明太子

ぽよ

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3話

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 電車に揺られる事10分。窓から見えるのはいつも通りの風景。そして、降りる駅のホームも改札も改札を抜けた先の景色でさえもいつも通り。今から仕事にでも行くのかと錯覚するほどいつも通りである。

「なんかいつもの出勤と同じルートですね」
「私もそれ思ったわ。言わなかったけど」
「そういえば、ここのショッピングモールって先輩は行ったことあります?」
「まぁ2回くらいあるわよ」
「え!買い物とかどうするんですか?」
「別に家の近くにあるじゃない」
「え?そうなんですか?」
「あら、知らなかったんだ」
「来たの去年からなのでまだ詳しく無いんですよ」
「案内してあげるわよ」
「ありがとうございます!またお願いします」

 後輩について行くこと15分。なんとなく見覚えのあるショッピングモールに到着した。初夏の気候で少しだけ暑かったが、建物の中はもはや非常識という言葉が使えるほど冷えていた。
 建物の中は取り立てて特別感があるわけではない。1階には食品、2階には雑貨、3階には映画館。よくある構造のショッピングモールだ。小学生から家族連れ、お年寄りまで幅広い年齢層が来店するのも良くわかる。

「ここで何買うの?なんか特殊なもの?」
「普通の食品の買い物と、服を見ようと思ってます」
「なるほど。じゃあ、服が先になるわね」
「そうなりますね」
「じゃあ、行きましょうか」

 その後はエスカレーターで2階に上がって服屋を目指す。2階は1階より人が多いような気がした。どの服屋を目指しているかも分からないまま後輩についていく。
 迷子になりそうになりながら辿り着いたのはユニクロだった。店内に入り適当に服を眺めながら次の季節の服を探す。その間にも後輩は買う服をカゴへと入れていく。バスケットボールのスーパーゴールのような勢いで放り込まれていく様は見ていて気持ちいいほどだ。7着ほどカゴに入れたところで手が止まり、そのままレジへと持っていく。

「今日買う物って決まってたの?」
「そうですね。安くなってるやつを買い漁る予定でした」
「なんとも豪快ね」
「シーズン毎にやってそれ以外はほとんど服を買わないので逆に経済的の可能性もあります」
「なるほど、確かに」
「いいですよ!気分も爽快ですし」

 ユニクロの服は柄もなく無地の服が多い。変な色さえ選ばなければ誰でも着こなせるチャンスがあるというのも、人気の秘訣だろう。会計が終わった後輩が足早に店を出ていく。置いていかれないように後ろをついていく。

「服の買い物はこれで終わり?」
「そうですね。今日はこれが買いたくて来てたので。なので後は食品です」
「なるほど。随分焦ってるけど何かあるの?」
「タイムセールなんですよ。昼からなのでそろそろ始まるはずなんです」
「タイムセール」
「冷食とか、野菜とかスナック菓子とか安くなるんです」
「随分詳しいけど結構来てるの?」
「私はここしか買い物できるところ知らなかったので、ずっとここに来てますね」
「なるほど、それは大変だわ」
「今度スーパー教えてください」
「ええ、大丈夫よ」

 服の入った袋を持ちながら食品コーナーへと向かう。これからタイムセールがあるというのが共通認識になっているのか、最初に入店した時よりも圧倒的に人が増えていた。
 二人で食品コーナーを歩いていると、既にセールが始まったものも存在しており、割引の値札が貼られた商品は他の棚より明らかに数が減っていた。

「冷食と、野菜、あとチョコレートが食べたい」
「随分色々食べるのね」
「備蓄ですよ!備蓄!」

 笑顔でそう言いながら買い物カゴへと入れていく。せっかくタイムセールがやっているのなら私も食べるものくらいは買っておいて損はないはずだ。
 ひたすら買い物カゴに詰め込み続ける後輩を横目に見ながら莉子も今後必要になりそうなものを買い物カゴへと入れていく。普段のスーパーはいつも安いがセールもチラシもない。そういう点で言えばこっちの方が買い物はしやすいのかも知れない。
 タイムセール品を買い込み、二人とも満足のいく買い物ができたところで、ショッピングモールから離脱した。

「いい買い物ができました。ありがとうございます」
「普段からここで買い物してるの?」
「えぇ、まぁ。休日に買いにくることはなくて、定時終わりの日とかによく来ます」
「なるほど。それだと便利かもしれないわね」
「先輩もどうですか?」
「気分転換ならアリかしら」
「ところで、この後って暇ですか?」
「えぇ、土日は基本的にやることないわよ」
「じゃあこの後は喫茶店でお昼食べてゆっくりしましょう!」

 後輩のこの勢いは大学の頃から何も変わっていない。その変化のなさが羨ましいと思うほど。しかし、友人と喫茶店に行くのも数年ぶりかもしれないと思うと、それも楽しみになっていた。
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