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第5章……アルマン教国編

113話……情報

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 王の話した内容をまとめると、サーシャたちが出発して数日後から急に宰相の様子がおかしくなったそうだ。

 怪しいと思い王太子や騎士団長と共に問い詰めるとあっさり正体をバラして逆に脅しを掛けてきたそうだ。

「聖女が帰ってきたら指示に従え、従わなかった場合は国ごと滅ぼす。指示に従うのなら魔王様が世界征服を成した後も国として存続することを許してやる」と。

 王は悩んだが翌日先王と先王妃が亡くなった。

「こうはなりたくないだろう?」ということだった。

 逆らう気力を無くした王と王太子は魔族の指示に従うことにして聖女が戻ってくるのを待った。

 魔族からの情報で勇者は既に出発していることは分かっていたので初めは怪しまれないようにサーシャと俺を勇者に合流させるべきと主張。

 勇者が既に出発していることが別ルートからの情報で入ってきてからは合流させるべきとの主張は続けていたが声は小さくポーズだけの主張だったとのことだ。

 これは王太子、騎士団長も認めたのでおそらく間違いないだろう。
 あとはこの魔族を叩き起して真偽を確かめるだけだ。

 王の話を聞いたお偉方は絶句、どうすればいいのか分からないようだ。

「起きろ」

 気絶している魔族の腹を容赦なく蹴り飛ばす。

「ぐっ……」

 魔族はうめき声を上げながら目を覚ましこちらを睨みつけている。

「さて……お前の目的は?」

 王たちからは聞いた、あとはコイツから裏付けを取りたいところだ。

「話すと思うか?」
「それで許されるとでも?」

【無限積載】から【痛覚倍加】の効果が付与されているレイピアを取り出して魔族の右肩に突き付ける。

「そんなもので……」

 聞きたいこととは違うことを喋りそうだったのでレイピアを突き刺す。

「あがぁぁぁああ!」

 貫通した訳でもないのに絶叫、これは痛いんだろうな。

「質問に答えろ。刺されたいなら嘘をつこうが黙秘しようが好きにしろ。それで……目的は?」
「ぐっ……」

 ふむ、喋らないか……
 肩からレイピアを抜いて今度は地面に着いている左手を突き刺す。
 今度はちゃんと貫通するように力を込めて突く。

「ガアアアアア!!」

 再び絶叫。
 周りのお偉方がドン引きしているのが伝わってくるが関係ない。

 無言で引き抜いて今度は右手。
 力が入りすぎて刃の半ばまで突き刺さってしまった。
 床に穴が空いたけど気にしなくていいだろう。

「うぐぅぅ……せめて……せめて聞いてから刺せ!」
「うるさい黙れ。喋りたくなったら喋れ。それまでは……」

 わざと傷口が開くように無理やり引き抜く。
 魔族がさらに声を上げるが些細なことだ。

 次の狙いを右太ももに定めた時魔族は喋り始めた。

「せ、聖女を誘拐するためだ!」
「へぇ……誘拐してどうするのさ」

 刺さらないように気を付けながら魔族の右太ももを剣先で突く。

「やめ……新たな勇者を召喚させない為だ!」

 予想通りか……

「聖女は死ぬか純潔を失えば新たな聖女が生まれる、だから新たな聖女が生まれないようにするために誘拐してるんだ!」
「そのために教国に潜入して宰相に成り代わったと?」
「そ、そうだ」

 脂汗を滲ませ震えながら答える。
 おそらく嘘は無いだろう。

「王国と帝国の聖女は?」
「……王国の聖女は勇者たちが魔王様の領土に侵入した際に捕らえた。帝国の聖女はここに来る前に勇者たちが攫っている」

 つまりサーシャが最後か……
 当然か、勇者たちはウルトの存在を知っている。
 なら先にサーシャを攫った場合俺たちが帝国に先回りできる可能性がある以上帝国を先に済ませるのは道理か。

「それで?」
「3人の聖女は攫った、これで新たな勇者は召喚出来ない……」

 そんなことは分かっている。
 続きを促すように再び太ももを突くと慌てたように話し始めた。

「これで障害は無くなった!  これより魔王様は世界征服に乗り出す、人間よ覚悟しておけ!」

 魔族は叫びながら魔力を集め始めた。
 なにか魔法を使うつもりか……この場面なら自爆か?

「煩い」

 魔法が発動する前に右太ももを貫く。
 痛みに耐えかねてか集めた魔力が霧散していくのを俺の【魔力視】が捉えた。

「ぐぅぅぅうう!」

「さて……国王と王太子の発言に嘘はないと判断するが……」

 国王に視線をやると諦めたかのように目を伏せている。
 横にいる王太子は相変わらず青い顔で震えている。

「どうするかね?」

 まずこの魔族の首を刎ねるのは確定している。
 逃がすわけも無いしこれ以上痛みを与えてもスッキリしない。

 お偉方に視線をやるが誰とも目は合わない、全員から視線を逸らされた。

「斬るのかい?」

 いや、1人だけ逸らさなかった人がいた。
 アンドレイさんだ。

「自分や国を守るためとはいえ魔族に屈した。そのおかげでサーシャは攫われケイトは死んだ」

 許せるか?

「クリード……」

 リンが何か言いたげにこちらを見ている。
 顎をしゃくって言葉の続きを促す。

「お待ちいただきたい!」

 リンが口を開く前に割って入ってくる声があった。
 声のした方へ視線を向けると騎士団長が立ち上がりこちらを見ていた。
 邪魔するなら先に殺すぞ?

「陛下が魔族に屈する決断をしたのは私の力不足のためだ!  どうか処断するなら私にして頂きたい!」

 大した忠誠心だね。

「それで?  アンタの首を刎ねて王と王太子を許せと?」
「どうか……」

 深々と頭を下げる。
 ふむ……

「騎士団長、アンタ家族は?」
「む……妻と子供が居るが……」

 こういうの弱いんだよね……俺は誰かに忠誠を捧げるとか出来ない人間だから眩しく見える。
 王と王太子は脅されて仕方なく……だけどなんのお咎めなしでは許せない。

「2時間、2時間やるから別れを済ませて来い。2時間以内にアンタが戻って来れば王と王太子の首は我慢する」
「忝ない」

 騎士団長はもう一度頭を下げて退室して行った。
 大切な人がいきなり居なくなる……つい先日体験したことだ。
 自ら首を差し出すと言うのなら別れくらいは済まさせてやろう。

「よく我慢したわね」
「この2人は脅されて仕方なくやっただけ……頭では分かっててもどうしようも無かった。あの人が何も言わなかったら殺してたよ」

 事が起こったんだ、誰かが責任を取らなければならない。
 怒りに任せて王と王太子にその責任を取らせようとしていたが騎士団長が王と王太子のためにじ自分の首を差し出すと言うならそれで収めよう。

「それでお前は何をしている?」

 再び魔族が魔力を操作し始めたので左太ももを貫いて阻止、もうコイツに聞くことはないよな?

「リン、コイツに聞くことはあるか?」
「そうね……魔王は何時から攻めてくるのかしら?」
「……ここに攻め込んだ魔族や魔物なんてほんの一部だ、すぐにでも魔王様は動くはずだ」

 声が硬い、目が泳いだ。
 以上のことから嘘だと判断して脇腹を貫く。

「うぐぅぅ……」

 嘘をつくからこうなるんだよ。

「リン、多少の時間はあると思う」
「そうね、あまり余裕は無いけどすぐにでもってことは無さそうね……もういいわよ」

 これ以上引き出せる情報は無い。
 リンの目はそう言っていた。

「分かった」

【痛覚倍加】のレイピアを【無限積載】に戻して強欲の剣を取り出す。

「一思いに首を刎ねてやる。言い残すことはあるか?」
「ぐ……勇者も聖女も居ない人間なんぞに魔王様は負けぬ!  せいぜい首を洗って待っていろ!」

 言い終わると同時に魔族の首を刎ねる。

 《【魔法適性(闇)】を獲得しました》

 残念だけど勇者はここにいるよ。
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