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舞い下りる、天使。

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「姉様達は、来なくて大丈夫です。」
セルビィは、毎朝 同じ言葉を繰り返していた。
姉セルビア達は、やはりセルビィの事が心配で朝必ず付いてこようとしていた。
「一人で、大丈夫です。もう、何回も一人で、来てます。」
「でも、一度は アラン殿下に挨拶を。」
「姉様、大丈夫です。姉様達は、もう 挨拶を済ませてます。」
「でも、」
学園に来る毎日、段々生徒会室に近づいていた。
「何をしている、セルビィ。」
セルビィの後ろ側から、阿呆様の声が聞こえた。
(生徒会室に、近づき過ぎた。)
「アラン殿下。」
セルビア達は、アラン殿下に挨拶をする。
「おはよう御座います。アラン殿下。ご機嫌 宜しく。」
「セルビア。」
セルビア達の挨拶に、顔を赤らめて殿下達は頷いた。
「姉様、これ以上は。王太子殿下達に、御迷惑です。」
「ええ、解ってます。」
弟の言葉に、セルビアは頷いた。
「いや、別に 迷惑では。」
ボソボソ と、呟い顔を反らした。
「アラン殿下、どうか セルビィの事をお願い致します。」
セルビアが憂いを帯びた瞳を、殿下に向ける。
「レイモンド様も、セルビィの事を 虐めないでね。」
リリアナが、愛らしくお願いする。
「エリック様、セルビィ様は 貴族社会の事に疎いのです。優しく、教えてあげて下さいませ。」
アイリーンが、儚く微笑んだ。
「シモン様、セルビィ様は躰が弱く 気をつけて下されば 嬉しいです。」
テレジアが、祈る様に言った。令嬢達に、頼られて阿呆様達は 誇らしげに笑った。
「任せておけ、立派な公爵家に相応し男にして見せよう。」
「有難う御座います。」
令嬢達は、花が綻ぶ様に微笑んだ。そして、後ろ髪引かれる様に 何度も振り返って去って行った。

「本当にセルビアは、私の事を好いているな。」
「ええ、何度も私の事を テレジアは振り返って。」
「アイリーンの あの私に頼り切った態度は。」
「リリアナは、俺に惚れてるな。」

(何、この阿呆様達は。どう見ても、姉様達は僕の心配をしているのに。)

「王太子殿下。生徒会の仕事を、お教え下さい。」
セルビィは、微笑んだ。
その微笑みは、セルビアに似てアランは悪い気はしなかった。
「いいだろう、付いてこい。」


アランは第一生徒会室の立派な椅子に座り、机の上の書類を見せる。
「これが、生徒会員が思案した書類の数々だ。」
「この学園の行事は、生徒会が 行っているのです。」
「資産に運営、その他色々あります。」
「学園の安全確保、もだ。」
偉そうに、四人が言う。
「私が、認めない限り。それが、実行されることは無い。」
アランが、胸を張った。

(やっぱり、疑似国家運営を やってますか。)

セルビィは、手を合わせて微笑んだ。

(の、割には 殆ど傀儡ですね。下の者も、扱いやすいでしょう。)

「阿(阿呆様)、アラン王太子殿下の声が無い限り、総ての事が進まないのですね。流石です。」
「ふふん。そうだろう。」
褒められて、益々胸を張る。
「(頓)エリック様は、資金の物質の業務を。」
「もちろんです。行事の運行には、資金の動きは当然です。」

「祭典や行事の運行は、(珍)シモン様が運んでいるのですか。」
「ええ、神の意による 運行です。」

「(漢)レイモンド様が、この学園を護っているのですね。」
「そうだ、良く解ってるじゃないか。」
レイモンドは、大きな声で笑った。
「僕は、何をすればよいでしょう。」
首を、傾げて見せる。
「そうです。運行の流れを、僕は 見たいです。」
セルビィが微笑むと、エリックが眼鏡の縁を上げながら
「それは、下々のする事です。」
「そうだ。私達は、上から指示をすればよいのだ。」
「私達の言葉は、神の意に等しいのです。」
「俺達に逆らう者など、いゃあしない。」
胸を張って、アラン達は応える。

(だから、良いように扱われるのです。阿呆ですか、ああ 阿呆様でした。)

「はい。ですが、偉大なアラン王太子殿下と、公爵家の方々の指示を 下々の方達がどのように運行するか。運行 資金の流れが、僕は見たいのです。」
セルビィは、アラン達を褒め称える。
「アラン王太子殿下の指示が、どのように繁栄され、結果に成るのか。」
セルビィは、微笑んだ。
「その事を知り、勉強したいのです。必ず、将来の役に立つ筈です。」
そして、下から目線で
「姉様達。いえ 姉上達も、きっと王太子殿下や公爵家のご威光の素晴らしさを解ってくれる筈です。」
セルビィは、姉達の事を囁いて見せる。
「そうか、セルビアにも 私の偉大さが解るか。」
「神の威光を、知ってもらうのは 良いことです。」
「将来、公爵家に入るのですから。そうですね。」
「益々、俺に惚れるな。」
セルビア達の自分等に、注がれる尊敬の眼差しを思い描きながらアラン達は頷いた。
「はい。」
セルビィは、微笑んで見せた。
(姉様達に、恋い焦がれて下さい。その恋は実りませんけどね、今だけです。)

「アラン王太子殿下、第二生徒会員に 御紹介お願いします。」
セルビィは、微笑む。
「いいだろう、付いてこい。」
「はい、喜んで。」
アランはセルビィを連れだって、隣の第二生徒会室の扉を開く。

第二生徒会員が振り向き、アランに頭を下げる。
「今日から、お前達の仕事ぶりを セルビィに見せてやると良い。」
「貴方方は、先輩ですがセルビィは公爵家の者です。」
「公爵家の言葉は、神の意と同じ その事を弁えていますよね。」
「豪の者と、虐めるなよ。俺が、許さん。」
四人が、次々と生徒会員に威嚇する。その後で、セルビィは天使の笑顔を絶やさずにいた。
「将来、私の弟となるセルビィだ。その意味を理解しろ。」
アランは、留めとばかりそう言った。
「セルビィです。ランドール公爵家のセルビィです。先輩方、宜しくお願いいたします。」
殿下達の言葉に、冷や汗を流しながら頭を下げている生徒会員達に セルビィは挨拶をする。
こうして、第二生徒会室に天使が舞い下りた。

これは、セルビィが街に舞い下りる。少し前の話であった。
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