないんじゃなかったのか?」

【万能感知】を併せればみたいな事も言ってたから失念していた。

『はい、悪魔の力を直接行使することは出来ません。しかし私が今使っているのは悪魔の力ではなくマスターの力ですので問題ありません』

 屁理屈かよ。

「……まぁいいや、それで勇者は魔王城とやらに居るのか?」
『はい。4人纏まって同じ部屋に反応があります』

 ふむ……

「サーシャに危険は無さそうか?」
『健康状態に問題は無さそうです。すぐに命の危険は無いかと』
「分かった。ソイソスはどうだ?  また魔物に襲われてたりは?」
『散発的には。しかし問題は無さそうです。ディム様たちも元気そうです』
「教国は?」
『問題ありません。ソフィア様とアンナ様は教会内に居るようです』

 とりあえず安心か。

「ちなみに映像とかって見れるのか?」
『上空からの映像ならスマートフォン、タブレットに表示可能です。建物内は不可能です』
「不可能なのになんで分かるんだ?」
『上空からの視点を起点に【万能感知】を使用していますのでイメージ映像のようなものでしたら映せますが……』

 なるほど、併用ってこういうことか。

「見れなくて残念だったわね?」
「いや別に残念って程のことは……なんて顔してるの……」

 リンはニヤニヤしながら自分の体を隠すようなポーズをしている。もしかして……

「覗きになんか使わねぇよ!?」
「使えないじゃなくて?」
「出来たとしてもやらねーよ!」
「はいはい、分かってるから怒らないの」
「ぐぬぬ……」

 冗談とは分かっているが冗談でも覗き魔の称号だけは返しておきたい……

『マスターよろしいでしょうか?』
「ん?  なに?」

 どうやって言い返そうか考えているとウルトに声を掛けられた。
 なんだか毒気が抜かれたな……

『ここから西に800キロほどの地点に迷宮を発見しました。そこで最後のレベル上げをすることを進言致します』

 迷宮か……予想していた通り魔王領にも2つあったみたいだな……

「ちなみにここから魔王城までは?」
『北北西方向におよそ200キロです』

 魔王城は近いな……

「ステータスオープン」


 ◇◆

 名前……レオ・クリイド  レベル92
 職業……(本業)トラック運転手(副業)剣鬼
 年齢……21
 生命力……A+  魔力……A  筋力………S  素早さ……A  耐久力……S  魔攻……B  魔防……A+

 スキル

(身体能力系)
【身体強化(特)】【タイタン】【疾風迅雷】【要塞】【瞬間加速・停止】【絶倫(強)】【生命力強化(大)】【俊敏】

(魔法系)
【魔法適正(聖属性を除く全て)】【魔力吸収】【トリプルマジック】【魔法威力上昇(極)】【合成魔法】【魔力極大ブースト】

(感覚系)
【気配察知(極)】【直感強化(特)】【知覚強化(大)】【魔力視】【弱点看破(特)】【見切り(特)】【魔力感知】

(耐性)
【痛覚鈍化】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】【状態異常耐性(強)】【毒無効】

(特殊)
【トラック召喚】【トラック完全支配】【無限積載】
【剣術(神)】【斧術(特)】【槍術(上)】
【魔力撃(極)】【天駆(上)】【アイテムボックス】【精神攻撃】【状態異常攻撃】【腐食攻撃】【毒攻撃】【闘気剣】【自己再生】【騎士の矜恃】【テイム(極)】【隠密】【衝撃緩和】【挑発】【攻撃反射】【捕食】【水中呼吸】【思考共有】【傲慢なる者の瞳】

 ◇◆

 レベル92か……ここまで来たらカンストさせてから挑むべきだろうな……

「よし、なら迷宮に……」

 いや、多分迷宮に現れる魔物を全て倒してもおそらく99には届かない。
 上がっても3か4、少し足りない……

「なら……」

 考え込んだ俺を見てなにか思ったのだろう、リンが話しかけてくる。

「迷宮にはあたしとウルトで行くわ。クリードはスキルで魔王城を監視しながら近くの魔物を倒して経験値稼ぎ、これでどう?」
「うーん……」

 別れて行動か……それ自体問題は無いけど……

「理由はちゃんとあるわよ。そもそもクリード、あなたは少しでも早く勇者と戦いたいんでしょ?」
「それは……」

 そうだ。1分でも1秒でも早く戦いたい気持ちはある。

「それを先延ばしにしてるのは確実に勝てる力を身に付けるためでしょ?」
「うん」

 だからレベルはカンストさせたい。

「だったらクリードは魔王城の近くにいて。あたしとウルトで西の迷宮を攻略する、それでも足りなければ……多分帝国の迷宮も遠くないと思うからそこに行くわ」
「なら俺も行けば良くない?」

 西の迷宮と帝国の迷宮に潜るのなら別行動する必要もないと思うんだけど?

「帝国の迷宮からここまで戻るのに半日はかかると思うわよ?  それなら……クリードの【トラック召喚】を使えば一瞬じゃない?」
「なるほど……時間はかなり短縮出来るか……」

 迷宮に行くメリットはスキルを得られることだが、正直これ以上あっても使いこなせる気はしない。
 最奥の悪魔にしてもあとは嫉妬、怠惰、暴食……どんなスキルか想像も出来ないな……

 でもこれは俺が行かなくともリンが獲得出来る、なら俺が行く必要は無い。

「ピンチになったらすぐに呼んでくれたらいいけど、勇者か魔王でも出てこない限りクリードなら問題無いでしょ?」
「それはまぁ……」

 確かに。

「そうだな……とりあえずそうしようか。もし何かあれば時間をかけてレベルを上げよう」

 方針は決まった。
 とりあえず魔王城の近くまで移動、そこで俺だけ降りて監視。もちろん勇者たちが出掛けるようなことがあれば強襲するつもりだ。


 魔王城を見下ろせる丘の上に到着した。

「じゃあクリード気を付けてね。もし勇者たちが現れたらすぐに【トラック召喚】で喚ぶのよ」
「分かってる。そっちも気をつけて、もし万が一危険だと思えば俺に言ってくれたら即座に喚び出すから」
「ええ、じゃあまたね」

 別れの挨拶を交わしてリンはウルトに乗り込んだ。

「ウルト、頼むな」
『お任せ下さい。リン様は、マスターの奥方様の快適と安全は私が保証します』
「はは、なんか久しぶりに聞いたな……じゃあ任せる」
『かしこまりました。ご武運を』

 そう言ってウルトは西に向かって走り出した。

 外から見るのは初めてだけどアイツあんな速かったんだな……
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