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学園主体の舞踏会。

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「武道会!? 」
ロロリイは目を煌めかせ、眼鏡君を壁に追い詰めた。

「ああ、新入生歓迎の舞踏会を開くんだよ。」
「武道会……。」
ロロリイは乙女のようにうっとりと微笑んだ。舞踏会だけどな。眼鏡君、間違えて聞いてるぞ。

「私、武道会なんて初めて。ずっと行きたかったの。嬉しい! 」
ロロリイは普通の女子のように喜んだ。舞踏会だけどな。眼鏡君、間違えて喜んでるぞ。

「学園主体の舞踏会だから、それ程格式張った物ではなく気軽に参加をしていいんだ。」
「知らなかったわ、学園で武道会があるなんて。お姉さま達が聞いたら羨ましがるわ。」
ロロリイは嬉しそうに、拳を握った。

「強制参加の学園行事だよ、エスコート役もいらないから。」
「ああ、(武器は)何にしようかしら。」
ロロリイは聞いてなかった、既に頭の中は武道会でいっぱいだ。

「昼間に行うからあまり派手にならないように。」
「派手に? 」 
(武器は無してことかしら? )

「みんなで集まって、まあ顔合わせのようなものさ。」
「まあ、そんなに沢山の人と手合わせできるのね。」
ロロリイは嬉しすぎて眼鏡君の手を思い切り掴んだ。

「痛い!! 痛い、痛い!! 」
「あら、ごめんなさい。」
ロロリイは謝って手を放した、そして踵を返す。

「明日の為に準備(体の調節)をなくっちゃ。」
ロロリイは楽しそうにスキップをしていた。

「あ、生徒会から貸し出しの衣装もあるよ。」
「ありがとう、それくらい(戦闘着)持ってるわ。」
眼鏡君はロロリイが貧乏旗本、子爵だと思い出してドレスの貸し出しの事も伝えた。しかしロロリイは笑顔で持ってると応えた。

ドレスじゃなく戦闘着だけどな。気付いてくれ眼鏡君。

「そうだ、クマさん。」
「クマさん? 」
「アライグマさん。」
「アライグマ? 」
「違った、ラスカルさん。」
眼鏡君は引き攣った笑い顔をロロリイに向ける。彼には何故ロロリイが自分を『クマ』と呼ぶのか分からなかった。ただ、自分の名前で大笑いされた事は根深く覚えていた。

前世の彼女にしか分からない、笑いのツボだからな。

「私のライバル、悪役令嬢は参加するのでしょうね。」
ロロリイは再び眼鏡君を壁に追い詰めた。ロロリイのピンクの瞳は闘志に燃えていた。

「悪役令嬢? 」
「キラキラ様達の婚約者よ。」
「婚約者……。」
眼鏡君の声が低くなった、青い目が鋭く細められる。ロロリイは鋭く感じ取り、ますます目を輝かせる。

(ふふふっ、クマさんも今から燃えてるのね。でも、悪役令嬢達は私の獲物よ。)

とんでも無い事を考えてるぞ、眼鏡君!! 

「王子達の婚約者の皆様も舞踏会には参加します。」
「そう、楽しみだわ。」
ロロリイは不敵に笑った。

「彼女達は高位貴族ですし、婚約者達が傍にいて近寄ることはできませんよ。」
不敵に笑うロロリイを牽制するように眼鏡君は言った。

「攻略対象、恐るるに足りぬ。」
ロロリイにとっては既に攻略対象は攻略済み。別の意味でのな。

「悪役令嬢、悪の名を持つ令嬢。きっと、とっても強いんでしょう。」
ロロリイは両手の拳を握りしめた。微かに体が震えている、武者振るいだ。

「でも、ロロリイは負けない。」

ロロリイは踵を返して走り出した、明日の武道会に向けての体作りだ。その時に精神と肉体をピークに持って行く為に。

武道会じゃなくて、舞踏会だけどな。

呆然と残される眼鏡君は、ロロリイが何をしようとしているのか薄々勘づいた。

「だが、まさかそんなことは……。彼女と違って婚約者は普通の令嬢だ。」
眼鏡君は首を振った。

「舞踏会で、負けないと言えば……ダンス。そう、ダンスだ。」
眼鏡君は、そんなことはないと自分に言い聞かせた。



次の日、ロロリイはゆっくりと戦闘着を纏い武道会会場に向かう為に部屋を出る。

武道会じゃなくて、舞踏会だけどな。

「エボック家の名にかけて、負けるわけにはいかないわ。」
ロロリイは呟くと、真っ直ぐ武道会会場を見詰めて歩き出した。

悪役令嬢の運命はいかに。





    
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