上 下
61 / 266
第2章……迷宮都市編

56話……午後半休

しおりを挟む
 そろそろいい時間なので昼食を食べることにした。
 なんでギルドからの帰りに食べて帰らなかったのだろうか……

 今から改めて食べに出るのも面倒なので【無限積載】の中に積み込んでいるそのまま食べられるものをいくつか取り出してそれを昼食にする。

 また色々と買っておこう。

「そうだ、せっかく全員居るんだしパーティ名決めましょうか」
「パーティ名?  あぁ、そういえばギルドマスターが決めとけとか言ってたね」

 パーティ名か……そういうの考えるのは苦手だ。

「そういうわけでクリード、何か決めてちょうだい」
「え?  俺が?」
「当たり前でしょ?  リーダーなんだから」

 リーダーはまだリンだろ。

「まだリーダーはリンだしほかのパーティがどんな名前なのかも知らないから決めれるわけないだろ」
「それもそうね……1番有名なパーティは『竜翼の絆』ね」

 それは聞いたことある。竜騎士なんちゃらさんがリーダーのパーティだよね。

「他に有名なのは王国のプラチナパーティの『剣士の誇り』とか教国のプラチナパーティ『魔法使いの園』なんかが有名ね」

 剣士の誇りに魔法使いの園……

「剣士の誇りは中位職の剣闘士が2人いる近接特化のパーティで魔法使いの園も中位職の魔道士ティナが率いる魔法特化のパーティよ」

 仲悪そう。

「それってパーティ名って言うよりパーティの特徴じゃないの?」
「パーティの特徴がそのままパーティ名になることなんて珍しくないわよ?  分かりやすくていいじゃない」

 確かに分かりやすいけども!

「それなら俺らは『聖女様御一行』とかでいいんじゃない?」
「絶対嫌ですよ!」

 俺の提案に噛み付いたのはサーシャだった。

「なんで?  分かりやすいし俺らのパーティの特徴じゃん」
「かもしれませんけどなんで私なんですか!?」
「だって……ねぇ?」

 ソフィアとアンナに顔を向けると2人は頷いている。

「2人共なんで頷いてるんですか!?」
「いえ……」
「自分たちはサーシャ様の護衛ッスから間違ってはないかなぁと……」

 だよね?

「うー!  でも嫌です、聖女は使わない方向でお願いします!」

 そんなに嫌か……他にも聖女の剣とか考えてたんだけど聖女使用禁止されたら全滅じゃないか。

「クリード様の勇者やリンさんの大魔道士を使ったらいいじゃないですか……」
「そりゃダメだろ?  大魔道士はまぁいいとして俺の勇者は使ったらダメだろ」

 やんわりと追放されてるんだぞ?
 それに大魔道士を使うパーティ名とか大魔道士の下僕たちくらいしか思い付かないぞ?
 大魔道士リーダーじゃなくなるし下僕とか嫌だろ?

「なんか無いッスかねぇ」
「私は……すみません、こういうのは苦手です」

 ソフィアとアンナもコソコソと相談しているが期待は持てそうに無いな。
 リンは……ダメだ、ニヤニヤしてる。
 これは俺がまた変なパーティ名思いつくの楽しみにしてる顔だ……

 ほんとリンって自由だよな……

 ん?  自由?
 確かサーシャって最初の頃に教国には戻りたくないとか俺と一緒なら自由に旅ができるとか言ってたような……
 だったら俺はサーシャにとっての羽?  いや羽と言うより……

「自由の翼?」

 声に出ちゃった……

 俺の声に反応して全員こっち見てる……こっち見んな!

「自由の翼?  クリードにしてはいいじゃない。それでなにか由来みたいなのはあるの?」
「自由の翼!  私はいいと思いますよ!」

 あれ案外高評価なの?

「リンがニヤニヤしてるの見てこいつ自由人だなーと思ってたらふとサーシャが言ってたこと思い出してさ」
「私が言っていたことですか?」
「うん。パーティ組む時かな?  教国に戻りたくない、俺と一緒なら自由に旅ができるみたいなこと言ってたろ?」

 サーシャは少し昔を思い出すように視線を動かしてから頷いた。

「はい、確かに言いましたね」
「うん、だから俺はサーシャにとって翼になれたのかなって思ってたらつい口から漏れてたみたい」

 俺何言ってるんだろうね?  自分で言っててよく分からないよ。

「なるほど、気に入りました!  パーティ名は自由の翼がいいです!」
「私もいいと思います」
「自分もッス!」

 サーシャ、ソフィア、アンナは賛成か、ならリンは?

「いいと思うわよ」

 俺がリンの方を見ると目を合わせて頷いてきた。
 これで満場一致、俺たちのパーティ名は『自由の翼』に決定した。

「それで今日はどうするの?  また迷宮?」
「いや、今日はやめとくよ。俺も少しこの街の散策でもしてみようかな」
「良いですね。私もご一緒してもよろしいですか?」

 俺が街ブラするつもりと答えるとサーシャが一緒に行きたいと言い出した。
 断る理由もないのでもちろんと頷く。

「では自分も」
「たまにはあたしも行こうかしら」

 アンナとリンも来るようだ。あれ?ソフィアは?

「私は残ります。この後ケイト殿やディム殿が来られるかもしれませんし1人は残った方がいいかと思います」

 ふーむ、それも一理あるか?

「わかりました、じゃあソフィアは留守をお願いしますね」
「かしこまりました」

 サーシャが認めたので口を出す必要は無いな。

 4人で街に繰り出して散策、先日色々見て回っていたサーシャとアンナに案内してもらいながら街並みや店の品揃えを眺める。

 見たのことの無い道具を見かける度つい衝動買いしそうになるのを3人に止められながらも楽しい時間を過ごした。

 ちなみに気になるものはたくさんあったがそのほとんどが説明を聞いて興味をなくしたか興味はあったが止められたかで買えていない。
 許可が出たのははほとんどが食べ物だ。

 気の向くままに色々買って【無限積載】に放り込んでいる。
 食べてみたいけど夕食が食べれなくなるからね。

 空もいい具合に茜色に染まってきたので宿に戻る。
 今日はいい休日だった……

「お帰りなさいませ」

 部屋に戻るとソフィアが出迎えてくれた。

「1時間ほど前にディム殿が来られました。パーティ同士での夕食の誘いでしたがどうなさいますか?」

 あぁ、来たんだ。
 ソフィアに残ってもらったのは正解だったな。

「ケイトさんのお話ですかね?」
「クリードどうする?  断る理由は無いと思うけど」
「無いな。せっかくの誘いだし受けようか。返事も気になるしね」
「ではその旨伝えて来ます」

 わざわざメンバー全員呼ぶくらいだ、あっちのパーティでも何らかの結論が出たのは間違いないだろう。

「戻りました。皆さん1階でお待ちです」

 今からなの?  待ち合わせとばかりおもってたよ。

 ソフィアに連れられて1階に降りるとそこにはケイトたち4人が待っていた。
 あれ?  4人?
 えーと、ハンスとミナが今日も居ないのか。

「お待たせ」
「待ってないよ、それじゃあ行こうか」

 4人が歩き出したので行く店は決まっているのだろう。
 俺たちは大人しく着いて行き10分もしないうちにとある店に到着した。

「ここだよ」

 ケイトの先導で中に入る。
 声を掛けてきた店員に一言二言伝えると俺たちほ奥の個室に案内された。

「早かったね」

 個室の中にはハンスとミナの姿があった。
 先行して席を確保していたのか。

「じゃあとりあえず注文を……」

 適当に注文を入れてまず飲み物が届いた。
 全員の前にグラスが行き渡ったことをしっかり確認してケイトが口を開いた、

「まずは急に誘っちゃってごめんね。どうしても全員で話したいことがあったんだ」

 ケイトのパーティメンバーの顔が引き締まる。
 これは重大発表の時の顔だな。間違いない。

「僕たちはパーティを解散することにしたんだ。それに伴ってって言い方もおかしいんだけど……」

 ケイトは一度言葉を切って大きく深呼吸をした。

「僕を君たちのパーティに入れて欲しい」

 ケイトは立ち上がって深く頭を下げた。

「俺たちからも頼みたい。どうかケイトをそちらのパーティに入れてやって欲しい」

 ディムたちも立ち上がり並んで俺たちに向かって深々と頭を下げたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。 このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。 しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。 地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。 今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

処理中です...