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右条晴人とクライム・ディオールの伝説
第56話「静かなる反撃」
しおりを挟む「燃えてる、燃えてる、あんだけ油を買い込んだ甲斐があったぜ」
俺はダルウェイル国で勇者なんて稼業をやっている。
今回は国王様直々の依頼でエルムの森に住み着いてしまったという魔物の駆除に乗り出した。
なんでも魔物は人型をしているという。だけども見た目に反して火を吹いたり、森の動植物を操って襲ってきたりとあのウェルス王国の部隊さえも壊滅させられたそうだ。
そりゃあ国王様も手を焼くわけだ。
なんにせよこちらは場数を重ねた勇者だ。どんな魔物が相手だろうが腕がなるぜ。
「デュート! 頃合いだ。攻め込むぞ」
馬上から頭ごなしに命令してくるこの女は俺の上司でもあり相棒でもあるラムダ。
勇ましくも甲冑を着て、たいそうな剣を携えてはいるが、これでも一応、この国のお姫様だ。
国王様唯一の1人娘でたいそうかわいがっている。
公爵家の嫡男である俺は幼い頃より彼女の面倒見役として側に仕えきた。
だけど、こいつがとんでもないじゃじゃ馬娘だった。
今もこうやって先陣を切って敵陣に突っ込んで行くありさまだ。
ときどきどっちが勇者なのかわからなくなる。
それでもラムダとは妙にウマが合った。
一緒に厳しい修行にも耐えて、剣の腕はダルウェイル“一”と称される俺にも引け劣らない。
戦場でも安心して背中を預けられる奴だ。
父親ゆずりの身勝手さには散々振り回されてきたが、それでもラムダの勇ましさに惹かれて
気づけば婚約者(フィアンセ)になっていた。
「デュート! 私に遅れをとるな」
「はいはい」
そうやって俺たちは炎が燃え盛るエルムの森へ馬を走らせる。
***
魔物たちが作ったという根城にまでたどり着いたが、そこにあったのは
炎から逃げ惑う少年と少女たちの姿だった。
妙な装束を着てはいるが到底、魔物とは思えない姿カタチだ。
それに泣き喚きやがって本当にこいつらがあのウェルス王国の部隊を退けた魔物なのかよ。
「気をつけろデュート。貴様はすぐに油断する。かような姿であっても恐ろしき魔物だ。ぬかるでないぞ」
「わかっているぜ。お姫様。俺を誰だと思っているんだ。一応この国の勇者様だぜ」
「だったら私もその呼び名はやめろと言いたい。私は誇り高きダルウェイルのナイトだ」
「そうだったな騎士様。いや、ラムダ」
「おいおい、俺たちをどこまで置いていくつもりだ」
兵士たちを引き連れながら遅れてやってきたのは幼馴染のバトス。
ダルウェイル“一”の槍使いだ。
「相も変わらずもたもたしているからラムダに置いてかれるんだぜ」
「はぁ⋯⋯お前たちには付き合いきれんぞ」
「そう言いながら20年も付き合ってくれているじゃないか」
「感謝するんだな。私の人の良さに」
「にしても兵の数が多いな」
「300はある」
「300⁉︎」
「なのに2人が突っ走って行くから迷惑したぞ」
ここにいる魔物の数は約30匹。だけどその数相手に国王様も兵を300も用意するなんざ、相当ビビっていやがる。
おかげでこっちは誰がどれだけ多く仕留めるかの競争だ。
なんせ褒美ってのはなるべく多い方がいいからな。
--パチンッ--
開戦の合図と言わんばかりに誰かが鳴らした指の音が響いた。
俺は我先にと飛び出して、目の前を逃げまわる魔物を1匹、2匹と斬っていく。
しかし、“本当にこいつらが魔物かよ“と、疑いたくなるくらいに手応えがない。
もしかしてただのガキなんじゃないかとすら思えてきた。
無辜の民を斬るなんざ勇者に反するが、まぁ片っ端から殺していけば分かるか。
「ニュアルたん、こっちに隠れるんだ!」
おっと大事なことを忘れていた。
国王様からもう一つ命令を受けていたんだった。
それは国王様の第2夫人であるニュアル様の首を持って来いというものだ。
なんということかニュアル様は魔物たちに近づいたがために取り込まれてしまったそうだ。
「ああ⋯⋯オイタはいけないぜ」
そりゃあ大問題だ。夫人が国王様を裏切るなんてにわかに信じがたかったが、この目でその姿を目撃しちまったんだから仕方ないよな。
さすがの俺も子供相手に気が引けていたんだが、これなら心置きなく首をちょうだいすることができるぜ。
すると、少年が両腕を大きく広げて、俺の行く手に立ちはだかった。
「こっから先へは行かせないぞ」
魔物が人の言葉を話せるとは驚きだ。
「その割には腰が引けてるじゃねぇか。俺はそっちの方に逃げた子に用があるんだ」
「ニュアルたんはこ、この徳永カケルが守る」
「どいてな」
軽く払うように肩のあたりから撫で斬りしただけで少年はあっさりとくたばった。
「何がしたかったんだ?」
威勢の割には手応えがまったくない。
人型の魔物と聞いて戦いがはじまる前は体がウズウズしていたのに蓋を開けてみれば拍子抜けだ。
むしろさっきから退屈にすら感じてきた。
--パチンッ--
音がした方に振り向くと木のうしろに隠れているニュアル様を発見した。
「そこにいたんですね。ニュアル様」
声をかけると背を向けて逃げ出した。
「逃げないでくださいよ。ニュアル様。勇者ですよ。ダルウェイルの勇者デュートです」
それでも止まることなくニュアル様は森の奥へと駆けて行く。
「聞く耳なしか⋯⋯ならば」
--
俺は逃げるニュアル様の脚の腱を斬った。もちろん致し方なくだ。
「きゃあ!」
その場に倒れ込んだニュアル様はすぐさま俺に命乞いをする。
「よ、よせデュート!」
俺は挨拶がわりに剣を薙いだ。
血飛沫といっしょに指が2、3本、宙を舞う。
「指がぁあああ!」
なぜだろう。悲鳴をあげてのたうちまわるニュアル様が次第に鬱陶しく見えてきた。
おとなしくさせるためにお次は腹部に剣を突き刺してやった。
「すこし静かにしていただけませんかニュアル様」
「ぐはぁ!」
はじめ、殺せと言われたときは驚いたが、王家といえども家庭内の事情は複雑。
とくにラムダなんかはニュアル様のことを相当拒絶してたからな。
まぁ、気持ちは分からなくない。あんな幼子が新しい母親なんて言われたら俺でも抵抗がある。
「イタイ⋯⋯イタイ」
「そろそろ片付けるとするか」
***
俺は白い布に包んだニュアル様の首を国王様に差し出した。
「でかしたぞ。勇者」
「はッ」
中身をあらためてもらうため俺は布の結び目をしゅるりと解いた。
--パチンッ--
「ぎゃあああああ!」
ニュアル様の首を見た瞬間、国王様が叫んだ。
生首なんて見慣れているはずなのに玉座から転げ落ちてまで驚いている。
「ラムダ!ラムダ!ラムダ!」
国王様はなぜかニュアル様の首に向かってラムダの名前を呼ぶ。
「何のマネだ勇者よ」
涙を流しながら俺を睨みつけてくる国王様に俺は混乱した。
俺はハッとしてすぐさま確認すると俺が持ってきたはずのニュアル様の首はラムダのものだった。
俺は思わずその場に嘔吐した。
すると--
「どうも~」
訳が分からなくなっているところに誰かが気の抜けたような声で俺に声をかけてきやがった。
「どうも徳永でーす」
「⁉︎」
声をかけてきたのは俺にあっさりと斬られたはずの少年だった。
「大丈夫すか? お兄さんがさっきまで大切そうにしていた人をメッタ刺しにしてたんで俺、心配しましたよ。
あのお姉さんずっとお兄さんの名前を呼びながら『やめてくれ、やめてくれ』って言っているのにお兄さんやめなくて。
何度も何度もお姉さんのお腹を夢中になってズタズタ刺し続けてるから、見ているこっちが怖くなっちゃいましたよ」
「なんだと⋯⋯」
--
「デュートはやりすぎるところがある」
今になってラムダに諌められたときの言葉が頭を過ぎる。
俺は熱が入ると止まらなくなる癖がある。
そのときも衝動が抑えられず俺は何度もニュアル様の身体に剣を突き刺した。
それがまさかラムダだったなんて⋯⋯
「よせデュート、私だ! デュート、もうやめてくれ⋯⋯」
「ハハハハハッ」
刺しているあいだ笑いが止まらなかった。
--
「あのときのお兄さんすっごく楽しそうでしたよ」
「あ“あ”あ“あ”ーッ!」
「あッ! いっけねー、言い忘れてました。俺の人差し指には紋章があってこれをパチンっと鳴らすと
皆さんに幻覚を見せることができるんですよ」
「⁉︎」
「しかし、ここにいる私は本物だがな」
今度は生きているニュアル様が姿を現した。
「ニュアル⁉︎」
「フェンリファルトで何があったかはすでに私にも聞き及んでおる。国王、これが帝国に対するそなたの返答という訳だな」
「違うッ! ニュアル!、これは、これは何というか致し方なかったのだ!」
--パチンッ--
「この魔物どもがーッ」
こいつらが魔物と呼ばれている意味がようやく理解できた。
俺はトクナガとかいうこのクソガキを押し倒して、すぐさま馬乗りになった。
お前に見せられてきた幻想をここでぶち壊さなくては、現実が悪夢に変えられてしまう。
俺は何度もガキの腹部に剣を突き刺した。
「よくも、よくも、よくも」
このガキにもうニヤけた顔はさせねぇ。
俺がラムダにしてしまったことをかき消すように何度も何度も--
--パチンッ--
「勇者様がご乱心だーッ!」
「ひっ⁉︎ 国王様が⋯⋯」
「⁉︎」
悲鳴をあげる兵士たちの言葉に耳を疑った。
おそるおそる視線を落とすと我が剣に貫かれていたのは国王様であった。
「ニュアル・ウルム・ガルシャードが命じる。その者の首をはねろ」
「ーーえ?」
--
***
月野木天音視点
「透明化能力が解けるぞーッ!」
沼田君の能力である透明化が解除されて、できたばかりのコンクリート造りのお城が姿を現した。
このお城が直前に完成していたおかげで私たちは難を逃れることができた。
だけど畑の野菜が⋯⋯
手に取った葉っぱは黒く焼け焦げていて、風が吹くと同時に散りとなって運ばれていった。
杏樹ちゃんと国城さんと一緒に畑の様子を見に来たけど炎に包まれた畑は無残なものだった。
「せっかく月野木さんが育てた野菜さんたちが」
「何ということを」
「あの人たちですね。月野木さんの畑をめちゃくちゃにしたのは」
前を向くと、銀製の高レベルな槍を持った青髪の男の人と武装した兵士たち20人くらいが私たちのいる畑を取り囲んでいた。
「貴様たちが魔物だな。たとえ女、子供であってもダルウェイル“一”と称されたこの槍使いバトスが容赦しない」
「ここは私たちに任せて月野木さん」
「杏樹ちゃん⋯⋯」
女の子3人、いや実質2人でこれだけの数って大丈夫かな?
しかもアタッカー系能力者は杏樹ちゃんだけ⋯⋯ひょっとしてマズイかも。
「俺も手伝うすよ」
そう言って三鷹壮馬(みたか そうま)君が応援に駆けつけてきてくれた。
「俺はあの槍の人をやるっす。広範囲攻撃なら小鳥遊さんにお任せするっす」
「はい。承りました」
「槍の人、俺が相手っす」
三鷹君はそう言いながらバトスと名乗る人物を相手にファイティングポーズの姿勢を取った。
「随分と威勢がいいな。しかも素手で勝負とはいい度胸だ。いいぞ相手に申し分はない。まずはこれでも喰らえ!」
バトスという槍の人はいきなり三鷹君の腹部に槍を突き刺してきた。
「どうだ? 私の槍の味は」
「蚊でも刺しましたか?」
「は?」
よく見ると槍の先端が三鷹君の身体に触れているけど刺さっていない。
三鷹君はYシャツを脱ぎ捨てて、筋肉が隆起しているすばらしい肉体美を披露した。
そして右の上腕二頭筋にある紋章が光る。
三鷹君の能力は全身を鋼色に変化させて鉄化させること。
「なめるな!」
槍の人は、今度は連続で攻撃を繰り出した。
だけどその槍は三鷹君の身体に当たるたびに“キンッ”と、音を立てて弾かれてしまう。
「今度は俺の番でいいすか?」
そう言って三鷹君の拳が槍の人の腹部にめり込む。
「ぐはぁ」
今の一撃で大量の血を口から吐き出してその場にうずくまった。
「いやだなぁ。今のは軽い挨拶だったんすけど。内臓潰れちゃった系ですか? お兄さん案外弱いすね」
「--」
「アレ?」と、言いながら三鷹君はうずくまった状態の槍の人の顔をのぞき込む。
「マジッすか⁉︎ 今ので死んじまうなんて驚きっすよ」
「次は私たちの番ね。カエナお願い」
国城さんは杏樹ちゃんの背中に向かって右手を翳して紋章を発現させた。
「体力向上、能力拡張、メンタル強化!」
国城さんが呪文のような言葉を唱えると、杏樹ちゃんが髪を逆立てながら紫色したオーラを纏った。
「さっさと来やがれ野蛮人ども!」
ええーッ、さっきチラッと聞こえたメンタル向上ってそういうこと?
大胆になった杏樹ちゃんはスカートを割いてスリットを入れると、右の太腿を高くあげて、
紋章をスリットの隙間からチラ見せする。
いくら顔の見えない兜をつけていても兵士たちが鼻の下を伸ばしていることは容易に分かった。
「下に注意するんだな。暴食の混沌(カオス)!」
杏樹ちゃんが叫んだ瞬間、地面にブラックホールのような空間が現れた。
そこから紫色した腕がいっぱい伸びてきて、兵士たちの体を掴んでは空間の中にに引きずり込んでいく。
その間、ずっと兵士たちが断末魔のような叫び声を上げている。
空間はやがて開けた口を閉じるかのようにして狭まっていき、ボリボリと噛み砕くような
咀嚼音を立てながら、ついにはその中身を飲み込んだ。
「ごちそうさま」
***
ダルウェイル国の王城の玉座にニュアルちゃんが座った。
そのとなりに立つギールさんもどこか誇らしげだ。
私たち7人会議のメンバーはそれを見届けると静かにひざまづいた。
そして陽宝院君が第一声をあげる。
「おめでとうございます。ニュアル様」
「陽宝院、そなたの機転のおかげでフェンリファルトの窮地が救われた。皇帝陛下も大層喜ぶはずじゃ」
「いいえ、滅相もございません。トゥワリスにいる仲間が急ぎ、帝国の異変を知らせてくれたおかげ。
ですが、これもすべてニュアル様が仲間のトゥワリス行きを許可して下さったおかげです」
どうやら肥後君からの知らせは油の買い占めだけではなかったようだ。
***
『よこしてくれた紫芝たちなんだけどよ。おおいに活躍してくてるぜ。あっという間に暗部を支配しちまった。
おかげでこっちは大儲けさせてもらっている。たしかウォーリアーなんて、今は名乗って活動してるぜ」
「そうか。それなら何よりだ。僕が選定した甲斐があるってものだ」
「それより陽宝院、今トゥワリスではフェンリファルト帝国の皇太子が殺されたことで話題が持ちきりだ。
なぁこの皇太子ってもしかしてニュアルたんの⋯⋯」
***
「鷲御門。今のお前には私がどう見える?」
「狭い鳥籠からようやく出れた小鳥のようかと」
「同感じゃ。だが⋯⋯飛び立つにはまだまだ視界不良じゃ」
「は?」
「そなたたちには今しばらく苦労をかける。そなたらエルム国と同盟を結んだ限りにはよろしく頼む」
「「はッ」」
「なあそなたら⋯⋯国王はあれでも曲がりになりに、私を気にかけてくれていたのだ」
私も“歳の近いそなたたちが側にいてやってほしい”と言っていた国王様の顔が今も忘れない。
「かりそめであっても私たちは家族であった。娘のラムダには好かれていなかったがな。まぁ無理もない。
それにお父様の顔も見たことないのだ。そうであってもかりそめであっても身近な家族を失うのというのは辛いのう。自由になるとはそれほどまでに代償が必要なのか⋯⋯」
ニュアルちゃんは目に涙を溜めて天井を見上げた。
「そなたら今日だけだぞ。今日見た私の顔は忘れるのだぞ。ぜったいだ」
そう言ってニュアルちゃんは声を上げて泣きじゃくった。
それは年相応の女の子のように--
つづく
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