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魔王降臨

第75話「使用された悪意」

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「私もついていく」

背中を向ける魔王クライムに言い放った。
“勝手にしろ”
無鉄砲な私に言葉では返さないけど、クライムの背中がそう答えているようだった。
その証拠に魔王軍一行の馬車に負傷したあかねたちを乗せ、無理矢理同行しようとする私を
クライムはいっさい阻むことはなかった。
言い出したら聞かない私のことだから、はじめから止めることを諦めているのか。
道中、イリスちゃんもブツブツと怨念めいた言葉を呟きながら、ずっと私のことを睨みつけていたけど、以前のように剣を持って襲ってくることはなかった。
これも私にいっさい構うなと魔王クライム・ディオールが命令しているということだろうか。
それから2日が経って、魔王軍の一行はレナルパトル領に到着した。
レナパルト領はお城を中心に街が城壁で囲まれている都市。
ガルードさんたち率いる魔王軍の部隊が侵攻し、瞬く間に陥落させたフェンリファルト皇国の重要拠点のひとつ。
オレンジの屋根にレンガ造りの家が立ち並び、普段なら観光に訪れたくなるようなおしゃれな街並みも、
ところどころ破壊されて戦火の跡が残る。
人々の活気を失った街を見つめていると、私の頭上を影が覆う。
街をこのような景色に変えてしまった存在が、大きな翼をはためかせながら空から舞い降りてくる。
「ガルードさんーー」
身に纏った白銀の鎧は紅黒い血にまみれ、教会ではじめて会ったときとは雰囲気が変わってしまった印象を受ける。
「何しにここへ来た」
「人を⋯⋯人間を殺したんですね」
「言ったはずだ。次に相まみえるときは敵だと」
「私はガルードさんたちと戦うためにここへやって来たのではありません」
「ならば?」
「話し合いです」
「ぬるいッ!」
そう言って大きな顔を近づけ荒い鼻息を吹き付けてくる。
「聞いてください! これ以上、魔王軍が人間と戦い続ければ人間は亜人の命をいっせいに奪う恐ろしい兵器を使用します。
だから、今すぐここを捨てて逃げてください」
「子供を脅かしたいのか? そのような戯言に、俺たちが恐れをなして逃げろと。人間とはそうも亜人を見くびる生き物なのだな?」
「違います! ガルードさんたちがあの兵器で傷ついていく姿を見たくないんです。あれは本当に恐ろしい。
亜人の身体を生きたまま腐らせ、痛みと苦しみを与えたまま命を奪うのですよ」
「これも因果だ。人間が暴力をもって亜人を滅ぼすというのなら亜人もまた暴力で人間に抗うまで」
「⁉︎」
「俺は長いときを生きてきた。亜人のあさましさに失望し、人間のあさましさにも失望させられた。
結局はどちらも愚かなのだ。強者になれば弱者を見下し虐げる。その強者と弱者は常に入れ替わる。
つまり争いは繰り返すのだ。ならばどちらか一方が滅びるまで戦うしかない。
話はこれまでだ。行け!」
そう言ってガルードさんは翼をはためかせて飛び去った。
舞い上がった砂埃が晴れると、そこに悲しげな表情をしたリルフィンさんが立っていた。
なんだか少しやつれたような⋯⋯

***
再会したリルフィンさんにヒーリング能力を使って負傷したあかねたちの治癒を試みてもらった。
魔王クライムから渡されたポーションを飲ませて以来、あかねたちは眠ったままだ。
「遅効性のポーションね。傷跡や後遺症が残らないくらい治りはとてもいいんだけど、
回復するのにとても時間がかかる。しかも完治するまでは眠ったままの状態よ」
「リルフィンさんのヒーリングでどうにかならないですか?」
リルフィンさんは首を横に振る。
「ダメ。このポーションが効いている間は私のヒーリングが効かないみたい」
「そんな⋯⋯」
クライムはわざとこのポーションを⋯⋯
魔王が言っていた”リグリット村に戻っておとなしくしていろ“
の意味をいまさらながら理解した。
私がもっと冷静だったらこのポーションを飲ませていなかった。
「落ち込まないで。傷が癒えたらまた目覚めるから」
「はい⋯⋯」
あかねたちが運び込まれたこの場所は、戦いで負傷した亜人たちをリルフィンさんが治療する場所のようだ。
レナルパトル兵の修練場を活用しているみたいで体育館くらいの広さがある。
それなのに負傷した亜人兵ですでにいっぱいだ。
あかねのとなりで横になっている獣人の女の子も腕を失った痛みに苦しんでいる。
リルフィンさんの魔力にだって限界がある。
次から次へと運び込まれてくる負傷者にリルフィンさんも追いつけず、魔力を消費しきっているそうだ。
痩せ細った彼女の手が見ていてつらくなる。
「心配かけちゃってごめんね。大丈夫だから」
「リルフィンさん、私にも手伝わせてください」
「え?」

***
リルフィンさんの魔力を無駄に消費させずに効率よくヒーリングさせるために
負傷者のケガの度合いによって治療の優先順位を決めていくことにした。
かすり傷くらいのケガだったら私にも治療できる。
2人で協力しながら治療していくことで以前より救える命が増えたとリルフィンさんは喜んでくれた。
最近はイリスちゃんも手伝ってくれるようになった。
張り合うようにして私よりも、1人でも多く治療しようとがんばっている。
「イリス様⋯⋯それ塗りすぎでは? さっきから沁みてます」
「は? 黙れ」
「イタッ! 包帯しめすぎです」
治療が少々荒ぽいせいか亜人兵たちがイリスちゃんに怯えてしまっている。
あのゴブリンさんなんて⋯⋯
「イリス様、なんだか急にキズが痛くなくなったんで僕は大丈夫ですよ」
「は? だったらこの薬をその頭にいっぱい塗ってやろうか?」
「ヒーッ! やめてください」
「なんだよ。遠慮するな。頭が悪いのは薬を塗らないと治らないぞ」
「キャーッ、それは塗っても治りません!」

『プッ』

いけない。見ていて思わず笑ってしまった。
こっちを見て”ムキーッ“となるイリスちゃんもかわいい。
「イリスはガサツなんだよ」
「血を見て倒れるライルなんてちっとも役に立ってない」
「は? 誰が重たい塗り薬を壺ごとここまで運んで来てやっていると思っているんだ」
「オッドは一回に2個運べる。だけど小ちゃいライルは1個」
「はぁ? イリスの方が俺よりチビじゃないか」
「ケンカはおよし」
「そうですぞ」
アームズ族の4人は仲が良くてうらやましい。
するとセレスさんが私に声を掛けてきた。
背が高くて美人の大人のお姉さん。
女性の私でも声を掛けられると緊張する。
「お嬢ちゃんは、戦えないわりにはおもしろい子だね。クライムが気にかけるのもわかるよ。
おっと、もちろん私はイリスの方を応援するけどね」
「はぁ⋯⋯」
そういえばイリスちゃんが私とリルフィンさんを手伝うときにこんなことを話していた。
『ディオールは神様の名前。だけどクライムは平和に暮らしていた亜人たちを戦争に巻き込むんだから自分は神ではなく魔王を名乗ると言った。
だから私がクライムにしてあげられるのは少しでもクライムの後悔を減らしてあげることだけ』
たくさんのキズ薬も包帯もトゥワリスを通じて、魔王クライム・ディオールが用意したのだとイリスちゃんは教えてくれた。
この異世界にはまだない消毒液まで開発させて⋯⋯
ハルト君には”魔王を名乗る“ それだけの重責がのし掛かっているということを知れた。
どうしてそうまでして自分を追い詰めるのハルト君。

『大変だ! トールがケガをして戻ってきた!』

「なんだって⁉︎ あのトールが」
リルフィンさんが驚いた顔で立ち上がる。
両脇をオーク2人に支えられた男性が運び込まれてきた。
特徴的な長い耳に銀髪、それに褐色の肌⋯⋯ダークエルフのようだ。
全身のあちこちにキズを負っているけど、腹部からの出血がひどい。
「ガールドと手合わせしても無傷だったトールがどうして」
「亜人に変身した人間たちにやられた⋯⋯」
「人間が亜人に? どういうことだ⁉︎」
彼を運んできたオークが驚きながら尋ねる。
「人間たちはビースト化と言っていた⋯⋯うッーー」
「待ってトール。今、ヒーリングするからゆっくりしゃべって」
「すまない⋯⋯以前、トクナガとかいう妹をさらった奴が話していたんだ。
俺たちダークエルフの血を人間が飲むと亜人に匹敵する力を得られると。
俺が暗部とやり合ったときは不完全だったようだがそれでも強かった」
「人間はそれをこの短期間で完成させたというの?」
「ああ、俺の骨と内臓をぐちゃぐちゃにした奴なんて着ていた服が引き裂けるほど
筋肉を肥大化させて暴れやがった。あれは獣だ」
やはり武器は銃だけじゃなかった。まさか人間すら兵器にするなんて⋯⋯
「俺たちダークエルフの力を亜人を殺すことに使いやがって」
「わかったわ。ありがとうトール。がんばって教えてくれて。
すぐに治してあげるから今は眠っていてね」
そう言ってリルフィンさんはヒーリングと同時に麻酔と同じ睡眠魔法をトールさんにしてあげた。

『うッ!』

「今度は何⁉︎」
突然のうめき声にリルフィンさんが叫ぶ。
「さっきトールさんと一緒に運ばれてきたゴブリンさんです」
腹部を抑えて苦しそうにもがいているゴブリンさんにリルフィンさんと駆け寄る。
「何この穴?」
リルフィンさんがお腹を抑えていたゴブリンさんの手をどけると銃で撃たれたような穴があいている。
「銃創⋯⋯です」
「知っているのアマネ?」
私は思わず手で口を覆った。
恐れていたことが起きてしまったーー
「私たちのいた世界で使われていた武器なんです⋯⋯」
「クライムがよく俺に変身させる武器だろ。人間側も持っているのか?」
「私はこの武器を人間に使わせないためにここへやって来ました」
ゴブリンの腹部の銃創から広がっていくように皮膚が紫色に変色していく。
「なのにもう手遅れ⋯⋯」
私はつくづく無力だ。

『うッ!」

今度は別の方からうめき声がーー
リザードマンのダイノスさんが腕にできたキズを抑えてもがいている。
彼も同じように皮膚の変色がはじまっている。
だけど、いったいなぜ?
ダイノスさんは3日前にここへ運ばれてきて銃創もない⋯⋯
「⁉︎」
まさか!
「感染するの⁉︎」
博士はなんて恐ろしい兵器をーー
「みんな離れて! この病気は感染する」
イリスちゃんがとっさに手首を反対の手で隠した。
私にははっきり見えた。
彼女の手首のあたりが紫色に変色しているのを。
「とにかくきれいな布で顔を覆って!」
寝ている亜人兵たちが連鎖するように苦しみはじめた。
「何が起きているの⁉︎ とにかく私のヒーリングで」
リルフィンさんの腕を掴んで私は首を横に振った。
「もうダメなの。リルフィンさんも無事な人たちを連れてここから逃げて」
「アマネ、苦しんでいる人たちを見捨てろっていうの!」
「そうじゃない。そうじゃないの。だけどもうこの人たちは救えないの⋯⋯」
「アマネ⋯⋯わかったよ。力のある男たちは、奥の方で寝ている人間を抱えて脱出して」
「私たちも急ぎましょう」

すると大きな爆発音と同時に壁の一部が飛んでくる。
「「キャっ」」
「大丈夫、リルフィンさん!」
「アマネの方こそ」
「アレ? 月野木さんじゃん」
「⁉︎」
壁にあいた穴の向こう側には見覚えのあるシルエットの人物が立っていた。
「吉備津⋯⋯瑠美花さん⋯⋯」
「もしかして裏切っちゃった系?」
「吉備津さん、外にある看板の“病院”の文字が見えなかった?
人道的観点から陽宝院君がフェンリファルト皇国の法律で病院施設への攻撃は禁じたはずよ」
「え? 何いってんの? 亜人は人間じゃないし、倒すべきモンスターでしょ?」
この子には何を話しても通じそうにない⋯⋯
「とりあえずそこをどいてほしい。月野木さんの隣にいる亜人殺したいから」
「ダメ! 彼女は殺させない」
「うっざ。知っているでしょ私の攻撃。いつまでもそこにいられたら巻き込んじゃうんだけど」
「どかない」
「だっる。月野木さん弱いんだから死んじゃうんですけど」

『あまり月野木さんをいじめないであげて』

今度は小鳥遊杏樹ちゃんがやってきた。
うしろには国城さんに、菊池さん、南里さんの親衛隊がお揃いだ。
「小鳥遊さん、守備範囲広すぎ」
「分かってくれてありがとう。るみかさん。月野木さん、今のうちだからお逃げなさい」
杏樹ちゃんのことだから何かウラがありそうだけど逃げるチャンスだ。
「リルフィンさん、行きましょう」
リルフィンさんの手を掴んでその場から走り出した。
振り返ると彼女たちは追ってくる気配はない。
だけど、彼女たちがここにいるってことは魔王討伐軍がここまで攻め込んできているということだ。

***
私とリルフィンさんが外に出ると、先に脱出した亜人兵たちが血を流して倒れている。
すると”パンッ“という乾いた音が鳴り響く。
音がした方へ駆けつけると、一体のオークが頭から血を流して倒れた。
そしてそこにはライフル銃を手にした紫芝さやかちゃんの姿がーー
「月野木天音、これはどういうことなのかな? 私たちが戦ってきた亜人たちの治療するなんて。
ダメージを与えたはずの亜人がしつこく回復して戻ってくるから、そいつに尋問したら月野木天音の
名前を吐いたよ。安心しなそいつはたっぷりいたぶって殺しておいたから。あとはお前だけだ。
陽宝院が来て、庇い出す前に私がここで死刑にしてやるよ」
さやかちゃんはためらいもなく、私に向けて引き金をひいた。
それと同時に黒い影が私の目の前に立ち塞がった。
そして被弾した翼の付け根から血が流れる。

『ガルードさん!』




つづく

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