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十一話
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8月8日。2人の男が居酒屋で飲んでいた。
「しかし、もう28歳か」
「歳を取るのも早いもんだ」
「あの頃は新卒だった…」
「もう本当にそんな感じだよね」
2人でボックス席に座りながら今の人生を振り返りながら、過去の話で盛り上がる。この2人は、それが常だった。
飲み屋は特に騒がしいという雰囲気はないが、閑古鳥が泣いているわけでもない。2人で頼んだメニューを食べたりしながら、ひたすらにしゃべり倒していた。
「あの頃から成長してるのかねえ」
「音ゲーは上手くなってるよ」
「まぁそれはそう」
「人間性が伸びたかと言われると、どうだろうね」
「そろそろ結婚も考えていかなきゃいけないし、大変だ」
大学の同期だった俺たちも28歳。そろそろ本気で人生について考える必要がある。一人暮らしも、家事も仕事も趣味もなんもかんもが上手くいかなくても人生というのは進んでいく。大変なことだ。
山のように盛られたキャベツを食べたり、ハイボールを飲んだり、焼き鳥を食べたり。お互いに距離を測ることもなく、気遣う事もなく、相変わらず大学の頃のような2人のまま飲み会は進んでいく。
スマートフォンの時計が20時を表示した頃、解散の空気が流れる。
「そろそろいきますか」
「そうだね」
席を立ち、会計を済ませて店を出る。店のラッシュがひと段落ついた時の会計。相変わらずの安さを発揮する居酒屋。経営が大丈夫かと思うほどだ。
夜といえどもまだ時間は早い。客引きもいれば、人通りの数も多い。すぐに帰るわけでもなくフラフラと街を歩く。
「また明日から仕事かぁ」
「大変だ」
「まぁ俺たちも若くないからな。出来なきゃいけないことも増えるし、やるべきこととやりたいことは区別しなきゃいけなくなってくる。少しずつ、大人に変わっていかないと」
「そうだね」
「大変だ」
「頑張ろう」
「それもまた人生、か」
楽しい時もあれば辛い時もある。それが人生の姿。いよいよ子ども気分ではいられないという話をしながら、2人は雑踏の中へと溶けていった。
「しかし、もう28歳か」
「歳を取るのも早いもんだ」
「あの頃は新卒だった…」
「もう本当にそんな感じだよね」
2人でボックス席に座りながら今の人生を振り返りながら、過去の話で盛り上がる。この2人は、それが常だった。
飲み屋は特に騒がしいという雰囲気はないが、閑古鳥が泣いているわけでもない。2人で頼んだメニューを食べたりしながら、ひたすらにしゃべり倒していた。
「あの頃から成長してるのかねえ」
「音ゲーは上手くなってるよ」
「まぁそれはそう」
「人間性が伸びたかと言われると、どうだろうね」
「そろそろ結婚も考えていかなきゃいけないし、大変だ」
大学の同期だった俺たちも28歳。そろそろ本気で人生について考える必要がある。一人暮らしも、家事も仕事も趣味もなんもかんもが上手くいかなくても人生というのは進んでいく。大変なことだ。
山のように盛られたキャベツを食べたり、ハイボールを飲んだり、焼き鳥を食べたり。お互いに距離を測ることもなく、気遣う事もなく、相変わらず大学の頃のような2人のまま飲み会は進んでいく。
スマートフォンの時計が20時を表示した頃、解散の空気が流れる。
「そろそろいきますか」
「そうだね」
席を立ち、会計を済ませて店を出る。店のラッシュがひと段落ついた時の会計。相変わらずの安さを発揮する居酒屋。経営が大丈夫かと思うほどだ。
夜といえどもまだ時間は早い。客引きもいれば、人通りの数も多い。すぐに帰るわけでもなくフラフラと街を歩く。
「また明日から仕事かぁ」
「大変だ」
「まぁ俺たちも若くないからな。出来なきゃいけないことも増えるし、やるべきこととやりたいことは区別しなきゃいけなくなってくる。少しずつ、大人に変わっていかないと」
「そうだね」
「大変だ」
「頑張ろう」
「それもまた人生、か」
楽しい時もあれば辛い時もある。それが人生の姿。いよいよ子ども気分ではいられないという話をしながら、2人は雑踏の中へと溶けていった。
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