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第2章……迷宮都市編

37話……ウルトは優秀

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「30分だけ寝るわ、起こしてちょうだい」
「なぁ、別に無理して今日戦わなくても良くないか?」

 俺がそう言うと、全員ぽかんとした顔で俺を見てきた。

 え?  なやなこの空気?  俺おかしなこと言ったかな?

「ウルトの中なら安全だろ?  今日はゆっくり休んで体調整えて明日挑めばいいんじゃない?」
「それは……」
「確かに……ッス」

 ソフィアとアンナは少し納得しかけているな。

「魔物や徘徊する迷宮でゆっくり休む……考えたこともなかったわね」
「でも……ウルト様は大丈夫でしょうか?  魔物に襲われたりしませんか?」
「ウルトどうなんだ?」
『問題ありません。私の中にいる限り気配も音も外には漏れません。仮にオーガやハイオークに攻撃を受けたとしても私のボディに傷1つ付けることは出来ませんし、攻撃を受けた際の音も衝撃も中には伝わりません』

 おっと……ちょっと予想以上の答えが返ってきたぞ?

「そう……なら……ここで休むのもありなのかしら?」
「ウルト様が大丈夫と仰るなら大丈夫だとは思いますけど……」

 休む方に傾いてるかな?

『必要とあらばこのままボス部屋に侵入して全て薙ぎ払うことも可能です。実行しますか?』
「しない。さすがにそれは甘えすぎだと思う。そこまで甘えちゃうと俺たちは成長出来なくなる気がする」

 ウルトの申し出を却下する。さすがに……ね。

『私の力はマスターの力です。マスターがマスターの力を使う行動のどこに甘えが存在するのでしょうか』

 そう言われると……そんな気もしなくもないけど……
 何でもかんでもウルト任せってなんかかっこ悪いじゃん?
 それにウルトに任せてたらレベルは上がるけど感覚とか戦闘技術は身に付かないし。

「ウルトからしたらただのわがままかもしれないけど、まぁそういう感じ。危なくなったら助けてよ」
『マスターの御心のままに』

 ほかのみんなも変な顔はしてないし、これでいいかな。

「よし、じゃあ飯にしようか」

 さすがにウルトの中で調理するのはアレなので屋台で買い集めていた出来合いの料理を夕食にする。

「そういえばさ、俺らが迷宮に入ってからどれくらい稼いだのかな?」
「そうね……全部合わせたら大金貨2枚分くらいはあるんじゃないかしら?」

 大金貨2枚!?

「そ、そんなにですか?」
「えぇ、鉱物はそこまでだけど、オーク、ハイオーク、ラッシュボアの死体を大量に丸ごと新鮮な状態で持ち込めるしそれだけで相当よ?」

 え……そんななの?

「大体相場は綺麗で新鮮な状態のオーク1匹で銀貨3枚での買取ね。軽く100匹は倒してるし状態が悪いのを合わせても金貨6枚はあると思うわ」

 オークってそんな高く売れるんだ……

「それにハイオークは大銀貨1枚、こっちも30匹以上は狩ってるはずだから金貨3枚以上はあると思うわ。ラッシュボアは1匹銀貨1枚くらいだからこれも金貨1枚以上にはなる計算ね。合わせて大金貨2枚くらい。さらに魔石や魔鉱石、ミスリルの買取も合わせると……」

 全員がゴクリと生唾を飲み込みリンに注目する。

「ちょっと分からないわね……魔石は安いけど数が異常だし……魔鉱石は20キロだっけ?  大銀貨2枚分、ミスリル3キロで大銀貨3枚分……オーガの相場は分からないけど皮は高く売れそうだし総額いくらになるかしらね?」
「おぉ……冒険者って儲かるんだな……」

 思わずつぶやくとまたみんなから変な目で見られてしまった。

「言っておくけど、貢献度で報酬を分けるとすればクリードとウルトで8割か9割は間違いないわよ?」
「え?」

 なんで?  討伐数はソフィアとアンナの方が断然多いと思うよ?
 リンも間違いなく俺より倒してるし。

「なんで?  って顔してるわね。じゃあ聞くけど、これだけの大量の死体どうやって持ち帰ると思ってるの?」
「あー……収納魔法?」

 サーシャが使えたはずだと思いサーシャに目を向ける。

「私の収納魔法ではオーク10匹入るかどうかですね。それに時間も普通に経ちますので新鮮という条件も厳しいです」

 そういや時間経過については聞いてたな……それに容量あるんだ。

「スキル【アイテムボックス】があればもっと入りますし時間経過もありませんが……かなりのレアスキルなので持っている人はかなり少ないですね」
「【アイテムボックス】か……そんなスキルもあるんだね」

 なんかカッコイイな、ファンタジーの定番って感じもするし……けど俺にはウルトの【無限積載】があるし覚えても使う機会無さそうだな。

「何言ってるの、クリードはついさっき見たじゃない」

 ついさっき?  ならもしかして?

「ケイトがミスリル出したやつ?  てっきり収納魔法かと思ってたよ」
「ケイトは剣闘士よ?  剣闘士は魔法は使えないの、だからあのミスリルを出したのはスキルの能力ね」

 へぇ……あれだけ強くて【アイテムボックス】まで持ってるとか是非ともお近付きになりたいね。

「そろそろ話は終わりでいいかしら?  疲れてるから休みたいのだけど」
「あぁ、うん、俺は大丈夫だよ」

 みんなも特に無いようなのでお開きにしようか。

「じゃああたしは寝るわ。まだ早い時間だけどみんなも早く休んで疲れをちゃんと取っておいてね」

 リンは毛布を持って隅の方へ移動して横になった。
 眠りやすいようにするためかリンの周囲に壁が現れ俺たちから隔離される。
 いつも思うけどウルトって気遣いも完璧だよな……

 それからソフィアたちと一緒に武具の手入れをしてサーシャからアドバイスを受けながら魔法の練習をした。

「今日1日でかなり上達しましたね」
「サーシャのアドバイスのおかげだよ。ありがとう」

 最初は1分も維持出来なかった光源の魔法も今では20分は維持出来るようになったし明るさも増した。
 慣れてきた部分もあるが、サーシャのアドバイスで理解出来たこともあるので非常に助かっている。
 魔法のイメージこそ分かりづらかったが魔力の使い方や考え方などは本当に参考になった。

「これくらいにしておきましょうか。あまり根を詰め無い方がいいでしょうし」
「いや、王都に残った勇者たちがどこまで強くなるのか分からないしあんま悠長にするのもどうかと思うんだよね」

 サーシャに止められるが俺は否定する。
 俺は意味のわからない職業なうえステータスが低いからとやんわり追い出された。

 それから出会ったサーシャたちは直接パーティに加われずとも勇者たちのサポートがしたいと言っている。

 ならば俺はもっと成長しなければならない。

 俺の今やりたいことは追い出されて困っていた俺を拾ってくれたサーシャたちのやりたいことを達成させることだからね。

「もう少しだけやってみて休むよ。サーシャは先に休んでて」
「いえ、クリード様が頑張るのでしたらお付き合いします!」

 それから追加で1時間ほどサーシャに付き合ってもらいその日の練習は終了。
 丁寧にお礼を言ってから自分の寝床へと移動した。

 サーシャは優しいな、こんな俺に付き合ってくれて本当に頭が下がる思いだ。
 サーシャの……みんなの為にもっと強くならないとな。

 最悪前言撤回してウルトをフルに使ったパワーレベリングも視野に入れるべきか?

 そんなことを考えながら眠りについた。
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