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世界が変わる日。

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四人の公爵達は邪神の存在を感じていた。神の封印の石を壊すことは邪神には出来ないはず。唯一出来るとすれば、その石に力を注ぐ血族を抹殺すること。既にその封印に力を与えた神は地上にはいない、その封印を維持するための血族を殺すことで封印は無効化される。

だが石は、塵と化し消えた。
そんなことが出来るのは聖者のみ。それはつまり、聖者リンネルが封印を解いたことになる。何も知らないリンネルが邪神に騙され封印を解いたに違いない。だが何故だか、封印をしていた時の悪意は感じられない。そう、それはまるで……


「神の呪いとは、神の行い。生きとし生けるものは表裏一体、見るものによっては私も邪神となります。我々は意思として漂うものが、人間の思いで神となるのです。」
アンジェラスは話し続ける。

「人間が神を作り、神が人間を導き裁くのです。それ故、神は祭られる事で天に上りこの地への関わりを希薄にするのです。そうしなければ、神は独裁するものとなってしまうからなのです。」

「貴方は邪神のして生まれた、邪神として生まれたものは半心しか持たず個としての神になれないのです。」

「完全体の神へとなるために封印をされ、時を流れるのです。聖神と生まれた神も最初は半心として生まれます、聖神は人間の悪意に触れることにより完全体の神となり個として存在を手に入れるのです。」
 
「しかし、邪神のして生まれたものは善意に触れることは少なく、時をかけなければ完全体の神となることはできません。」

「それでも、意思を持つものとして邪神は封印の中で狂い暴れ自らを壊し、霧散するものが殆どです。神になれず消えゆくもの……。」

「だが貴方は違う、貴方には聖者がついていた。聖者の善意に触れ、貴方は今半心ではなく表裏一体の完全体の神へとなったのです。」

「善の意思を受け入れ、貴方は何を行いますか。」

女神アンジェラスは優しい目を、邪神であったリンネルに向ける。

リンネルの空のように青い瞳に、太陽のように輝く強い悪意のある瞳に、女神は呼吸を忘れた。

リンネを引き込もうとする黒い靄が、リンネルの胸に吸い込まれていく。そして体を通り抜けたものはリンネルの背中から、まるで翼のように白に霧を発生させた。

祈りの鐘にその姿が映り込む、その姿は白銀の髪を持つ天使のようであった。天使の羽根が飛び散るように白い霧は、霧散する。

「貴方の愛が、届きますように。」
祈りの女神は、リンネルのために祈った。その祈りは、呪いから逃れたリンネの弱った魂に再び火をつけた。

リンネルの腕の中でリンネが動く。
「リンネ!! 」

静かにまぶたが上げっていく、リンネの黒い瞳にリンネルが写し出される。
「だれ? 」

リンネは自分を抱き締める、銀髪の青年に首を傾げた。

「リンネ!! 」
「ぐぇっ!! 」
リンネルは強くリンネを抱きしめた。女神アンジェラスは温かい目で二人を見つめていた。



「えっ、雨? 」
セラミドが手をかかげた。
「いえ、雨と言うより霧……。」
ウェンディ公爵が娘の後に続く。

旧アンゼラスに、呪われた大地に霧のような雨が降る。空には雲はなく太陽が光っていた。だがその雨は大地を浄化するように降り続く。それは紛れもなく浄化の雨であった。


その日、邪神が表裏一体の神へと変って世界が変わった。

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