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第2章……迷宮都市編

38話……対決オークキング

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 朝、揃って朝食を摂る。

「ボス戦なんだけど、オークの大群はあたしに任せて貰って大丈夫よ。クリードとソフィアはできるだけ早くキングとハイオークを倒して援護に来て頂戴」

 リンのこの発言から朝の談笑が一気に作戦会議へと姿を変えた。

「任せるのはいいけど大丈夫?  ケイトの話だと相当数居るみたいだけど」
「まぁそこは魔法使いの腕の見せ所ね、たまには良いとこ見せないと」

 いい所ね、普段からしっかり戦況判断してるし、冷静にリーダーシップ取ってるしリンのかっこいい所は結構見てる気がするけどな。

「では私がハイオークを担当します。すぐに倒してクリード殿の援護、2人でキングを倒してオーク殲滅に向かいます」
「頼むわね。クリードとソフィアなら大丈夫だと思うけどくれぐれも油断しないでね」
「分かったよ」

 結果的にやることは今までの階層と変わらない。
 ただ相手のレベルはこれまでになく高そうだから気を抜くなんてことは出来ない。

「それじゃその方向で行きましょう。どれだけオークが居るのかも見て見ないと分からないしね」
「そうだね、まぁ行ってみて無理そうなら撤退すればいいしあまり難しく考えないように行こう」

 とりあえずの方針が決まったので出発することにする。

「ウルト、周囲に魔物は?」
「ここから扉までに魔物は居ません」

 安全を確認して全員でウルトから降りて扉へ向かう。

「さぁ、行くわよ!」

 リンの号令で扉を開いて中に入る。

 中には情報通りにオークの大群。
 奥にはハイオーク2匹と一際大きい金色の体毛を生やしたオークが鎮座している。

「あれがオークキングね……思ったよりオークも多いわね」
『オークの数は215です』

 ウルトが正確な数を教えてくれるが215は多すぎだろ……
 これだけ広い部屋なのに圧迫感あるぞ?  それに倒したら倒したで死体が邪魔になりそうだな。

「ウルト、死んだオークは片っ端から回収頼むよ」
『かしこまりました。お任せ下さい』

 死体踏んずけたり躓いたりして体勢崩すのは危険だからね。

「それじゃやるわよ!」

 リンは杖を高く掲げて魔法を使う。
 属性は……風だね。
 今まで見た中で1番魔力を込めてるのが何となくわかる。

「行くわよ!」

 杖を振り下ろすと無数の風の刃が放出、次々とオークを斬り裂いていく。

「もう1発!」

 いつの間に魔力を溜めたのか次は火球の雨を降らせる。
 先程の風魔法の効果もまだ残っているようで着弾した火球は風に煽られて勢いを増していく。

「じゃあクリード、ソフィアお願いね。アンナは抜けてきたオークが居たら任せるわ」
「了解ッス!」

 これがリンの本気か……凄まじい魔法だな……

「よし、行くぞ!」
「はっ!」

 ソフィアに合図して駆け出す。狙いはもちろん奥にいるオークキングだ。

 オークたちは炎から逃げるのに必死で俺とソフィアには目もくれない。これなら邪魔されずに戦えそうだ。

 逃げ惑うオーク共を無視して奥へ、すると武器を構えたハイオーク2匹が前に出てきた。

「クリード殿、そのまま!」
「任せた!」

 2匹の間を駆け抜ける。
 振り返って追ってこようとしたハイオークだが、後ろから迫ってきたソフィアに気付いたようでこちらから意識が逸れた。

 俺は振り返らずにオークキングに肉薄、そのままの勢いで駆け抜けながら膝に一撃、でかいから足元から崩していこう。

「ブモォォオオオ!!」

 結構な勢いで斬りつけたが浅い、ハイオークとは比べ物にならないほど皮膚が硬いようだ。

 オークキングは駆け抜けた俺を追うように振り返るが遅い、俺は既に方向を変えて駆け出している。

「【剛腕】!」

 反対側の足に攻撃、先程より勢いは無いが【剛腕】を使い筋力を上げての攻撃。

「ガァァアアア!!」

 先程より深く斬り裂いたが膝を付かせるには至らず、オークキングは大声を上げながら両腕を振り回してきたのでバックステップで躱す。

 オークキングが腕をおろすまで待ってから背後を取るように移動、狙いはアキレス腱だ。

【瞬間加速】も使いつつフェイントを織りまぜオークキングの背後へ、振り返る間も与えず【剛腕】を使い右足のアキレス腱を斬り裂いた。

「グォォオオ!!」

 これはかなり効いたのかオークキングは膝を着く。
 これなら振り返って俺に攻撃なんて出来ないだろ。
 横に移動して左足のアキレス腱も断つ、これでオークキングは立ち上がれまい。

 痛みに悶絶している隙に四つん這いになっているオークキングの横へ回る。
 今なら首が狙えそうだ。

【剛腕】を発動させて首を断とうと攻撃を仕掛けるがオークキングは諦めていないようでその太い腕を振るってきた。

「うぉおお!!」

 動けないと思っていたオークキングの反撃、回避は……間に合わない!

 直撃は流石に喰らいたくないので咄嗟に剣を盾替わりにオークキングの拳を受け止める。

「クリード殿!」

 既にハイオーク1匹を倒し残った1匹と戦っていたソフィアの悲痛な叫びが聞こえた。

 結構吹き飛ばされたが何とか空中で体勢を立て直して足から着地。

「ビックリした……てかオークキングの攻撃受けてノーダメとか俺の耐久力と作業服の防御力どうなってるの……って剣が!」
「クリード様!  お怪我は!?」

 俺が己の防御力に感心しつつ剣がひん曲がってしまったことに呆然としているとダメージを受けたと思ったのかサーシャが大声で叫んだ。

「大丈夫!  ちょっとビックリしただけだから!  ウルト!」
『どうぞ』

 そう返事を返して再びオークキングに向かって走り出す。
 途中ウルトから予備として預けておいた鉄の剣を受け取るのも忘れない。

「クリード殿、大丈夫なのですか?」

 俺が呆然としている間にソフィアもハイオークを仕留めたようで俺に並んでそう尋ねてきた。

「大丈夫、一応防御もしたし思ったより耐久力とこの服の防御力が高かったみたいでノーダメだよ」

 ソフィアはそうですかと納得してオークキングの背後へ回る、あれ?  やけにあっさり納得したな……

 それからソフィアは膝の裏や太ももの裏など四つん這いになっているオークキングの無防備で皮膚の薄そうな部分に向けて攻撃を繰り返している。

 なら俺は……

 今度は攻撃を受け無いように気をつけながらオークキングの正面をウロチョロする。ソフィアに意識を向けないようにする為だ。
 時折攻撃を加えて意識を完全に俺に向ける、集中さえしていれば簡単なお仕事だ。

「グォォオオ……」

 かなりの出血で弱ってきた。
 俺がちょこちょこ削ったおかげで腕もまともに動かないようだ。

「トドメ!」

 今度はカウンターを貰わないようしっかり注意しながらオークキングの首を刎ねる。

 ゴロンと首が転がったのを確認してからオークの殲滅に……

「ありゃ、オーク残ってないな」
「さすがはリン殿ですね」

 オークのいた方を見るとそこには何も残っていなかった。
 倒されたオークは全てウルトに積み込まれているようで綺麗なものだ。

「お疲れ様、クリードは本当に大丈夫?」
「うん、完全に油断しちゃったけど全くダメージは受けてないよ」
「それは良かったけど、あれだけ注意しなさいと言ったのに油断するなんてどういうこと?  その服があったから良かったものの、死んでてもおかしくないのよ!?」

 説教が始まってしまった……しかしこれは完全に俺が悪いので甘んじて受けよう……
 買ったばかりの皮鎧も壊れちゃったし真剣に反省しなければ……

 リンに怒られサーシャに心配を掛けてしまったことを詫びてその場は終了、オークキングの死体も回収して安全地帯へと移動した。

 ちなみにハイオークの持っていた武器は以前挑んだ冒険者の物だったのか相当傷んでおり使用には耐えそうもなかった……

「さて……このまま戻る前に少し6階層を見ておきたかったんだけど、クリードの武器が壊れちゃったしどうしましょうか?」
「うっ……申し訳ない……」

 冷ややかな目で見られて謝るしかない。

「まぁ……クリード様にお怪我が無くて良かったです」
「それはそうだけどクリードはあの場面で油断したのよ。今回は無傷で切り抜けられたけど今後同じようなことがあった時怪我しないとは限らないんだからしっかり注意はしておかないと」

 サーシャがフォローしようとしてくれたがリンによって一刀両断、今回は俺が悪いからもういいよ。でもありがとう。

「一応予備の武器はあるし大丈夫だと思う。最悪ウルトに助けてもらうし」
「昨日あれだけ啖呵を切っておいてあっさりウルトに頼るのね……」

 最悪だよ?  基本は自力でなんとかするよ?

「わかったわ、じゃあ1時間くらい6階層の探索をしてみて戻りましょう」
「分かりました」

 意見が纏まったので6階層を軽く探索するため俺たちは階段を下っていく。
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