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夏休み
しおりを挟むゆっくりと過ぎていくと思っていた一学期が終わり、明日から夏休み。期末テストの返却も終わり、教室の中は騒がしくなっていた。
「明日から夏休みかー」
「この前まで春休みだったぐらいの気分だから、なんか不思議」
「この前まで春休みはちょっと言い過ぎじゃない?流石に暑いし」
「そうかなぁ。なんか一瞬だった」
「まぁそれは否定しないけど」
いつもの席に座りながら終礼中の先生の話を聞く。高島さんとも話をする。特に代わり映えのない学期最後の話に高島さんは飽きてしまったらしい。ボクも正直そんなに真剣に聞く気はなかったので、高島さんと小声で話をする。
「夏休みかー。なんかイベントあるかなぁ」
「花火大会とか?」
「あー、なるほど」
「花火大会とか好きじゃない?」
「いや、私は好きだよ」
「そっか」
「あとは縁日とかかなぁ」
「確かにそれも夏のイベントだね」
「去年は何したんだっけ」
「なんかしたんだっけ」
去年は結局何もしていなかったような記憶がある。そんな会話をしているうちに終礼も終わりに近づき、挨拶をして下校になった。生徒はそれぞれのタイミングで教室から出ていく。そんな中で僕と高島さんは、椅子に座ったまま動かずだった。
「これからはどうする?」
「これからかー。なんかあるかなぁ」
「数学してもいいんだけどさ。いつもと同じことしてても飽きるかなぁって」
「僕は高島さんとやる数学楽しいよ?」
「本当?嬉しいなぁ」
「今日もやってもいいけど、なんか違うことする?」
「うーん、悩む」
「今日は帰ろっか」
「それもまた、人生か」
「なんかスケール大きくない?」
「そんなことないよ」
「そっか」
「そんなことはいいんだよ!帰ろう!」
荷物を持って歩き始める高島さんに続く形で僕も後ろを歩いていく。この関係とこの生活が、もう一年以上続いている。僕は、高島さんに対するこの気持ちの正体に気付いていた。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
「そっか。じゃあ帰ろう!」
「うん」
僕は高島さんのことが好きだ。高島さんがどう思っているのかはわからないけれど。それでも、高島さんと一緒にいられるのなら、それが一番だ。その想いをいつ伝えるかは、まだ決まっていないのだけれど、卒業して、会えなくなるまでには、伝えようと思う。
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