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セルビア・ランドール。

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国の学校は、初等部 中等部 高等部と三つある。
初等部は、十歳から十二歳間での三年 主に庶民が通う学校である。貴族は、その頃。お抱えの家庭教師を、雇っている。中等部では、貴族と金持ちの商人が通っている。主に、貴族と商人の人脈作りの為だ。高等部は、貴族達だけが通い婚姻や家柄の強化為に存在する。一応、礼儀作法や勉学の教科はあるが。


中等部、学園。入園式が終わった、教室内。
取り巻きの公爵の息子三人を連れた王子に、一人の少女が声を掛けた。
「お久しぶりで、御座います。アラン殿下。」
漆黒の髪と瞳を持つ、セルビア 十二歳である。
「誰だ、お前。」
金髪碧眼の王子は、セルビアに対してそう言った。
「この黒い髪。豪の者です、アラン殿下。」
聖教長の息子のシモンが、声を上げた。
「後に、居るのもそうだ。」
軍事総長の息子のレイモンドが、セルビアの後に居る三人の令嬢を見て言った。
「要するに、僕達の婚約者と言う処でしょうか。」
宰相の息子、エリックが推測する。
「みたいだな。」
アランは、不機嫌な顔でセルビア達を見る。
「私は、お前と結婚する積もりは無い。」
「豪の者など、おぞましい。」
「政略結婚は、嫌だな。」
「右に、同じです。」
次々と、四人は婚約無効を言い出す。
「でも、これは国が決めた婚約です。」
「だから嫌なんだ!! 」
アランは、声を上げて言った。周りで見ていた学園生達は、ざわめき立った。

「何の、騒ぎですか? 皆様、席にお付きあそばせ。」
女性が、手を叩きながら教室に入って来る。
担任の教師である。金髪に、緑色の瞳の華やかな女性は教壇に立って挨拶をする。その目は、殿下と公爵子息に注がれていた。誰 憚る事もなく、えこひいき そのものだった。
帰りの挨拶が、終わって殿下達は足早に教室を出て行く。その後を追う様に、セルビアも席を立った。

「ランドールさん、殿下に迷惑を掛けてはいけませんわ。」
教師が、行く手を遮った。
「迷惑なんて。私はただ、アラン様と話がしたくって。」
教師は、口元に手をあて。
「其れが、迷惑だとお解りにならないの?」
哀しそうに、頭を振った。
「豪の者は、立場を弁えなければ成りませんよ。」
優しく、言葉を吐いた。
「立場、て。」
「貴方がたは、領内の援助の代わりに 売られたも同然なのです。」
教師は、ワザと分かりやすく 傷尽く言葉を選んで言った。
「う、売られたなんて。」
「私たちは、豪の者の改善の為に。」
「改善だなんて、在るはずないのよ。貴方たちは、人質でも在るの。」
教師は、十二歳の子供に向かって平然と言った。
「豪の者が、裏切らない様に。ねっ、王都から出た事ないでしよう。」
「そ、それは。」
令嬢達は、俯いた。
「貴方たちは、豪の者にとって足枷でしか ないのよ。」
「でも、私たちは婚約者なのよ。」
セルビアが、教師に言った。教師は、苛立ち。
「だから、立場を弁えろと言っているのよ。」
次々と、傷付ける言葉を浴びせる。
「王家のお優しい心遣い、なのよ。奴隷同然なんて、可哀想でしよ。」
「ど、奴隷。」
とうとう、セルビア以外の令嬢たちは泣き出してしまった。其れだけではない、数少ない豪の貴族子女達も騒ぎを聞き付け集まっている。その者達も、暗い顔で俯いていた。
「婚姻しても、貴方たちとの間には世継ぎは生まれないの。分かるでしょう、豪の者の血筋なんて汚らわしい。」
周りで見ていた、オースト国の子女達は。大人の教師が言っている事に『そうなんだ。』と、蔑んだ目で見始める。
「これで、解ったで」
「お黙りなさい。」
セルビアは、教師の言葉を遮る。手を、握り締めた。
「私は、セルビア・ランドール。ランドール公爵令嬢です。貴方に、そのような事を言われる筋合いは在りません。」
セルビアは、凛とした態度で教師を睨んだ。
「私は、貴方たちの立場を解って貰うために。」
教師は、セルビアの圧力に戸惑う。
「私的の事を、貴方に言われる筋合いはないと言っているのです。」
セルビアは、首を振った。
「いいえ、婚姻に関しては公的な事。それに意を唱えるなら、王家に意を唱えると思って良いのですね。」
「そ、それは。」
教師は、押し黙った。
「私は、ランドール公爵の娘セルビア。私に、意見を述べられる者は。私と同等の爵位を持つ、公爵か王族の者だけです。」
セルビアは、周りのオースト国の子女達を見回した。
「私は、教師として。」
「立場を、弁えなさい。」
セルビアは、強い口調で、
「教師でも、踏み込んではいけない処を 弁えろと言ってるのです。」
言った。
「それでは、これで失礼します。皆様、行きましょう。」
セルビアは、後にいる令嬢達と周りに居る豪の貴族達を見る。ゆっくりと、歩き出す。その背に。
「名ばかりの公爵の、癖に。」
悔しそうに、教師は呟いた。セルビアは、振り向き。
「名ばかりでも、公爵は公爵。意が在るのなら、王家に直接 意を唱えなさい。」
そう言って、セルビアは踵を返した。その後を、令嬢達が追いかける。
セルビアは、女王前として歩き続ける。
(私が、皆を。豪の者達を護らなくては。)
セルビアは、唇を噛み締めた。
(泣かない、決して泣かない。泣くものか。)
豪の者達の為にも、公爵の地位を。名ばかりの王妃でも、その地位を手に入れなくてはならないと心に誓うセルビアであった。


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