明太子

ぽよ

文字の大きさ
上 下
3 / 50

2話

しおりを挟む
 最近は8時に起きる。その後9時まで布団で寝転がり、眠気が取れるまでスマートフォンを操作するのが習慣になっていた。昨日気合いで家事を終わらせたおかげで何も気にすることなく今日もゆっくりと過ごすことができる。今日の予定はスーパーに買い物に行くくらいだ。休日は休日らしくゆっくり過ごす。今日は家で何をしようかと考えていたところで、チャイムが鳴った。宅配も郵便も頼んだ記憶がない。怪しい人物ならすぐに扉を閉めればいい。インターフォンのモニターもろくに見ずに返事だけをして玄関に出る。

「はい」
「先輩!おはようございます」
「あら、おはよう」
「出かけましょう!」
「まだ私パジャマなのよ」
「あ、すいません!
「どうしようかしら、準備は30分くらいでできるんだけど」
「部屋で待ってます!」
「あらそう?じゃあ準備できたら行くわね」
「お願いします!」

 その言葉を最後に自分の部屋に戻る後輩を見送る。
 つい勢いで30分で準備と言ってしまったけれど、まだ着替えどころか歯磨きすら終わっていない。果たして間に合うのかと肝を冷やしながら準備へと向かう。
 歯磨きを終わらせて、いつもの出勤とほとんど変わらない服を選んで合わせる。大学の頃からの知り合いだというのが幸いして気負うことなく服を選べることが今はありがたい。鞄は元々ほとんど持ち合わせていないので、今回はそれも助かったと言える。化粧はそれっぽく済ませるだけになるが、なんとかなるだろう。なんとかギリギリ30分で部屋を出て隣の部屋のインターホンを押す。

「準備できたわ」
「あ、30分だからそろそろかなーと思ってました!」
「行きましょうか」
「はーい」

 後輩と二人で通路を歩いて階段を降りる。昨日とは逆方向の道だ。特に歩く道がわかっているわけでもないので、後輩の後ろをついていく。
 この町も私が就職した頃と比べると随分と発展した。たった3年間でここまで町は変われるのかと思うほどだ。夜道だと何も見えないほど閑散としていた町にコンビニが建ち、スーパーが建ち、最近はアミューズメント施設まで建設予定が立っている。今回初当選した市長が敏腕らしいとの噂だけは聞いている。これからの発展に期待していいだろうか。
 後輩の後ろを歩くこと10分。駅に到着するが、未だに目的地が分からない。目の前の後輩はルンルンで歩いているが、どうしたものか。

「結局どこに行くの?」
「服屋です!」
「服屋」
「えぇ、服屋」
「この辺に服屋なんてあったかしら」
「会社の最寄駅にあるショッピングモールですよ」
「あぁ、それはなんとなくあった気がするわ」
「行きましょう」

 どんなに急速で発展していても服屋は流石に無いが、会社の最寄駅まで行けば流石にある。不思議だった後輩の行動も理解できた。会社の最寄駅なら定期も使える。これも狙いの内のような気がしている。

「どうしたんですか?行きましょう!」
「あ、うん。行きましょうか」

 元気いっぱいの後輩に連れられて服屋へと向かう。人と出かける事自体がもはや2年ぶりくらいだったが、久しぶりに楽しい外出になりそうだという予感がした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

JC💋フェラ

山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...