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第2話「未来日記」
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私には頼れる友人がいる。
“オカ子”こと、私と同じ公爵令嬢の娘キャロル・フォスター。
魔術や魔物とか、とにかくオカルトが好きな女の子だから“オカ子”
三つ編みツインテールに大きなメガネをかけて、いつも魔女っ子のような格好をして薄暗い科学室に篭っているわ。
私だけが知っているオカ子のひみつ。
彼女はメガネをはずすとめちゃくちゃ美人。
私ですら妬ましくなるほど。
どうして男が寄り付かない格好しているのと問いかけても答えてくれたことは一度もない。
まぁとにかくこんなときは“オカ子”に相談するのが1番。
「トリカブトってある?」
「あるけどなにに使うの?」
「ちょっと見てみたいのよ」
「なんのために?」
「淑女の嗜みとして知見を広めるためよ」
「どうして淑女の嗜みが“トリカブト”になるのよ」
「そ、その⋯⋯そうだ! 攻撃力の高いモンスターを操る魔術ない?」
「あるけど」
「だったら教えて! 猛毒のハチとか操れれば絶対にうまくいくから」
「なにがうまくいくわけ? ねぇ、さっきからなにか企んでない?」
「な、なんにも企んでないわよ。決して王子を殺したいとか」
「殺したいって言った。しかも王子を」
「空耳よ。証拠も残らず人を殺す方法ないかしらって」
「ほらやっぱり誰か殺したいんじゃん」
「ち、ちがうそうじゃない! ほら、暗殺術って淑女の嗜みじゃない」
「聞いたことないわよ。そんな物騒な淑女」
「もう、いじわるしないでよぉオカ子」
「してないわよ。はぁ、ティード王子の殺害は2回目のループで実行したけど、あっさり失敗してルテナは即処刑されたわ」
「ひやあああ!」
「安易なのよルテナは」
「⁉︎ ちょっと待って。なんでオカ子は私がループしてるって知っているの?」
「どうやら日記の存在に気づいたようね」
「⁉︎ オカ子、どうして日記のことを⋯⋯」
オカ子は顔の前で手を組み、メガネを光らせながら“クックク”と笑う。
「まさかオカ子、あなたが仕組んだことだったの? 私とティードを別れさせるために」
「冗談よ。そろそろ来る頃だと思ったわ」
「じゃあこの日記って」
「私があげた魔道具よ」
「なんだぁ。⁉︎ 2回目ってどいうこと?」
「日記をどんどんめくっていきなさい。書いてあるから。ルテナがこうやって私のところに
泣きついてきたのは1回や2回じゃないのよ」
たしかに私が処刑されるたびに2章、3章と切り替わっている。
アレ?いま何回目。
「その魔道具はね。使用者の望みを果たすまでループを繰り返す“未来日記”
だけど回数制限があってループできる回数は10回。ルテナはもう9回ループしたわ」
「9回⁉︎」
「じゃあ今回、失敗したら⋯⋯」
「もうお終いね。さよなら」
「いやぁああああ!」
「私もこんなに失敗すると思わなかったわ」
「って? オカ子は全部覚えているの? 私の失敗」
「覚えているわよ。私は特別だから」
「だったら処刑されないようにいい方法を一緒に考えて⁉︎」
「今回はそのつもりよ。さすがに攻略法も見えてきたし。それにたったひとりの友達を失うのも嫌だし」
「オカ子! やっぱ持つべきはオカ子よ!」
「うんうん。わかったから抱きしめない。痛い」
「さっそくなんだけどシャロンを殺す方法ない?」
「ありゃりゃ⁉︎ どうしてすぐそういう発想になるわけ」
「だってティードを殺したら大事になるけど。シャロンなら突然いなくなっても大事にならないでしょ」
「言いたいことはわかるけどそれは3回目のループで失敗したわ」
「は?」
「王子がナイフで殺そうとしてきたルテナからシャロンを守ったのよ。そのあとは剣でルテナを目も当てられない姿になるまで滅多刺しにしてたわ」
「いやぁああああ! 殿方って婚約者が相手でもそんな恐ろしいことができちゃうわけ⁉︎」
「恋に盲目になるって恐ろしいことね。王子がのめり込みやすいのか。だけどルテナを殺すときは毎回生き生きとしていたわ。
なんだか王子ってルテナに興味ないどころかきらいなんじゃないかって思うようになってきたわ」
「いやぁああああ⁉︎ 婚約破棄よ婚約破棄。殺されるくらいならもうこっちから婚約破棄よ」
「それはダメよ」
「いいじゃない。私が身をひいてあげるから2人は仲良くチチクリ合いなさいと言ってあげているのよ」
「戦争になるのよ」
「戦争⁉︎ 浮気した王子を振るだけでどうしたらそうなるのよ」
「ほら、ルテナのお父様、王国政府でもNo.2の実力者でしょ。影の国王なんて言われていろいろ内部に敵が多いし、
8回目のループであなたの婚約破棄が謀反って憶測をよんで戦争になったのよ」
「いやぁああああッ⁉︎ 」
「私もこれ以上、大切な友達が無残に殺される姿は見たくないわ」
「ありがとう! オカ子!」
「いちいち抱きつかない。だいじなのは王子とシャロンが恋に落ちないようにすることよ」
***
「でも4回、5回、6回とシャロンを殺したり、学園から追放するようにいじわるしたり、悪い噂を拡散したりして
学園から追放するのは失敗しているんでしょ」
「あらためて聞くとあんた本当に酷いことしたわね」
「だってこっちは命がかかっているのよ」
「ルテナがシャロンに危害を加えれば加えるほどティード王子の恋は燃え上がるわ」
「どうしたらいいのよぉ」
「ルート選択を間違えると最悪世界が滅ぶかもね。実際、戦争にもなったし」
「なんで王子の浮気ひとつに世界の命運がかかっているのよぉ。オカ子! あんたずっと私のループを見てきたんでしょ!
なんかいいアイディア出しなさいよ!さっき攻略法も見えたって言ったじゃない」
「そうだけど。わかったのは王子から離れたり、シャロンに危害を加えたりするパターンは失敗するってことよ」
「だったらやれることはもうないじゃない!」
「だからこの2つのパターンを避ける方法だったらうまくいく可能性があるってこと」
「なるほど! だけど他に方法って⋯⋯⁉︎」
“ある”
「ねぇ、オカ子⋯⋯これまでのループで私、シャロンと仲良くなったことある?」
「うーん。ないわね」
「それよ! 私とシャロンが仲良しになればなにかが変わるわ」
「これまでにないアイディアだけど本当に大丈夫? もうこれ以上失敗できないんだよ」
「まぁ見てなさいよオカ子!」
「ああもうすでに9回見た光景」
「さぁ待ってなさいシャロン。私が友達になってあげる!」
つづく
“オカ子”こと、私と同じ公爵令嬢の娘キャロル・フォスター。
魔術や魔物とか、とにかくオカルトが好きな女の子だから“オカ子”
三つ編みツインテールに大きなメガネをかけて、いつも魔女っ子のような格好をして薄暗い科学室に篭っているわ。
私だけが知っているオカ子のひみつ。
彼女はメガネをはずすとめちゃくちゃ美人。
私ですら妬ましくなるほど。
どうして男が寄り付かない格好しているのと問いかけても答えてくれたことは一度もない。
まぁとにかくこんなときは“オカ子”に相談するのが1番。
「トリカブトってある?」
「あるけどなにに使うの?」
「ちょっと見てみたいのよ」
「なんのために?」
「淑女の嗜みとして知見を広めるためよ」
「どうして淑女の嗜みが“トリカブト”になるのよ」
「そ、その⋯⋯そうだ! 攻撃力の高いモンスターを操る魔術ない?」
「あるけど」
「だったら教えて! 猛毒のハチとか操れれば絶対にうまくいくから」
「なにがうまくいくわけ? ねぇ、さっきからなにか企んでない?」
「な、なんにも企んでないわよ。決して王子を殺したいとか」
「殺したいって言った。しかも王子を」
「空耳よ。証拠も残らず人を殺す方法ないかしらって」
「ほらやっぱり誰か殺したいんじゃん」
「ち、ちがうそうじゃない! ほら、暗殺術って淑女の嗜みじゃない」
「聞いたことないわよ。そんな物騒な淑女」
「もう、いじわるしないでよぉオカ子」
「してないわよ。はぁ、ティード王子の殺害は2回目のループで実行したけど、あっさり失敗してルテナは即処刑されたわ」
「ひやあああ!」
「安易なのよルテナは」
「⁉︎ ちょっと待って。なんでオカ子は私がループしてるって知っているの?」
「どうやら日記の存在に気づいたようね」
「⁉︎ オカ子、どうして日記のことを⋯⋯」
オカ子は顔の前で手を組み、メガネを光らせながら“クックク”と笑う。
「まさかオカ子、あなたが仕組んだことだったの? 私とティードを別れさせるために」
「冗談よ。そろそろ来る頃だと思ったわ」
「じゃあこの日記って」
「私があげた魔道具よ」
「なんだぁ。⁉︎ 2回目ってどいうこと?」
「日記をどんどんめくっていきなさい。書いてあるから。ルテナがこうやって私のところに
泣きついてきたのは1回や2回じゃないのよ」
たしかに私が処刑されるたびに2章、3章と切り替わっている。
アレ?いま何回目。
「その魔道具はね。使用者の望みを果たすまでループを繰り返す“未来日記”
だけど回数制限があってループできる回数は10回。ルテナはもう9回ループしたわ」
「9回⁉︎」
「じゃあ今回、失敗したら⋯⋯」
「もうお終いね。さよなら」
「いやぁああああ!」
「私もこんなに失敗すると思わなかったわ」
「って? オカ子は全部覚えているの? 私の失敗」
「覚えているわよ。私は特別だから」
「だったら処刑されないようにいい方法を一緒に考えて⁉︎」
「今回はそのつもりよ。さすがに攻略法も見えてきたし。それにたったひとりの友達を失うのも嫌だし」
「オカ子! やっぱ持つべきはオカ子よ!」
「うんうん。わかったから抱きしめない。痛い」
「さっそくなんだけどシャロンを殺す方法ない?」
「ありゃりゃ⁉︎ どうしてすぐそういう発想になるわけ」
「だってティードを殺したら大事になるけど。シャロンなら突然いなくなっても大事にならないでしょ」
「言いたいことはわかるけどそれは3回目のループで失敗したわ」
「は?」
「王子がナイフで殺そうとしてきたルテナからシャロンを守ったのよ。そのあとは剣でルテナを目も当てられない姿になるまで滅多刺しにしてたわ」
「いやぁああああ! 殿方って婚約者が相手でもそんな恐ろしいことができちゃうわけ⁉︎」
「恋に盲目になるって恐ろしいことね。王子がのめり込みやすいのか。だけどルテナを殺すときは毎回生き生きとしていたわ。
なんだか王子ってルテナに興味ないどころかきらいなんじゃないかって思うようになってきたわ」
「いやぁああああ⁉︎ 婚約破棄よ婚約破棄。殺されるくらいならもうこっちから婚約破棄よ」
「それはダメよ」
「いいじゃない。私が身をひいてあげるから2人は仲良くチチクリ合いなさいと言ってあげているのよ」
「戦争になるのよ」
「戦争⁉︎ 浮気した王子を振るだけでどうしたらそうなるのよ」
「ほら、ルテナのお父様、王国政府でもNo.2の実力者でしょ。影の国王なんて言われていろいろ内部に敵が多いし、
8回目のループであなたの婚約破棄が謀反って憶測をよんで戦争になったのよ」
「いやぁああああッ⁉︎ 」
「私もこれ以上、大切な友達が無残に殺される姿は見たくないわ」
「ありがとう! オカ子!」
「いちいち抱きつかない。だいじなのは王子とシャロンが恋に落ちないようにすることよ」
***
「でも4回、5回、6回とシャロンを殺したり、学園から追放するようにいじわるしたり、悪い噂を拡散したりして
学園から追放するのは失敗しているんでしょ」
「あらためて聞くとあんた本当に酷いことしたわね」
「だってこっちは命がかかっているのよ」
「ルテナがシャロンに危害を加えれば加えるほどティード王子の恋は燃え上がるわ」
「どうしたらいいのよぉ」
「ルート選択を間違えると最悪世界が滅ぶかもね。実際、戦争にもなったし」
「なんで王子の浮気ひとつに世界の命運がかかっているのよぉ。オカ子! あんたずっと私のループを見てきたんでしょ!
なんかいいアイディア出しなさいよ!さっき攻略法も見えたって言ったじゃない」
「そうだけど。わかったのは王子から離れたり、シャロンに危害を加えたりするパターンは失敗するってことよ」
「だったらやれることはもうないじゃない!」
「だからこの2つのパターンを避ける方法だったらうまくいく可能性があるってこと」
「なるほど! だけど他に方法って⋯⋯⁉︎」
“ある”
「ねぇ、オカ子⋯⋯これまでのループで私、シャロンと仲良くなったことある?」
「うーん。ないわね」
「それよ! 私とシャロンが仲良しになればなにかが変わるわ」
「これまでにないアイディアだけど本当に大丈夫? もうこれ以上失敗できないんだよ」
「まぁ見てなさいよオカ子!」
「ああもうすでに9回見た光景」
「さぁ待ってなさいシャロン。私が友達になってあげる!」
つづく
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