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知恵熱。

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セルビィは、熱を出した。

セルビィ物心ついて、初めての 体験であった。
(僕は、死ぬのでしょうか? )
体中が熱くて、怠い。

「ううっ、ごめんなさい。セルビィ。」
「「「しっかりして、セルビィ君。」」」
令嬢達は、泣いている。

(姉様達を置いて、死ぬ訳には いかないのです。)
初めての熱に セルビィは、不安になっていた。
(母様も、こんな気持ちだったの ですね。)
走馬灯のように、過去が蘇る。
(母様も、僕達を置いて逝かれる時。どんなに不安、だったでしょう。)

「て、天使よ!! セルビィよ、死ぬな!! 」
父セラムが崩れ落ちて、泣き叫んでいる。
(ああ、父様には 任せられない。不安です。)
セルビィは、神に祈るように手を組んだ。
(母様、まだ 僕を呼ばないで。僕は まだ、死ぬ訳にはいかないのです。)
※セルビィは、神を信じていないので神には祈りません。
「ね、姉様。」
「セルビィ!? 」
「「「セルビィ君!! 」」」
「天使よ!! 」
セルビィは、弱々しく手を差し出した。それをしっかりと、セルビアは捕まえる。
「僕は、死にません。死ねません、姉様達を 幸せにするまでは。」
「セルビィ!! 」
「「「セルビィ君。」」」
「うおおお!! セルビィ!! 」



「うるせぇ!! てめえら、部屋に帰れ!! こいつのは、只の微熱だ!! 」
重症者の最後のように接する令嬢達・父親に、ナルトは叫んだ。
「こんな、意識のしっかりした重症者がいて溜まるか。」
ナルトは、セルビィの頭に濡れ布を置いた。
「寝れば、明日にはケロッとしているさ。だから、散れ。」
シッシッと、ナルトは令嬢達・主人? に手を払う。
「僕は、死なないと? 」
「死ぬか。これ位で死んだら、そこら辺死人ばかりだ。」
親子共々、健康優良者のセルビィ・セルビアには病気の辛さは解らなかった。だから、少しの熱に右往左往していた。
ナルトは、セルビィに人差し指を向けた。
「お前のは知恵熱。思考が追い着かず、熱を出したんだ。」
ナルトは令嬢達を、見る。
「理由は、分かるよな。」
「「「「 !! 」」」」
令嬢達は、この世の終わりように俯いた。
「こいつは、俺が見るから部屋に戻れ。」
令嬢達は、静かに頷いた。
「さあ、セラム様も部屋へ戻りなさい。」
「しかし、天使が。」
「大丈夫です。」
ナルトは微笑みながら、セラムの背を押した。
「だが、天使が。」
「大丈夫です。」
ナルトの微笑みは、ボルトの微笑みと似て。
「我が天使が。」
「大丈夫です。」
ナルトは、セラムを部屋から蹴り出した。
「て、天使よ!! 」
静かに閉まる扉に、セラムは縋り付く。

「この頃、ナルト様。ボルト様に似てきましたね。」
「ええ、扱い方ね。」
アイリーンが言うと、テレジアが応えた。
「なに言ってるの? 全然、似てないわよ。ボルト様は、知的でクールで。」
セルビアが否定する。
「はいはい。セルビアは、恋のカーテンが掛かっているから。」
リリアナが、セルビアの肩に手を置いた。
(((主人に対して、暴力的なところがそっくりよ。)))
令嬢達は思ったが、口にはしなかった。
「ボルト様は、あんな風に脅したりしない。」
「 !? 」
セルビアは気づいた。
あの本の事を。
「死にたい。」
ボソリと、呟く。
「ボルト様にセルビィに『乙女の秘密』を、知られてしまったわ。」
顔を蒼白にして、
「死んでしまいたい!! 」
セルビアは走り出した、テラスの方に。令嬢達は慌てて追い掛ける。
「落ち着いて、セルビア様。」
「早まらないで!! 」
「待てえ、こらぁ!! 」
走り去る令嬢達と扉の向こう側の天使に挟まれて。
「早く帰って来てくれ、ボルト。」
セラムは不安のあまり、涙した。


「僕は、死なないのですか? 」
「死なん。」
「でも、体が怠いです。」
「熱があるからな。」
「体が、熱いです。」
「熱があるからな。」

「僕は、死なないのですか? 」
「死なん。」
「でも、頭がくらくらします。」
「熱があるからな。」
「考えが、まとまりません。」
「熱があるからな。」

「僕は、死なないのですか? 」
「死なん。」
「でも、」
「死なんと言ったら、死なん。」
ナルトは、セルビィに畳み掛ける。
「病気の人の気持ちが、少しは分かったか。」
「辛いです。」
セルビィは息を吐くように呟いた。
「俺は、その数倍も辛かった。分かるか。」
「数倍。」
昔 熱出したナルトは、それでもセルビィに扱き使われていた。健康優良児だったセルビィは、病気の辛さは解らなかった。
「ごめんなさい。」
病気の心細さからか、セルビィは素直に謝った。
「もう寝ろ。目が覚めたら、熱も下がっているから。」
ナルトはそっと、セルビィの目を手で隠した。
「僕は、死なない。」
「死なねぇよ。」
「母様みたいに、死なない。」
「死なねぇよ。」
「僕は・・・」
静かな寝息が、聞こえてくる。ナルトはそっと、手を外す。
「寝たか。」
毛布を整えて、傍を放れようとして立ち止まる。
セルビィが、ナルトの服を掴んでいた。
「しゃねぇなあ。」
近くにある椅子を引いて座る、頭を掻きながら
「少しの間だぞ。」
セルビィの手を取って、微笑んだ。
熱のあまり子供っぽさを出すセルビィを、ナルトは微笑ましく見詰めていた。


「おやめください、お嬢様!! 」
「止めないで、マリア。」
「「「お嬢様、お気を確かに!! 」」」
テラスへ行くのをはばわれたセルビアは、近くの部屋の窓の樋に足を掛けていた。身を乗り出そうとするセルビアを、メイド達は抱きついて止めていた。
「セルビア様、早まってはだめよ。」
「対策を考えましょう。」
「なんとか、なるわ。」

「なるわけないわ!! 」
セルビアはその場に、泣き崩れた。


「何が、あったんだ? 」
学園から戻ってきたボルトは、扉のから部屋の経緯を見ていた。
縋り付くメイド達、泣き崩れるセルビア。説得をし続ける令嬢達。
ボルトは頭を捻った、だから油断した。
「ボルト!! 天使が、天使が!! 」
後から思いっ切りセラムに、抱きつかれた。体が逆くの字に曲がり、勢い余って壁にぶっかった。
「セラム、貴様。」
腰に抱きついているセラムの無防備な背中に、ボルトは手を組み思い切り叩き付けた。
「グェ!! 」
変な声を出して、床に転がる。それでも、何かを呟いている。
「ナルト君に、部屋を追い出されてしまった。」

出て行くときのセラムの姿を思いだし、
「そりゃ、そうだろ。」
ボルトは頷きながら言った。
「俺は心配で、心配で。」
「ああ、そういう時にはな。仕事をして、気を紛らわせればいいんだ。」
ボルトは冷たく微笑んで、セラムの襟首を掴んだ。
そのまま、書斎に引きずり込む。
「いっぱい仕事が、溜まってるからな。」
「違う!! 俺は天使のことが心配で!! 」
「セルビィは、知恵熱だ。お前も知恵熱が出るくらい仕事をしょう、なっ。」

この後、セラムは知恵熱が出るくらい仕事をされられたのは、言うまでも無い。
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