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第4章……グリエル奪還編

89話……強欲の力

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 翌朝少し早めに起きて体を動かしておく。
 数日怠けただけであれだけ違和感があったんだ、しっかり動かしておかないと戦えなくなってしまう。
 そんなんじゃマンモンに合わせる顔が無くなるからね。

「クリード殿、おはようございます」
「おはようソフィア」

 素振りをしていると背後から声を掛けられた。
 ソフィアも手に槍を持っており俺と同じく訓練だというのがすぐに分かった。

「一戦お付き合い頂いても?」
「あぁ、全然いいよ」

 模擬戦の提案に反射的に返事をしたが武器どうしよう……

 ミスリルの剣使うわけにもいかないし鉄の剣はぶった斬られたし……
 ソフィアが握っているのは鉄の槍、木剣じゃあなぁ……
 って木剣もへし折れたんだっけ……

「いいのあるかな……」

 スマホを取りだして【無限積載】に積まれている物を検索する。
 えっと……アプリ開いたら武器を選んで、それから剣……いっぱいあるな……

『なにかお探しですか?』
「あぁ、訓練で使える剣探してるんだけど」
『でしたらこの辺りがちょうどいいかと』

 画面が切り替わり数本の剣が表示された。
 全てマンモンから譲り受けた所謂魔剣であり、その効果は……

「【硬化】に【状態保存】……こっちは【自動修復】か」

 その中からミスリルの剣に一番近い【自動修復】の魔法が付与された剣を取り出す。

 うん、これから訓練にはこれを使おう。

「あ、ソフィアにもいい感じの魔剣……魔槍って無いの?」
『今ソフィア様が握られている槍は私が選んで取り出したものです。効果は【不殺】です』

【不殺】?  どんな攻撃をしても相手は死なない?
 訓練用としてこれ以上無い武器なんじゃないのかな?

「まぁそういうことなら、じゃあソフィア、やろうか」
「よろしくお願いします」

 そう言って放たれた突きを紙一重で回避、こいつ【不殺】の武器持ってるからって本気で突いて来たな……

 ソフィアの攻撃を時に回避、時に受け流しカウンターを放ってみたり、たまに直撃を食らったりしながら訓練を続けること数十分、みんな起きてきてサーシャが朝食よ支度を始めたので訓練は終了とした。

 ちなみにいつの間にか少し離れた場所でアンナとケイトも訓練をしていた。
 夜はアンナと組んでやろうかな?

 全員で朝食を済ませて出発、順調に7階層も進みいざボス部屋、という時にケイトが声を上げた。

「ねぇ、敵が少数なら戦ってもいいかな?」
「いきなりどうしたの?」
「うん、強欲の剣の説明に斬った相手の能力を奪うってあったでしょ?  フライングビートルは何匹斬ってもなんの変化も無かったから強い魔物ならなにか変化あるのかなって思ってさ」
「なるほど……でもなんでいきなり?」
「いや、昨日も考えてたんだよ?  だけど……気持ち悪くて……」

 1階層が蛾、2階層は大きめのカブトムシ、3階層はトノサマバッタ、4階層はデカいテントウムシ、5階層はトンボ、6階層は蜂だったな……
 確かにデカい虫って相当気持ち悪いな……

「まぁ……とりあえず突入しようか」

 会話の間空気を読んでボス部屋の扉前で停止していたウルトに指示を出して扉を開いて中に入る。

「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!」

 中に入ってボスを見た瞬間ケイトが叫び出した。
 中に居たのはとてつもなく巨大な蜘蛛、そして見た目は同じだが人の顔くらいはありそうな小さな蜘蛛が部屋中に……

 これは……俺も無理だわ……

「ケイト……」
「ごめんなさい」

 素直に謝ったので勘弁しておこう、ウルト、殺っちゃって!

 すぐにウルトは走り出し小さな蜘蛛を踏み潰しながら疾走する。

「シャァァァアア!」

 蜘蛛を踏み潰しながら巨大蜘蛛に突進していると、巨大蜘蛛はこちらに向けて糸を吐き出して来た。

 ウルトは急旋回でこれを回避、たくさんの蜘蛛を踏み潰しながら更に加速して巨大蜘蛛の脇腹目掛け体当たり。

 スキル【衝撃力倍加】と【一点集中】が発動したのか巨大蜘蛛は中身を飛び散らせながら吹き飛んで行った。

 なんかまだピクピクしているので生きてるっぽい、ウルトは巨大蜘蛛を無視して小さな蜘蛛の殲滅を開始、瞬く間に小さな蜘蛛を全て踏み潰して残りはあの瀕死の巨大蜘蛛だけとなった。

『ケイト様、トドメを』
「ひえぇぇ……」

 巨大蜘蛛のすぐ近くで停車、ウルトはケイトにトドメを刺すよう進言するがケイトはプルプル震えていて降りる気配が無い。

「ケイトどうする?  やめとく?」

 全員の視線がケイトに集中、少しの間震えていたが覚悟を決めたのかケイトは立ち上がった。

「や、やるよ!  でも誰か……一緒に来てくれない?」

 1人で行くのは嫌なんだな……ケイトなみんなを見るがスーッと視線を逸らされている。

 仕方ないか……これは女の子にはキツすぎる……というかこの迷宮自体がキモすぎる。

「分かったよ、俺が一緒に行くから……」
「クリードくん!  ありがとう!」

 そこまで涙目になるならやらなければいいのに……

 ケイトと2人でウルトから降りて巨大蜘蛛に接近する。
 既に最後の一撃を放つ余裕すらないのか全く攻撃を仕掛けてくる気配は無い。

 それでも一応警戒して武器を構えながら近付くが、容易く頭の近くまで来ることが出来た。

「さ、はやく」
「う……うん!」

 ケイトは強欲の剣を上段に構えて魔力を纏わせる。

「はぁぁああ!【天翔閃】!」

 裂帛の気合で放たれた【天翔閃】は巨大蜘蛛の頭部を両断、巨大蜘蛛はビクンと一度大きく震えてから動かなくなった。

 ビクンとなった瞬間ケイトは「ひゃぁぁああ!」と悲鳴を上げて俺の背中に抱きついてきた。
 役得役得。

「あ、なんか頭の中に声が……【糸生成】?」

 どうやらスキルを得たようだ。

「うん、なんか魔力を消費してすごく切れにくい糸を作り出せるみたい」
「それって操ったりは出来るの?」
「分かんない、後で試してみるよ」

 ケイトは新しいスキルを得た、これが強欲の剣の力……

 この先も強そうな魔物が現れたらケイトを戦わせて見ようかな?
 まずは一撃与えればいいのかトドメを刺す必要があるのか試すところからかな?
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