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ー辺境の花嫁ー        ❉

てんやわんやのニスラス国。

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「大変です!! イグニスとの国境沿いにアラスタ帝国の軍が!! 」
「何!? どう言うことだ!! 」
「わ、分かりません!! 」
飛び込んで来たへいしに、国境を守るニスラスの辺境伯は驚きに声をあげた。

「開戦など聞いてないぞ? 王都から伝令は届いているのか!? 」
「いえ、伝令は届いておりません!! 」
伯爵家に使える家令は青ざめ首を振る。伯爵は机の上で両拳を握り締めた。

「直ぐに王都に伝書鳩を飛ばせ!! 指示を仰ぐぞ!! 」
伯爵は家令に命令を出す。

「我が軍を国境砦に集中させろ!! コチラから手は出すなよ!! 」
「「は、はい!! 」」
兵士と家令は返事をして部屋を大急ぎで出ていった。

伯爵は窓から空を仰ぎ見る。今迄動かなかった帝国が動いたのだ、もし戦になればどれ程の被害が出るか考えるだけに恐ろしい。なにせ帝国には【死神】と呼ばれる剣鬼がいるのだから。

「いったい、何が起こったんだ…… 」
伯爵は空を飛んでいく鳩を祈るように見つめた。


ニスラス国王都、王城。

「アラスタ帝国軍がイグニス国の国境に現れだと!! 」
伝書鳩が届いてニスラスの王城は、てんやわんやである。

「陛下、アラスタ帝国から書状が!! 」
「宣戦布告か!! 」
会議室に集められた重要貴族達は、アラスタ帝国からの書状を運んできた宰相に目が集まった。

この世界にはルールがある。戦争を、国同士の争いには宣戦布告をし、その日から半年間は開戦してはならない。相手国の交戦準備を待たなくてはならない。その間に交渉をし、開戦をさける話し合いもなされる。しかし奇襲で開戦する事も出来る、が他国から卑怯者と蔑まれシカトされ色々とボッタクられても致し方ないとされる。自国で全てを賄える国なら話が別だが、それ程の国力を持つ国はアラスタ帝国くらいしか見当たらない。その帝国は常識国であった。帝国と名は仰々しいが、強者の強みか戦火を開かせないよう圧力をかけ世界の平穏を維持して来た。それでも圧力をに屈しない国は、コテンパンにして正していた。

その帝国が宣戦布告をするなど考えられぬが、軍が既に動いているとなると開戦の準備と交渉の準備をしなくてはならない。

「宣戦布告か!? なんと書いてある!! 」
「は、はい…… 」
宰相は書状を開いて、押し黙った。

「なんと書いてあるのだ!! 読まぬか!! 」
焦れた国王が叫ぶ。

「イグニス国の正統なる血統のカサンドラ王女を娶った我がアラスタ帝国は、花婿となったフランク・フォン・シトラス公爵をイグニスの王配として指示する。」
「なっ、なに!! どう言うことだ!? 」
アラスタ帝国が死神と呼ばれるフランクをイグニスの王配にすると言ってきたのだ。

「なぜ、急にアラスタがイグニスに介入する? イグニスとは同盟国であって、今迄何もしてこなかったではないか!! 」
国王の言葉に集まっていた貴族達も頷く。

「正統なる血統カサンドラ王女の王位継承をアラスタ帝国が後ろ盾となり、女王とする。諸外国にも指示を取り付け、署名を募っている。最後の方に、王の署名と国印を提示して欲しい。イグニスの正統なる血統の復活を強く願う。邪魔するとならば、アラスタ帝国が話し合いに応じる。」
宰相はアラスタ帝国からの書状を読んだ。
 
「イグニスの正統なる血統とはどう言うことだ!! 」
「カサンドラ王女とは何者だ!! 」
「アラスタ帝国が、なぜ絡んでくる!! 」
「状況を確認しろ!! 」
会議室に貴族達の怒号が飛ぶ。

アラスタ帝国はイグニス国の正統なる血統の王家の復活を諸外国に申請という形で圧力をかけてきたのだ。現イグニス国国王はイグニス王家の血を引いていないと、正統なる血統の復活を表向きにニスラス国にも打診してきたことになる。現イグニス国王の後ろ盾であるニスラス国に。

話し合いに応じるは、邪魔するなら【やっちゃうよ】である。

「ええぃ!! 早くイグニスに連絡を取れ!! 」
ニスラスの国王は、大声で叫んだ。

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