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俺と父の男泣きと、婚約者の優しさ。
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「おーほほほほほっ!! お兄様、お頭が寂しくなられたそうですね。」
カノンが嬉しそうに高笑いをする。
「オスカー様なんて、ハゲればいいんです。」
「そうだハゲて、ざまぁされろ!! 」
アルトと叔父の呪いの言葉が、木霊する。
「オスカー様、私……。頭の寂しい方は、ご遠慮したいのですが……。」
「待ってくれ、ルミナス。」
「お許しください、オスカー様。この婚約は無かったことに……。」
目を反らし囁くルミナスは、駆けていってしまう。オスカーはその場に膝を付いた。
「待ってくれ!! ルミナス!! 」
「おーほほほっ!! ざまぁですわ、お兄様。頭だけではなく、心まで寂しくなりましたわね。」
「オスカー様、ざまぁです!! 」
「ざまぁだな、オスカー君。いや、我が息子よ。」
カノンとアルトとオルグが、ざまぁと攻め立てる。
「やめろ、やめてくれ!! 」
「どうした!? オスカー!! 」
バァァァン!! と、ドアが音をたてて開いた。オスカーの叫び声に父オルガが駆けつけた。
「ゆ、夢………。」
ガバッと、オスカーはベットの上で目覚めた。はらはらと髪が舞い落ちる。
「大丈夫か、オスカー。」
心配そうに覗き込んだくる。
「父さん、何故あんな奴等が従兄弟なんですか。どうして、あんなに我がままなのですか? 」
オスカーは理不尽に父親を責め立てた。
「すまん、オスカー。」
オルガは、申し訳なさそうに俯いた。
「いえ、申し訳ありません。父さんの所為では無いのに。」
「すまん、オスカー。」
オルガは、息子に謝りを入れる。
「すまん、オスカー。」
「父さん? 」
謝る父親を見てオスカーは目を見開いた。目の前に輝くスキンヘッド。スルリと、オルガは黒い髪を頭から取った。
「うわぁぁぁぁ!! 嘘だーー!! 」
オスカーは叫んだ。
バァァァン!! と、ドアが音をたてて開いた。オスカーの叫び声に父オルガが駆けつけた。
「どうした!? オスカー!! 」
ガバッと、オスカーはベットの上で目覚めた。はらはらと髪が舞い落ちる。
「はぁ、はぁ、はあ、」
「オスカー、大丈夫か!! 」
オルガは息子の肩を揺す振った。オスカーの目に、父親の艷やかな黒髪が揺れる。オスカーは、ガシッと父親の頭を掴んだ。
「髪、髪、カツラではなく、本物ですか!? 父さん!! 」
必死の形相のオスカーに、心意を感じた父オルガは息子を抱きしめた。
「本物だ、本物だぞ、オスカー。安心しろ!! 」
オルガは強く強く、オスカーを抱きしめた。
「私の頭皮は弟の我がままに耐えた。お前は私の息子だ、お前の頭皮も耐えられる。」
「父さん!! 」
今一番欲しい言葉をオスカーは父オルガから聞いた。親子は強く強く抱き締めあい、男泣きしながら絆を確かめあった。
「お嬢様、頭には『わかめ』と言う海藻が良いそうです。」
「海藻? 海の中のあの緑色の……。」
「はい、海の中の草です。」
「草なの……。」
「草です。」
ルミナスは自分の屋敷に帰ってきて、侍女のリンダと共に頭の髪に関することを勉強していた。
「ジパングと言う島国での民間療法みたいなものです、お嬢様。」
「民間療法でもいいわ、オスカー様は気になされているようでしたから。」
ルミナスは持っている本を閉じた。
「その海藻を頭に貼り付ければいいのかしら? 」
「いえ、食するようです。」
「草を? 」
「はい、草を、です。」
ルミナスは意を決したように顔を上げた。
「わかりました、その海藻を入手して下さい。そして、『ワカメ』の料理法の本を。」
「はい、お嬢様。」
侍女のリンダは近くのメイドに支持を出す。メイドは注文する為に部屋を出ていった。
「でもリンダ。私は例えオスカー様の頭が寂しくなられても、私の気持ちは変わらないわ。」
ルミナスは静かにソファに腰を下ろしながら言った。
「お嬢様。」
「オスカー様は、スキンヘッドでも格好いいと思うわ。」
リンダは静かに首を振った。
「お嬢様。殿方にはそうは行かないのです。特に若い頃は。」
リンダは諭すようにルミナスに言葉をかける。
「髪を失って、自信を失う場合もあるのですルミナス様。」
「自信を……。」
「そうです、自信を失って閉じこもったり。昔の自分を知る者のいない場所に逃げ出したりするかも知れません。」
「そんな……、オスカー様が? 」
「分かって差し上げて下さい。殿方は、頭皮に関しては硝子のように繊細なのです。」
ルミナスはリンダの言葉に目を瞑って頷いた。
「……リンダ。もし、オスカーが心を病むのなら私は覚悟を決めます。」
「お嬢様。」
「その時は、髪を切ります。」
「そんなお嬢様、修道僧になられるつもりですか? 」
ルミナスはリンダの言葉に首を傾げた。
「私は、オスカー様の為に髪を切ってカツラを作って差し上げるつもりです。」
「お嬢様……。(なんて健気な。)」
「その為には、より一層の髪の手入れをしなくては。」
「はい、お嬢様。」
「オスカー様は、茶色の髪でもきっと素敵ですわ。」
ルミナスはリンダに微笑んだ。
カノンが嬉しそうに高笑いをする。
「オスカー様なんて、ハゲればいいんです。」
「そうだハゲて、ざまぁされろ!! 」
アルトと叔父の呪いの言葉が、木霊する。
「オスカー様、私……。頭の寂しい方は、ご遠慮したいのですが……。」
「待ってくれ、ルミナス。」
「お許しください、オスカー様。この婚約は無かったことに……。」
目を反らし囁くルミナスは、駆けていってしまう。オスカーはその場に膝を付いた。
「待ってくれ!! ルミナス!! 」
「おーほほほっ!! ざまぁですわ、お兄様。頭だけではなく、心まで寂しくなりましたわね。」
「オスカー様、ざまぁです!! 」
「ざまぁだな、オスカー君。いや、我が息子よ。」
カノンとアルトとオルグが、ざまぁと攻め立てる。
「やめろ、やめてくれ!! 」
「どうした!? オスカー!! 」
バァァァン!! と、ドアが音をたてて開いた。オスカーの叫び声に父オルガが駆けつけた。
「ゆ、夢………。」
ガバッと、オスカーはベットの上で目覚めた。はらはらと髪が舞い落ちる。
「大丈夫か、オスカー。」
心配そうに覗き込んだくる。
「父さん、何故あんな奴等が従兄弟なんですか。どうして、あんなに我がままなのですか? 」
オスカーは理不尽に父親を責め立てた。
「すまん、オスカー。」
オルガは、申し訳なさそうに俯いた。
「いえ、申し訳ありません。父さんの所為では無いのに。」
「すまん、オスカー。」
オルガは、息子に謝りを入れる。
「すまん、オスカー。」
「父さん? 」
謝る父親を見てオスカーは目を見開いた。目の前に輝くスキンヘッド。スルリと、オルガは黒い髪を頭から取った。
「うわぁぁぁぁ!! 嘘だーー!! 」
オスカーは叫んだ。
バァァァン!! と、ドアが音をたてて開いた。オスカーの叫び声に父オルガが駆けつけた。
「どうした!? オスカー!! 」
ガバッと、オスカーはベットの上で目覚めた。はらはらと髪が舞い落ちる。
「はぁ、はぁ、はあ、」
「オスカー、大丈夫か!! 」
オルガは息子の肩を揺す振った。オスカーの目に、父親の艷やかな黒髪が揺れる。オスカーは、ガシッと父親の頭を掴んだ。
「髪、髪、カツラではなく、本物ですか!? 父さん!! 」
必死の形相のオスカーに、心意を感じた父オルガは息子を抱きしめた。
「本物だ、本物だぞ、オスカー。安心しろ!! 」
オルガは強く強く、オスカーを抱きしめた。
「私の頭皮は弟の我がままに耐えた。お前は私の息子だ、お前の頭皮も耐えられる。」
「父さん!! 」
今一番欲しい言葉をオスカーは父オルガから聞いた。親子は強く強く抱き締めあい、男泣きしながら絆を確かめあった。
「お嬢様、頭には『わかめ』と言う海藻が良いそうです。」
「海藻? 海の中のあの緑色の……。」
「はい、海の中の草です。」
「草なの……。」
「草です。」
ルミナスは自分の屋敷に帰ってきて、侍女のリンダと共に頭の髪に関することを勉強していた。
「ジパングと言う島国での民間療法みたいなものです、お嬢様。」
「民間療法でもいいわ、オスカー様は気になされているようでしたから。」
ルミナスは持っている本を閉じた。
「その海藻を頭に貼り付ければいいのかしら? 」
「いえ、食するようです。」
「草を? 」
「はい、草を、です。」
ルミナスは意を決したように顔を上げた。
「わかりました、その海藻を入手して下さい。そして、『ワカメ』の料理法の本を。」
「はい、お嬢様。」
侍女のリンダは近くのメイドに支持を出す。メイドは注文する為に部屋を出ていった。
「でもリンダ。私は例えオスカー様の頭が寂しくなられても、私の気持ちは変わらないわ。」
ルミナスは静かにソファに腰を下ろしながら言った。
「お嬢様。」
「オスカー様は、スキンヘッドでも格好いいと思うわ。」
リンダは静かに首を振った。
「お嬢様。殿方にはそうは行かないのです。特に若い頃は。」
リンダは諭すようにルミナスに言葉をかける。
「髪を失って、自信を失う場合もあるのですルミナス様。」
「自信を……。」
「そうです、自信を失って閉じこもったり。昔の自分を知る者のいない場所に逃げ出したりするかも知れません。」
「そんな……、オスカー様が? 」
「分かって差し上げて下さい。殿方は、頭皮に関しては硝子のように繊細なのです。」
ルミナスはリンダの言葉に目を瞑って頷いた。
「……リンダ。もし、オスカーが心を病むのなら私は覚悟を決めます。」
「お嬢様。」
「その時は、髪を切ります。」
「そんなお嬢様、修道僧になられるつもりですか? 」
ルミナスはリンダの言葉に首を傾げた。
「私は、オスカー様の為に髪を切ってカツラを作って差し上げるつもりです。」
「お嬢様……。(なんて健気な。)」
「その為には、より一層の髪の手入れをしなくては。」
「はい、お嬢様。」
「オスカー様は、茶色の髪でもきっと素敵ですわ。」
ルミナスはリンダに微笑んだ。
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