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第2章……迷宮都市編

33話……魔法を使ってみよう

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 そんなこともあったが足を止めずさらに進んでいく。
 ちなみにもう魔鉱石20キロは回収済みらしい……どうやら壁の奥など見えない場所にもかなり存在するらしく片っ端からウルトが発見して積み込んだのだ。

『前方よりオークの反応、数は3です』

 全員が構え待ち受ける。
 しばらくそのまま待っていると暗闇から3匹のオークが現れた。

 先制にリンが杖を突き出して風の魔法を放つ。
 いくつもの風の刃がオークを襲いダメージを与えていく。

 やっぱり見えるな、それにさっきよりはっきり見えた気がする。

 ダメージを受け動きの鈍ったオークにソフィアが躍りかかる。
 あっという間に1匹を貫いて倒し、2匹目に攻撃を仕掛けようとした隙を付いてもう1匹のオークがソフィアに殴りかかった。

「甘いッスよ!【不動】!」

 ソフィアとオークの間に飛び込んだアンナがスキル【不動】を使用してオークの攻撃を完全に受け止めた。

 その間にソフィアは2匹目も撃破、夢中でアンナに攻撃を続けているオークの背後に忍び寄り心臓を一突きして3匹目も倒してしまった。

 明らかに強くなってない?  動きのキレも力強さも俺の目で見ても上がってるんだけど?
 これがレベルアップの力か……

 忘れずオークを回収してまた移動。
 結構色んな魔物の素材やら魔鉱石やら手に入れたけど今の段階でどれくらいの稼ぎになるんだろうね?

 そんなことを考えながらしばらく、順調に魔物を狩りながら進んでいるとようやくボスの扉の前にたどり着いた。

「やっと到着ね……みんな準備はいい?」
「問題ありません」
「いつでも行けるッスよ!」
「回復は任せてください!」
「バッチリ」

 リンの号令で扉を開き中へ。
 中で待ち構えていたのはもう懐かしく感じるゴブリンキングに取り巻きのホブゴブリンが5匹、無数のゴブリンだった。

「多くね?」
「大きい魔法で一掃するわ!」

 リンが杖を掲げて集中する。
 杖の先には大きな炎の玉が生み出されてどんどん大きくなっていく。近くにいるだけで熱い……

 炎の玉の直径が2メートルに達しようかというところで杖を振り下ろす。

 炎の玉はゴブリンキングに直撃、さらにその炎を辺りに撒き散らしてゴブリンキングの周辺は大変な事になった。

「これ近付けないぞ」
「やり過ぎたわね、ちょっと待ってなさい」

 炎を免れたゴブリンが数匹突撃してくるがあっさり返り討ち、しばらく待って炎が消えるとそこに立っている魔物は1匹も居なかった。

「全滅しちゃった」
「思ったより威力が上がってるわね……」
「リンさんすごいです!」

 ゴブリンキングとホブゴブリンはなんとか形を留めているがたくさんいたはずのゴブリンは燃やし尽くされたのか骨すら残っていない。
 どれだけ高温の炎だったんだよ……

「まぁ終わったことはいいじゃない!  魔石の回収をして先に進みましょう!」

「誤魔化したな」
「誤魔化しましたね」
「誤魔化したッスね」

 俺とソフィア、アンナが口を揃えて言うが無視されてしまった。

 回収するものを回収して4階層の安全地帯に入る。
 そこには大きなテントが1つだけ建っているだけでほかには何も無い。
 人の気配も無いので5階層で狩りをしているのだろうか?

「お昼過ぎてるし昼食にしましょう、少しこれからの話もしたいしね」
「分かった、ウルト」

 ウルトから食材と食器、調理器具を取り出してさっと昼食の準備をする。
 簡単な昼食を準備してみんなで食べながら話をする。

「まずはお疲れ様、ここまでは問題無くこれたけど、ここからは地図も情報も無いから本当に気を付けましょう」
「そういえば4階層までだったね。ここからは地図も自分で書いていく感じ?」
「そうね、その役割はサーシャちゃんに頼みたいのだけれど」

 リンがそういうとサーシャは真剣な顔で頷いた。

「戦闘も厳しくなると思う。5階層では更に上位の魔物が出現するだろうし、無理だけはしないでね」
「わかりました」
「了解ッス!」

 5階層には雑魚としてゴブリンキングが出たりするのかな?
 そうなったらキングとは?  って話になってくるね。

「クリードも気を付けて、ウルトの感知能力は頼りにしてるから何かあったらすぐ言ってね」
「了解、それより聞きたいことあるんだけど……もし誰か怪我した時ってサーシャが治療するでしょ?  その時って光源維持できるの?」

 さっきふと思い出したのだ。
 リンのスキルには【ツインマジック】というのがあった。
 名前的に2つの魔法を同時に使用出来るスキルだと想像出来る。
 しかしサーシャにはそれが無い。
 なので光源を維持したまま回復魔法が使えるのか気になったのだ。

「そうね、その時にはあたしが光源を作るわ。光魔法の適性は無いから松明替わりに火球を浮かべる感じになるけど」

 確かにそれなら最低限の視界は確保出来るか……

「周りに冒険者が居なければウルトのヘッドライトも有用だと思う。それと今からでも俺に光源の魔法教えてくれない?  すぐ使えるようにはならないだろうけど今後迷宮探索するのに俺も光源魔法使えた方が都合いいよね?」

 俺の言葉を聞いていたのだろうウルトは通常サイズに戻ってヘッドライトを点灯させる。
 安全地帯とボス部屋は何故か普通に明るいので分かりづらいがヘッドライトの有用性をアピールしているのだろう。

「なるほど、確かにウルトのヘッドライトは有用ね。それにクリードも光源魔法を使えるようになればありがたいわね」
「一応光魔法の適性もあるからね。それでサーシャ、教えて貰える?」
「もちろんです。私の光源魔法のイメージはお日様です!」
「ん?」

 お日様?  太陽をイメージしてるってことか?

「はい!  明るい、眩しいと言えばお日様ですから!」
「あぁ……うん、はい……」

 おかしいな?  朝水魔法のアドバイスくれた時はもっとしっかり明確に分かりやすく教えてくれたんだけど、なんで本職なはずの光魔法のアドバイスこれなの?

 まぁそれでもアドバイスはアドバイス、自分に分かりやすいように噛み砕いて飲み込めばいいんだ……

 まずは光のイメージ、お日様はちょっと個人的にはイメージしづらいので今まで見たことのあるものがいいだろう。

 日本にいた頃に光るものや照明なんて腐るほど見てきた。その中で明るい、眩しいものと言えば……蛍光灯?
 いやLEDか?
 もっと明るい、眩しいものはあるのかもしれないけど俺に思いつくのはこれくらいだ。
 イメージするのはLED照明、これだな!

 手のひらに魔力を集めて光の魔力に変換……光ならイメージカラーは白だな。

 あまり集めすぎると魔力を維持出来なくなってしまうので維持出来るギリギリの量を見極めながら集めて白い魔力に変換していく。
 今の自分の限界量の光の魔力を溜めることが出来たので次は放出。
 イメージはLED照明、直視したら目が痛くなるくらい眩しいのをイメージしつつ、自分の頭上で留まるように……

 2つ同時にイメージするのってめちゃくちゃ難しいな……

 なんとか自分の想像力を振り絞り光球を発生させる。
 それを自分の頭上1メートルの高さに維持するイメージで……
 頭痛くなってきた……

 それでもなんとか成功したようで、俺の生み出した光球は俺の頭上にちゃんと浮かんでいた。

「おぉ……」

 成功した。成功はしたのだが……

「全然明るくない……」

 まだ豆球の方が眩しいくらいだ。

「素晴らしいですクリード様!  こんな短時間で成功させるなんて素晴らしい才能です!」
「そうね、まだ魔法の練習始めたばかりでそこまで出来たのは純粋にすごいと思うわよ。放出出来るだけでも大したものなのにさらに操って頭上に留めるなんて、自信持っていいわよ?  ……っと、消えたわね」
「え?」

 上を見上げるとそこには俺の作った光球は存在していない。
 1分も維持できなかったか……サーシャは階層探索中ずっと維持してるんだから見習わないとな!

「5階層では出来る限り光源の魔法を使い続けてみたら?  もちろんそれだけに集中されると困るけど、実践訓練が上達の近道よ」
「そうだね。やってみるよ」

 少しでも上達するように頑張ろう!

「それともうひとつ、ランク昇格の件なんだけどね、5階層で1人1キロのミスリルを発掘するか5階層攻略のどちらかでゴールドランクに昇格できるわ。ミスリルは見つけたら確保はするけど、本線は5階層攻略でのゴールドランク昇格、それでいいかしら?」
「もちろんです!  私は最高到達階層の更新が目標ですからね!  クリード様、ウルト様、それにみんなが居れば達成出来ると思います!」
「ゴールドランクですか……まだ余裕もありますし、今日中にクリアしたいですね」
「5階層攻略すればみんなお揃いッスね、頑張りましょー!」

 全員やる気だな。
 今は14時前、今から出ればなんとか5階層のボス部屋まで行けるかな?

「リン、魔物の情報も無いんだよね?」
「無いわね。あくまで予想だけど、オークの上位種やオーガが出てくるんじゃないかと思ってるわよ」

 オークの上位種……ハイオークやオークソルジャーとかかな?
 それにオーガか……でかい敵が多そうな感じだな。

「まぁ実際見て見ないと分からないわ、今まで以上に気を引き締めて進むわよ!」

 全員で応!  と声をそろえる。
 さて、5階層に挑みますかね……
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