上 下
125 / 266
第5章……アルマン教国編

117話……ドラゴンゾンビ

しおりを挟む
 9階層、ここは異様なフロアだった。

 今までは1つの階層に出現した魔物は多くて数種類、階層によっては1種類のみだったのがこの階層には多種多様なアンデッドが出現した。

 ゾンビ系やスケルトン系、さらには死霊系、物理攻撃だけでなく魔法を使うアンデッドも現れ混沌としていた。

「これは……」
「凄いわね……」

 ウルトのおかげで進めているが大量のアンデッドに道を塞がれその後列から魔法が飛んでくる様はやはり下層は攻略させるつもりが無いのだと感じる。

「ウルト、スキル持ちは?」

 居たとして降りて戦えるかと言われると難しいとしか答えられないが一応聞いてみる。

『何体かはスキルを保有していますが肉体強化系の下位スキルです』
「なら必要無いか」

 この階層でのスキル集めは不要、そもそも不可能と結論付けて先を急ぐ。

「今までのボスはその階層に出現する魔物の上位種だったけど、これはどうなるのかしら?」
「どうだろうな……大群が待ち構えてるとか?」
「それならフロアと変わらないじゃない。なんか凄いのが居そうね」
「リバークもグリエルも凄かったさ」

 リバークはサイクロプス、グリエルは巨大ムカデ、どちらも普通に戦っても絶対勝てない気しかしない魔物だった。

『ボス部屋を発見しました』

 9階層に降りて2時間足らず、早くもボス部屋を発見した。

 俺の能力が向上したことでウルトの能力も向上、【万能感知】で感知できる範囲もかなり広がり半径5キロ圏内であれば感知可能となっているらしい。
 味方で良かったよ。

「……」

 ボス部屋入口の扉を開き中を見て俺とリンは言葉を失った。

『名称ドラゴンゾンビ、保有スキルは【状態異常攻撃】【腐食攻撃】【炎ブレス】【状態異常無効】です』

「ドラゴンか」
「ドラゴンね」

 目の前には巨大なドラゴン。
 全体的に腐っていて所々骨が見えているがドラゴンだ。

「ウルト、殺さず無力化出来るか?  スキルが欲しい」
『しかしマスター、相手はアンデッド。殺さずとは言いますが既に死んでいるのでは?』

 そこは突っ込むなよ……

「滅びないように……頼む」
『かしこまりました』

 ウルトは指示に従いドラゴンゾンビに突っ込んでいく。
 ドラゴンゾンビも迎撃の為その巨体を回転させて尻尾を薙ぎ払ってくる。

 ウルトと尻尾が接触、グリエル迷宮最深部での大悪魔との戦闘では中にも衝撃が届いたので身構えるが必要無かった。

 ウルトと触れた尻尾は触れた部分からちぎれ飛んでしまったのだ。

「え?」

 思わず気の抜けた声が出た。
 その声を拾ったウルトから説明が入る。

『マスターが強くなったため新たな能力【衝撃反射】を獲得しております。【衝撃力倍加】と合わせて使用すれば私に攻撃を仕掛けた相手の方が一方的にダメージを負います』

 それはずるい。

『さらに私の突進の衝撃はそのまま相手につたわりその衝撃も倍加、さらに【一点集中】の効果もありますので私に触れた部分には本来の衝撃の何十倍もの負荷がかかりますね』

 これもうウルトに勝てる存在って居ないのでは無かろうか?

 魔法攻撃は【魔力霧散】で無効化、物理攻撃は【衝撃反射】【衝撃力倍加】【一点集中】で攻撃した方が多大なダメージを受ける……
 魔王にも勝てそうだな。

 よし、魔王はウルトに任せて俺は勇者たちに集中しようか。

 考えている間にウルトはドラゴンゾンビを簡単に追い込みあとは俺がトドメを刺すだけの状態に追い込んでいた。

『マスター』
「了解」

 ウルトから降りて強欲の剣に光属性魔力を込めて【天翔閃】を放つ。

 光と化した斬撃は狙い違わずドラゴンゾンビの首を消滅させた。

 《【状態異常攻撃】を獲得しました。【腐食攻撃】を獲得しました。【魔法適正(火)】を獲得しました》

 順調に獲得したな。

 《【状態異常耐性】を獲得、統合進化【状態異常耐性(強)】を獲得しました》

 統合進化か……同じ名称のスキルを得ることで上位スキルに進化するのだろう。

 剣を収めてウルトに戻る。

「スキルは得られた?」
「うん、【状態異常攻撃】【腐食攻撃】【魔法適正(火)】を新しく獲得したのと【状態異常耐性】が【状態異常耐性(強)】に進化したよ」
「さすがドラゴンと言うべきか強欲の剣と言うべきか悩むところね」

 確かにね。

 ボス部屋を後にして安全地帯に入ったところでウルトから声を掛けられた。

『マスター、リン様、間もなく昼食時ですが如何されますか?』

 この後はおそらく大悪魔が待ち構えている。
 通路も短いので食べながら移動するほどの距離は無い。

「終わってから食べるよ。もし自我がある悪魔なら食事を共にしてもいいし……リンはそれでいい?」
「ええ、構わないわよ」
「そういうことで進んでくれ」
『かしこまりました』
「あ、でもその前に……」

 リンが何かに気付いたように声を上げた。

「どうしたの?」
「ステータスを確認しておきましょう。レベルもだけど、クリードのスキルがどれだけ増えてるか確認しておきたいの」

 なるほど、リンが寝ている間のことは口頭では伝えてるけど見た方がいいな。

「分かった。ステータスオープン」


 ◇◆

 名前……レオ・クリイド  レベル77
 職業……(本業)トラック運転手(副業)剣鬼
 年齢……21
 生命力……A+  魔力……A  筋力………S  素早さ……A  耐久力……S  魔攻……C  魔防……B

 スキル

(身体能力系)
【身体強化(特)】【タイタン】【疾風迅雷】【要塞】【瞬間加速・停止】【絶倫】【生命力強化】

(魔法系)
【魔法適正(雷、氷、水、風、光、音、闇、火)】【魔力吸収】

(感覚系)
【気配察知(特)】【直感強化(特)】【知覚強化(大)】【魔力視】【弱点看破(特)】【見切り(上)】

(耐性)
【痛覚鈍化】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】【状態異常耐性(強)】【毒無効】

(特殊)
【トラック召喚】【トラック完全支配】【無限積載】
【剣術(神)】【魔力撃(極)】【乾坤一擲】【天駆(上)】【アイテムボックス】【糸生成】【闘気剣】【精神攻撃】【状態異常攻撃】【腐食攻撃】【自己再生】

「レベルも結構上がってるし、スキルも増えてるわね……」
「あぁ、戦闘中に上手く使えるか少し不安なくらいだよ」

 パッシブスキルなら気にしなくてもいいけどアクティブスキルは使用するタイミングやらなんやらで使い慣れていないスキルはやはり使いづらい。

「それは慣れるしか無いわね……ん?」

 リンは何かに気付いたようだ。

「さぁ行こうか」
『かしこまりました』

 喋らせる間を与えずステータス表示を消してウルトに指示を出す。
 リンは何か言いたそうな顔をしていたが今は無視しよう、時間が解決してくれるはずだ。

 9階層の安全地帯を抜けるとやはりほかの迷宮と同じで長い下り階段となっていた。
 この階段も3度目、流石に慣れたので緊張も無く進んでいく。

 10階層に到着しやはり見覚えのある長く真っ直ぐな通路を進み俺たちは迷宮の最終地点、大悪魔の部屋へとたどり着いた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

幼馴染から奴隷のように扱われていた俺、誰でも奴隷にできる最強スキル<奴隷化>が覚醒! 勇者も魔王もみんな奴隷にして可愛がります

ねこ鍋
ファンタジー
光の勇者として幼い頃から横暴の限りを尽くしてきたエリー。荷物持ちの俺は奴隷のように扱われていたが、それでも彼女の力になれるのだからとガマンしてきた。しかしある日、エリーの気まぐれで俺は命を落としてしまう。 その後、勇者の力で復活させられたが、それを見ていた女神様がついに愛想を尽かし、エリーから勇者の資格を剥奪してしまった。 世界最強の勇者から、一転して世界最弱の無能冒険者に成り下がったエリー。このままでは死んでしまうと怯えるエリーに、俺はこう提案した。 「俺と奴隷契約を結ぶなら助けてやろう」 こうして横暴幼馴染を奴隷にした俺は、さらに<奴隷化>という伝説のスキルが発現していたことも発覚する。これは相手を屈服させれば勇者でも魔王でも奴隷にできる最強スキル。しかも奴隷と仲良くなるほど俺も奴隷も強くなるため、エリーを愛しまくっていたらエリーも俺が好きだと発覚した。 これは奴隷にした勇者を愛しまくり、やがて嫁にするまでの物語。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

処理中です...