上 下
23 / 85
街の中のとみぃ

23話、結成、デーモンバスターズ

しおりを挟む
「……ん?」
「トミー! 目が覚めましたのね!?」

 気が付くと俺はベッドの上で横になっていた。

 隣にはアイリスさんが座っていて、心配そうに俺の顔を見つめている。
 あ、おてて握られてる……

「これは……なんでもありませんの!」

 握られている手を見ていると、それに気付いたアイリスさんが顔を赤くして慌てて手を離した。
 残念、気付かなければよかった……

「それよりトミー、何がありましたの? 急に倒れるなんて……心配しましたわ」
「すみません……」

 さて、どう説明しようか悩む間も無さそうだ。
 ありのままを話すしかないか。

「……という事がありまして……誠に申し訳ありませんが、アイリスさんも巻き込んでしまいました……」
「そんなことがありましたのね。わかりましたわ」

 悩んでも仕方ないとありのままを話すと、アイリスさんはあっけらかんと話を受け入れた。
 悩んだり疑ったりしないのだろうか?

「なにを不思議そうな顔をしていますの?」
「いや……あっさり信じるなぁと」
「信じますわよ? トミーは嘘をついていませんもの」

 そうだった、アイリスさんは嘘を見破れるんだった。
 結局、言葉を選んだりせずありのまま伝えて正解だったようだね。

 大切なのは正直な心。下手に言葉を飾らずにそのままぶつけるからこそ伝わるものもあるのだ。

「それで……」
「もちろん協力しますわ!」

 よかった。アイリスさんのことだからなんだかんだ言って協力してくれるだろうとは思っていたけど、ここまで快諾して貰えると気が楽になるね。

「ふふ……光属性と聖属性が使えるようになるなんて……まるで物語に出てくる英雄のようですわ」
「英雄みたいというか、これから英雄そのものになると思いますけどね」
「そうでしたわ」

 かなり前向きに受け止めてくれているようで安心する。

「ファミマト王国は将来の英雄を国外追放したわけですわね! 見返してやりますわ!」
「追放されてなかったら英雄になる機会そのものが無かったわけですけども」

 俺の呟きは聞こえなかったようで、アイリスさんは「やってやりますわ!」と拳を握りしめていた。

「トミー!」
「なんですか?」

 ようやく妄想の世界から帰還したようで、アイリスさんは俺の方に向き直り大きな声で俺の名前を呼んだ。
 ちょっとびっくりしたのは内緒である。

「チーム名を決めますわよ!」
「なんで?」

 必要?

「なんでって……名乗るためですわよ?」
「そりゃそうでしょうけど、いります?」
「いりますわ! トミーも考えてくださいまし!」
「うっす」

 まぁ……うん。アイリスさんが必要だと言うのなら必要なのだろう。

 アイリスさんと俺……トミーとアイリス……

「トミリスとか?」
「ふざけてますの?」

 ダメか……
 トミスの方が良かったかな? いや、俺の名前が先に来てるからダメなのか?
 アイリスさんの名前を先に……

 アイミ?

 ダメだ、高校時代の元カノの顔がチラつくやつだからこれはダメだ。

「決めましたわ!」

 俺が頭を悩ませているうちに、アイリスさんの中でチーム名が決定してしまったようだ。
 考えるのめんどいし、それでいいよ。

「『デーモンバスターズ』ですわ!」
「それはダサい」

 ごめん、やっぱなしで。
 候補捻り出すからちょっと待って。

「なにか言いましたかしら?」
「いえ、何も」
「文句は?」
「ございません」

 これは無理だ。
「それダサいからやめません?」とは言えない雰囲気だ。

「なら『デーモンバスターズ』で決定ですわ!」
「了解っす」

 極力名乗らないでおこう……

「リーダーはトミーですわ!」
「なんで!?」

 いやいや、アイリスさんでいいよ? 俺は副リーダーで十分満足だよ?

「女神様から頼まれたのはトミーですわよね?」 
「はい」

 それはそうだ。

「わたくしはトミーの仲間、いわばサポートですわよね?」
「まぁ……はい」

 確かにメインは俺だよなぁ……

「ならリーダーはトミーですわ」
「ソウデスネ」

 ダメだ、反論の余地がない……!

「チーム名も決まりましたし、冒険者登録もしましょう!」
「……はい」

 諦めよう。
 この流れに逆らうことは俺には出来そうにない。

「そういうことですのでトミー、今この瞬間からわたくしに対して敬語も敬称も禁止ですわ!」
「なんでですか?」
「禁止!」

 うーむ……これは敬語やさん付けで話し掛けたら無視されかねないやつっぽいな。

「なぜ?」
「トミーがリーダーだからですわ。リーダーがチームメイトに敬語敬称を使うなんて組織の規律が乱れますわ」

 規律って……

「二人なんだからそこまで気にしなくても……それに、それならアイリスさんがリーダーでも……」
「禁止!」

 これは手厳しい。

「……アイリスがリーダーでもいいと思うんだけど?」

 ほら、今めっちゃ取り仕切ってるし、確実に俺よりもリーダーの器だよ?

「リーダーはトミー、決定事項ですの」
「わかりまし……わかったよ」

 凄い目で見られたので慌てて言い直した。
 これは……慣れるまで大変そうだな。

 しかしまぁ、アイリスさん……アイリスがとても楽しそうにしているし、これはこれでいいのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~

りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。 ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。 我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。 ――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」 乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。 「はい、では平民になります」 虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!

リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。 聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。 「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」 裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。 「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」 あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった! 、、、ただし責任は取っていただきますわよ? ◆◇◆◇◆◇ 誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。 100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。 更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。 また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。 更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...